震災で見直す日本人の長所と短所

新年に震災が起きてからしばらく経ちますが、震災対応が迅速であり、復興が続々と進んでいるのには、やはり日本人の特性と言うものが大きく影響しているように思います。

2023年12月8日に発売された私の新作書籍『ニュースを日本人は何も知らない5』でも解説していますが、日本と言うのは、先進国においては、最も人種や宗教の多様性が少なく、外国人の割合と言うのは、人口の2%にもなりません。他の先進国の場合は大体10%程度で、多い国は25%程度が外国人になります。

 

その国で生まれた移民の子孫の外国人を含めたら、実は外国人の割合はもっと多いと言う国が多いのです。

ところが日本は非常に均質でほとんどの人々が同じ言葉を話し、見た目もほぼ同じで同じ宗教と言う国です。

このような特質がありますので、人々は同じような考え方をし、集団行動をとる傾向が高いことで知られています。

コミュニケーションはハイコンテクストです。

つまりちょっとした言葉や行動に様々な意味が含まれており、いちいち説明をしなくてもほとんどの人が空気を読んで意味を汲み取ります。

Andrii Yalanskyi/iStock

これは他の先進国では異なっており、特に様々な人々がいる英語圏では細かい部分を言葉にして説明しなければなりません。

こういった日本人の特性は、これまで集団主義とか個性がないとか出る杭を打つ、画期的な発想が出にくいなどと批判されてきました。

このような日本人の短所は、ここ30年の日本の停滞に関係があるとも言われています。

その一方で、こういった日本人の特性には長所もあります。

震災や台風といった災害が起きた場合は、いちいち細かいところを文書化したり、説明しなくても、皆が自然に理解します。

避難したり、物資を分けたりなど、集団行動がうまくできます。

また人の関係が深く地域社会がまだまだありますから、こういった災害が起きた場合の人探しや復興の連携等が非常にスムーズに進みます。

地域の人や学校会社の人などがある意味延長された親戚関係の様な感覚なので、あまり争うこともありません。

日本人の特性と言うのは、文化人類学者や社会学者がこれまで指摘してきたように、気候や災害が作り上げてきたものです。

特に昭和40年代位までは交通が発達しておらず移動が難しかったですから、故郷にとどまる人が多く、村の中で農業をやって生活していくのには集団で行動し、波風を立てない方が食料生産に有利であり、自己の生存確率を高め、地域の発展に有利だったわけです。

日本も他の国のように多様化が進み、都市化が進んできたわけであります。

しかし、気候が変動し、各地で紛争が起きており、非常に社会が不安定な今日本人の短所と言うのは、むしろ長所として良いほうに働くのではないでしょうか。

北米や欧州は、多様化のやり過ぎで疲弊している地域も少なくありません。

多様である事は交渉をしたり、言うことを聞かない人を取りまとめるなど、様々なコストがかかり、組織や地域にとって負担のかかることも事実であります。

私はテレビの地震速報に釘付けの息子に伝えました。

「日本はこれが毎年のように起こるから常に災害に備えているんだよ。避難訓練も頻繁にやるから誰もが列に並べるの。話をよく聞く人が多いの。皆で協力し合うの。ものを分け合うの。イギリス人や新興国の人達のように、自己中でルールを守らない人ばかりでは生きていけない土地なの。災害が日本人の性格を作ったんだよ。」

日本の隣国や新興国出身の我儘な同級生達や地元民に悩んでいる息子は静かに頷きました。

誰もが阿吽の呼吸で周りを理解し、迅速に集団行動が取れるのも、実は効率的である社会として評価されるべきだと考えます。