ヘイリー候補はトランプ前大統領に対し何処まで善戦するか?

アメリカ大統領選の行方については決着がつくまでポイントポイントでフォローしていきたいと思います。今回共和党の指名争いでトランプ氏が第2戦のニューハンプシャー州も制したものの、唯一の対抗馬、ニッキー ヘイリー氏は「まだ戦う」と宣言しました。個人的な読みとしては次のサウスカロライナはヘイリー氏の地元であることと投票が2月24日とひと月ほど時間が空くことでヘイリー氏の体制立て直しに時間できるので僅かですが、チャンスはあると思います。

ヘイリー氏インスタグラムより

またスーパーチューズディーは3月5日ですが、その前日にトランプ氏の公判が予定されています。基本的には今後、トランプ氏に足かせになるそれら裁判日程が続々と上がってくるため、共和党としても党員としても現時点でヘイリー氏を撤退に追い込むわけにはいかないという考え方もあるかと思います。

もう一つ、仮にバイデン対ヘイリーになっても、かなり良い勝負をするだろうと予想しています。今回のヘイリー氏の支持はアンチトランプ氏の票を獲得しているわけですが、同様にアンチバイデンの票もヘイリー氏は取れるとみています。ただ、ヘイリー氏は自身への圧倒的人気がない限り、トランプ氏を打ち砕くのは難しいと思われ、このひと月の間にヘイリー氏がどれだけ人気を高められるかその戦略がポイントになるかと思います。

さて、トランプ氏ですが、なぜ、ここまで人気があるのでしょうか?既に多くのメディア等で分析され尽くしていますが、あえて自分の言葉で書き直せば、中間層から下の層の代弁者であることが最大の支持理由だとみています。ヘイリー氏の主な肩書は「元国連大使」なのです。これがいかにもエリートっぽく、かつ外交主体の人というイメージなのです。何度も言うようですが、世界どこの選挙でも外交は選挙の評価対象になりません。ほぼ国内政策一辺倒。その中でトランプ氏のように選挙民の7-8割という中間層から下のマジョリティのハートをつかむ手法に対してヘイリー氏はアカデミックで正論をぶつけるのです。これが邪魔くさいのです。今回のニューハンプシャー戦でヘイリー氏は戦略を変え、セーターにジーンズ姿で選挙戦に臨んでいます。これでよいのです。

私が不満に思うのは撤退した6名の大統領候補者のうち確かクリスティ氏を除き、全員がトランプ氏支持に廻ったと記憶しています。これは撤退した候補者の保身以外何物でもなく、戦う政治家としての強さの微塵もない気がします。もちろん、政治家は「落ちたらただの人」である故、おこぼれの可能性を探るのだと思いますが、打算的だなと思わずにはいられません。

日経の社説は「米共和党の『内向き志向』を憂慮する」とありますが、これは共和党ではなく、アメリカ国民全般にみられる大きなトレンドではないでしょうか?

実は私は「内向きの日本の若者」に焦点を置いていろいろ考えているのですが、アメリカ全体が内向きになっていることと日本が内向きになっていることは何らかの関連性があるとみています。その共通ワードは「成熟の中の不満」を仮説に置いています。日々の生活で常に文句がいくつもあるけれどそれを改善するほどの熱意はないというものです。逆に言えばアメリカの中間層から下の方々も極端で耐えられないほどの不満ではないができれば変えてもらいたい、それも自分でやるのはかったるいのでトランプさんならやってくれそう、そんな感じだと思います。

トランプ氏が今回気をつけているな、と実感できるのは失言が極めて少ないのです。トランプ氏は放言し放題、これが氏のイメージでした。それが今回はかなり封印しているのです。口の悪さは相変わらずですが、世論がざわめきたつような失言は今のところはありません。これはトランプ氏の戦略であり、本気で勝ちに来ているというのが実感できます。

タイトルの「ヘイリー氏は何処まで善戦するか?」ですが、次のサウスキャロライナがキーになると思います。そこで勝てなければ物理的に厳しいと思います。トランプ氏とクリントン氏が戦ったケースで見るとトランプ氏が中部を北から南までほぼ勝利しています。ヘイリー氏とクリントン氏はキャリア的に重なるところがあるのです。それを考えると中間層から下の層が取れなければ選挙戦としては乗り切れないでしょう。

逆に言えば偉大なるアメリカとは言えども本当にドメスティックな匂いがプンプンするかなり閉鎖的な社会が本質的にはあるということなのでしょう。そこを考えるとヘイリー氏の逆転のシナリオはヘイリー氏が「ドメスティックの匂いプンプン」を受け入れるかどうかにかかるということです。つまり中間層から下の層が喜ぶ選挙戦に切り替えてあえてトランプ氏と政策をバッティングさせるという手法はありかもしれません。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年1月25日の記事より転載させていただきました。