米国はメキシコから流入する年間320万人の不法移民を拘束

大勢で米国に向けて移動している不法移民のキャラバン隊が増えている

ウクライナとロシアの戦争で、ウクライナへの全面支援を継続したいと望んでいるバイデン大統領の意向を議会が阻んでいるのが、メキシコから米国に密入国しようとする不法移民問題である。

彼らの集合地点はグアテマラとの国境近くの都市タパチュラ。(Tapachula)。中米諸国エルサルバドル、ニカラグア、グアテマラそしてキューバ、ベネズエラといった諸国から米国への入国を望んで集結するのがこの都市である。国ではまともに稼げるための職場がなく貧困に喘いでいる彼らは米国に入国すれば何とか職場は見つけることができると思っているのである。

大勢で移動すれば道中、被害にあう可能性がなくなる。一方、ひとりや僅か数人の移動だと途中追いはぎ、ギャング、マフィアと言った暴力組織に襲われる可能性が高い。しかも、警察も不法移民者が数人だと逮捕して本国に送還させようとする。しかし、大勢が行列を組んで行進すれば数人の警察官だと敢えて逮捕しようとはしない。

米国はメキシコ政府に対しグアテマラとの国境で入国を抑えるように要求しているが、メキシコ政府はそれに十分に応えようとしない。

更に米国にとってメキシコ政府は麻薬の密輸入についても協力姿勢が不足しているので不満をもっている。そのせいで米国では年間1万人が麻薬の過度の接種で死亡している。特に、最近は麻薬フェンタニルがメキシコ経由で米国に密輸入されており多大の被害を米国は受けている。

急増している不法移民

2022年10月から2023年9月までに米国のメキシコとの国境で拘束した不法移民者の数は320万人。1年前は270万人ということで不法移民者が急増した。

米国国境警備隊の昨年は1週間に平均して9.600人の不法移民者を拘束したそうだ。年末に向けて彼らの不法移民の取り締まりを強化した効果もあって昨年12月26日には1週間平均してその数は6000人まで減少したという。(2023年12月27日付「エル・パイス」から引用)。

米国が中米に経済支援することを望むメキシコ大統領

メキシコのロペス・オブラドール(アムロ)大統領はこの問題を解決するには米国が中米諸国に産業の発展を図るべく経済支援を望んでいる。しかし、米国にとってこれらの国への投資にはそれに見返るだけの成果は乏しいとしてそれには関心が薄い。寧ろ、メキシコがグアテマラとの国境で厳しく不法移民を取り締まることを要求している。

アムロはこれまでのメキシコの大統領とは異なり左派系でキューバやベネズエラに対し同情的で強い圧力を掛けることを避けたいとしている。中米諸国に対いしても同様の姿勢だ。それがメキシコの南の国境警備が緩慢な理由だ。しかも、メキシコ人の米国への不法移民についてもそれを抑えるべく強硬な姿勢を示していない。昨年末に30万7000人の不法移民が拘束されたが、その内の7500人はメキシコ人であった。(2023年12月27日付「エル・パイス」から引用)。

今後も米国への不法移民は絶えることはないであろう。トランプ前大統領がアムロに脅しにも似た強圧的に姿勢で臨んだ時にアムロは初めて米国の姿勢に応える姿勢を示した。そうでない限り、アムロからの協力を得ることは容易ではない。