コロナの起源と戦猫外交

野口 修司

【ワシントン】中国の研究者が、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)を引き起こすウイルスを2019年12月下旬に解析していたことが、米議会が入手した文書で示された。これは、中国政府がコロナウイルスに関する詳細を世界に公表する少なくとも2週間前に当たる。コロナ流行初期に中国が何を知っていたかを巡り新たな疑問が浮上した。

米下院エネルギー・商業委員会が厚生省から入手し、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した文書によると、北京の中国人研究者は19年12月28日、ウイルス構造のほぼ完全な配列を米政府運営のデータベースにアップロードした。中国の当局者らは当時、武漢市で発生した病気について「原因不明の」ウイルス性肺炎との公式見解を示しており、コロナ集団感染が初期に伝えられた華南水産物卸売市場をまだ閉鎖していなかった。

中国、コロナウイルスを公表2週間前に解析していた」より

上記の記事はWSジャーナル紙が書いて、18日にロイターが世界中に配信した。

小生は5年くらい前、親しくしている米諜報 (CIA)から「SARSに似ているが、今回の感染症は半端ではない」と聞いていた。
※SARS は重症急性呼吸器症候群のことで、新型コロナとの共通点がかなりある

日本ではコロナが殆ど騒がれていない時だ。

すぐに、英・米・仏・インド・イタリア・イスラエル・中国などの専門家から直接話を聞き、調査をはじめた(サウジを始めアラブの感染症専門家は、無知だった)。

小生が4回対談したビル・ゲイツは、15年くらい前にパンデミック(感染症の世界的大流行)を予言した。

世界中の病気防止に力を入れるお人好しの米国が資金援助をして、新型感染症の予防で、米中共同研究。だが中国がそれらのウイルス利用で生物兵器研究をやっていることを知り、米国が手を引いた。米国の資金提供は極秘だったが、記者会見で質問を受けたトランプ大統領(当時)が、その事実を知らずに恥をかいた。

そして雲南省の洞窟で採取したコウモリのウイルスが移された先、武漢研究所からほぼ間違いなく事故で漏れた。筆者は実際にチョウチョ網利用で、洞窟のコウモリを採取した人間の情報も得た。

米国側でも見解が分かれており「漏れ」はほぼ確実だが、事故が理由か、ヒトによる通常感染か、断言まではできない部分もある。

だが大元は雲南省のキクガシラ・コウモリ。そしてセンザンコウなど、ヒトという流れといえる。

共同研究にも関わり、WHOの米側代表である専門家、Pダジャック博士にも小生は世界的なスクープ・インタビューをした。NHKスペシャルで放送された。

ウイルスの研究に直接関わった中国人の取材は、当然困難を極めた。一部は行方不明、一部は明らかに中国政府からの口封じ。

言えることは、書いたような中国政府の嘘だ。「武漢の軍人五輪で米軍が中国に持ち込んだ」という報道官の出鱈目だ。得意の米軍をほぼ全て取材し、中国の「嘘八百」を100%確信した。

今も事実を隠して嘘をついている。中国が早めにウイルスの正体をWHOに公開していれば、もっと早くワクチンが開発できて、世界の死者数が劇的に少ない数で済んだといえる。間違いないと自分は確信する。

数日前に、小生は、世界に対して「嘘」を繰り返した中国の報道官、趙立堅のことを書いた。このWSジャーナル紙の報道が出ることを「小耳に挟んでいた」からだ。

趙立堅
Wikipediaより

世界中がコロナで苦しんでかなりの死者が出ていた時だ。一体、誰のどこで?と犯人捜しが始まった。趙立堅は、平然と「コロナを中国を持ち込んだのは米軍。武漢の軍人五輪で中国に持ち込んだ」だという出鱈目を世界に繰り返した。

この眼鏡男は、中国「戦狼外交」のスポークスマンとも言われた。一応、国を代表する公式発表なので、裏取りに筆者は時間をかなり使った。事実なら、米国の責任を徹底的に追及する必要がある。筆者は米軍人の殆ど全てを直接取材した。その結果、彼の真っ赤な嘘を確信した。中国はなんでもありか自称「大国」のレベルが分かる。

結局この男、スキャンダルを起こしたのか、いまや地方に飛ばされたらしい。中国からの噂では、奥さん絡みの問題らしい。

一方、終わったばかりの台湾の総統選挙。一応の信任を得た副総統、蕭美琴氏。母親が米国人のハーフ美人。日本生まれで、もちろん、今回新総統に選ばれた頼さんと共に「親日」。今回の台湾人の選択でますます日台関係は、超良好になる。我々日本人は、生かすべきと思う。

日本ができることは少ない。だが経済的な枠組みの協力など、手を組んで中国への抑止力を作るべきと思える。熊本の半導体事業も成功させたい。次期大統領可能性が増すトランプ。「米国は半導体事業を台湾に取られた」的なことを言った。思い込みの間違いだ。台湾は独自で頑張って結果を出した。

蕭美琴
Wikipediaより

本気で笑ってしまったが、この蕭美琴氏は「トランプより英語が上手い」そうだ。彼女はネコが大好き。中国の「戦狼」つまり狼のように戦うのではない。ネコのように、戦う。小柄で身の躱すのが上手い。状況の変化に応じて、うまく対処しつつ、問題を乗り越える。「戦猫」戦術だ。

今後を期待をしたいが、次期総統の第一候補ともいえるこの蕭美琴氏。ワシントンの米国議会でも大人気だ。

昔の蒋介石夫人、宋美齢との共通点を感じる。背景で違う点は多々ある。当時は軍国日本、今回は中国。それでも似ている点があると言える(宋美齢、絶対に対談したかった。何度もやり取りをした。最後は丁寧な書簡まで小生に送ってくれたが、結局会えなかった。涙)。

万が一、中国が武力侵攻するなら、昔の宋美麗氏と同じように、蕭美琴氏が絶大な信頼を得ている米国議会からの強い支援を受けるだろう。昔の宋美齢は、パンダを使って米との関係を深めた。その手法は数十年後に日本にも使われた。今回の蕭美琴氏はパンダは使わないが、日本国内に強い人間関係があり、それが生かされるのは間違いない。

独裁者・習近平には結論が出ている。方法は30くらいあるが「台湾統一」を数年以内にほぼ間違いなく実現する勢いだ。武力行使も含めて、実力でやる。その場合、日本も巻き込まれる。安倍氏が言った通り「台湾有事は日本有事」だ。

数ケ月前の日本の識者がやった台湾有事のシミュレーション。小野寺元防衛大臣なども参加した本格的なものだ。そこで登場した1つのシナリオ。「いかに米国を巻き込むか」だ。多くの無知な日本人がいまだにいうこと「米国の戦争に日本が巻き込まれのが嫌だ」、なにも分かっていない。特にトラ米になればそうだが、いまや米に見捨てらないことも考慮するべきだ。

ウクライナと違って、日本国民が自分の祖国を守る気がないなら、そんな日本を米国人が守るわけはない。逆の立場なら理解できること。

小生が過去2年くらい数十回は、書いたように、残念ながらウクライナは「静かに負ける」。大喜びのプーチンだけでなく、じっくりと横目でみている習近平が、ますます、実力行使で台湾統一できると、確信を強める。

次期大統領がトランプなら、その流れはますます強まる。トランプは「米国第一」「自分第一」外交。NATOとの関係を断つ。一期目の時に実現直前まで行ったが、在韓米軍の撤退もほぼ間違いなくやりそうだ。

対中政策でも、世界の多くの識者が憂う「台湾の香港化」など、どうでもよい。いまアリゾナに移そうとしているが、台湾の半導体技術を確保しつつ、対中赤字が減ればよいようにみえる。

つまり、台湾は見捨てられる可能性がかなりある。いまは他人事だろうが、日本も同じようになる可能性がある。

なぜなら、トランプは以前「米国は日本を守る義務がある。だが日本は米国のために血を流さない。こんな不公平があるか?」と怒った。一説では、日本に対して年間1兆円の防衛費を要求してくる。

そこで、この「猫戦術」。

自国を自国だけでは守れない日本。しっかり、台湾の蕭美琴のやり方に注目して、取り入れるべきものは利用することが重要だ。