黒坂岳央です。
人は子供から老人まで誰かに自分を見てもらいたいという強い欲求を持っている。問題はその「伝え方」だ。それが「過去の成功を自慢する」という行動に繋がっている。だがこれは良くない。過去の自慢を聞きたい人はだれもいないからだ。
特に仕事の実績をPRするつもりで、自慢になっている人はかなり多い。両者は別であり、本人も気づいていない事が多いのだが伝え方を間違えることで前者のつもりが後者になったりでなかなか難しい。
「成功を自慢したい」という人が大多数である一方、その逆に「失敗を自慢できる人」も少なからずいる。ここは意見分かれると思うが、一見すると本能に逆行するような失敗の自慢には数多くのメリットがあると思うのだ。今回は失敗を自慢するメリットを解説したい。
1. 話を聞いてもらえる
人間が他の生物と異なる最大のポイントは、歴史に学べる点にある。つまり、自分の人生だけでは経験していないことを先人から学び、経験せずとも事前の失敗を回避できる力を持っているということだ。だから「物語」は強い引力を持つ。他人の経験から自分の人生で活用できそうなノウハウを学びたいと考えるからだ。自分自身、歴史上の偉人本は大好きで繰り返し読んだことで自分の人生にも大変役に立っている。
特に人が聞きたいと思うのは成功談ではなく、失敗談の方である。成功談からも学びがあるはずだが、相手によっては成功したくてもできない自分のコンプレックスを刺激して嫉妬の業火に焼かれることになる。つまり、成功談を聞いてそこから学びを得たいと思っても、同時に嫉妬のダメージも負うことになる。人間はメリットよりデメリットを3倍強く受け取るので、他人の自慢話は苦痛に感じるのだ。
その一方でコンプレックスを刺激しない失敗談は素直に他人の経験からの学びだけを得られる。だから相手の傾聴を引き出すことができる。相手の耳を開き、自分の体験談を聞いてもらいたいなら成功談より失敗談を話すべきなのである。
2. 器の大きさを感じさせる
人は誰しも他人にバカにされたくないと思っている。誰にとってもお金や時間は貴重な資源であるが、時に自分の名誉はそれらを上回る価値があると考える人も多い。だからお金や時間を奪われるより、相手の名誉を傷つけることの方が強い恨みを買うことだってある。相手の名誉の取り扱いには注意が必要なのだ。
失敗談を自ら語る人間というのはその本能に逆行している。普通は隠したくなるような話を自ら曝け出す。これは「信用>名誉」という経済界の本質を理解していなければできることではない。聞いている側にもそれが伝わるから「この人はよくこんな辛い体験を話してくれたな」と器の大きさを感じさせるのだ。
3. 人生経験の多さ
お金や時間ばかりが価値として見られがちだが、中高年になると「人生経験」も格差を感じさせる対象となる。若い頃は誰もが全能感があり、「その気になればいつでもなんでもできる」と考えてしまうが、中高生で家族を持つとなかなか難しくなる。実年齢にコンプレックスを感じ、挑戦の一歩を踏み出す勇気を持てない人は多い。特に失敗することは誰しも怖い。だから年を取るほど失敗経験が乏しくなり、失敗談を語れるネタが枯渇する。
一方で赤裸々な失敗談を語れるということは、それだけたくさん挑戦をしたという証拠である。失敗を語れるというのは自己肯定感、行動力、言語化能力など複数の能力がないと絶対にできないことであり、お金や時間だけあってもできることではない。それが能力の高さ、人生経験の豊富さを示す根拠になっている。
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自分は意識的に成功談ではなく、とにかく失敗談を出すようにしている。時間と労力をかけて成功談を出し、それが聞く相手の癪に障って人が離れることを繰り返す論理的メリットはない。失敗を多く語るのは誰でもできるように見えて、その実意外に奥が深いのだ。
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