黒坂岳央です。
「仕事場で話が長い」というのはファスト消費に慣れた忙しい現代において「致命的な欠点」と認識すべきである。たとえ、本人に優れた技術、才能、実力があったとしても、そうした良さがすべて打ち消されかねないほどの欠点と言っていいだろう。実際に話が長いということで損をする人を仕事の現場で数多く見てきた。
具体的にどのような損をするのか?言語化に挑戦したい。
※本稿はあくまでビジネスコミュニケーションを問うものに限定しており、私的な日常会話に当てはまる話ではないことをあらかじめご理解頂いた上で読み進めてもらいたい。
1. 能力を疑われる
大変直球な表現となるが、「話が長い=ビジネスマンとして能力が低い」とみなされてしまう。
その逆に話が短く、無駄なく密度の濃い情報伝達ができるビジネスマンとは結論からわかりやすく話し、話題の選別を行える。つまり、話が長い人とは結論が何かを把握しておらず、情報伝達の代わりに自分の体験談をストーリーのように時系列順に、余分な贅肉をたっぷりつけた話をしてしまうというといえる。
ビジネスコミュニケーション能力とは「できるだけ短く、それでいて必要な情報を網羅的かつ正確に伝える」なので、この逆の話し方をすることで能力を疑われてしまうことになるだろう。
2. 人が離れる
そして話が長い人の周囲には人が離れる。なぜなら話が長いというのはそれを聞く相手の時間とエネルギーを奪い取るからだ。
話が長くなる最大の理由は「無駄が多い」ということに尽きる。逆に情報伝達としての話にムダがなければ必然的に話は短くなる。話を聞かされる側はムダの多い話を聞くことをストレスと感じる上、眼の前に相手がいれば離れるわけにはいかず時間がドンドン奪われてしまうことにイライラする。
誰にとっても時間は価値ある資源なので、話が長いというだけで周囲から人は離れてしまうのだ。「あの人に話をすると長くなるからやめておこう」となり、仕事場における個人的なつながり、アンオフィシャル人的ネットワークから排除されてしまうだろう。
3. 自己中
話が長い人は自己中という印象を与えかねない。なぜなら話の長さは生まれ持った言語能力という才能だけで決まるのではなく、本人の意識次第でどうにでもなるからだ。
たとえば営業で取引先に説明をする時は、話をする前に事前に準備をしていくものである。1から10まで順番に解説をする上で「1から4はよく存じております」と相手から言われたなら、営業マンは臨機応変に5から始めるなどムダを省き、どの番号からでも話をスタートできる準備を整えておく必要があるのだ。
過去、筆者はこのようなシチュエーションで上記の話をしたのだが、「大事なことですので一応最初から話しますね」と1から10まですべてを聞くことになった場面があった。販売上の説明義務に関わる話なら問答無用で聞かなければいけないが、この場合は明らかにそうではなかった。自分がスムーズに話せるやり方に相手を従わせる、これは自己中と受け取られても仕方がないだろう。なぜならこうした商談において、買い手のニーズに売り手が柔軟にフィットさせるのが我が国の商慣習であり不文律だからである。
話の長さは治療できる
話が長いと損をすると説いた。しかし、こうした課題は技術で治療することが可能だ。
まず第1歩は「仕事において話が長いことは罪」という認識を持つことだ。time is money、businessの語源はbusyから来ている。つまり、仕事において時間をムダにすることは悪と認識し、ムダをなくして時短の努力をするという意識を持つことがファーストステップだろう。
そして話が長い人の特徴はムダな内容が多いということである。そうした人をよく見てみると、相手を捕まえて会話に引き込んで話をしながら話す内容を考えている事が多い。だから頻繁に言葉に詰まる。「えー、あー」が非常に多い。これは話を整理する前に会話を始めてしまっている証拠だ。口を開く「前」に話の内容を整理してから話すべきだろう。ムダな内容を極力減らし、結論から伝えることで話は格段に短くできる。
最後に練習をすることだ。誰しも小学校の校長先生の話と、結婚式で職場の上司の挨拶が長いという印象を持っているだろう。こうした人たちは話の練習をせず、目の前の相手が黙って話を聞いてもらうという状況に慣れすぎている。多くの関係者の時間をもらって話す場合には特に事前に練習をするべきだろう。
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筆者は先日、冠婚葬祭で挨拶をしたが事前に原稿を作成し、何度も内容を推敲し、そして部屋で何度も練習をした。手前味噌でおこがましいが「内容がよくまとまっていて大変良いスピーチだった」とありがたい言葉を複数頂いた。だがそんな自分も昔は典型的な「話は長いが最後まで聞いても何をいいたいかよくわからない」という話の長い口下手だった。意識と技術で改善は可能なのだ。
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