10月7日、イスラム過激派組織「ハマス」によるイスラエル攻撃を発端に軍事衝突が勃発、ひと月も経たぬうちにイスラエルとパレスチナ合わせて既に1万人を超える人が亡くなっています。
イスラエル軍による地上侵攻が迫るガザ地区は「天井のない監獄」と呼ばれ、これまでもイスラエルにより16年間も壁やフェンスで囲まれ人とモノの出入りが制限され、失業や貧困に苦しんで来ました。
そして今はハマスの壊滅を目指すイスラエルにより、水も食料も電気も燃料もすべてを遮断され、たとえ空爆や地上侵攻を受けなくとも、飢えや病気によって早晩すべての無辜の民が死に絶えるかもしれない深刻な人道危機を迎えています。
たしかに1400人もの自国民をハマスに惨殺され、今も多数の人質をとられ人間の盾とされているイスラエルの怒りは当然のことと思います。
しかしだからと言って、ハマスを殲滅するためガザ地区に暮らす220万人もの一般市民を巻き添えにしても構わないというネタニヤフ政権の考え方は、決して認められるものではありません。
そうした中、日本はイスラエル擁護の姿勢をとる米国に配慮し、国連総会で行われた「人道的休戦案」を棄権しました。
いわゆる“西側諸国”の一員として足並を揃えた結果かもしれませんが、本当にそれで世界平和はもたらされるのでしょうか?
100年に亘る中東問題のそもそもの発端は、英国が第一次大戦中に行った「三枚舌外交」でした。
当時オスマン帝国と敵対していた英国は味方を増やすため旧トルコ領について、アラブ人にはアラブ人国家の建設を、ユダヤ人にはユダヤ人国家の建設を、そしてロシアとフランスには自分たちだけで三分割することをそれぞれ密約し、その矛盾のせいで中東の地はテロと紛争の坩堝と化し今に至っています。
大国のエゴによって引き起こされ、大国の無責任と無関心によって悲劇が続く中東問題ですが、今また大国の面子合戦によって人道的休戦すら世界が一致して呼びかけられず、支援物資が届かぬまま戦火が拡大すれば、アラブの人々による西側諸国に対する憎悪は膨れ上がり、次なるハマスを増殖させて行くこととなるでしょう。
今こそアーサー・キング牧師の次の言葉に、世界は耳を傾けるべきと私は思います。
最大の悲劇は、悪人の暴力ではなく善人の沈黙である。
沈黙は、暴力の陰に隠れた同罪者である。
編集部より:この記事は、畑恵氏のブログ 2023年11月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は畑恵オフィシャルブログをご覧ください。