小池都知事は、日本人として初めてカイロ大学を首席で卒業したとされ、省庁トップの環境大臣、防衛大臣を務めた後、首都東京の知事となった。何度もテッペン(頂辺)を取った正真正銘の「頂き」女子だ。
残念ながら、首相への挑戦(2008年自民党総裁選)では、麻生太郎氏に敗れ、5人中3位に終わったのだが、ここにきて、再挑戦への一筋の光明?が見える。岸田総理の支持率が低迷し、多くの自民議員が、次なる衆院選に危機感を抱くなか、派閥解体により自民党総裁選の力学が大きく変化しているからだ。
そこで、4月の東京15区の補選後から9月の自民党総裁選に至る小池氏の首相を目指すためのシナリオを考えたのでご紹介したい。
普通に考えれば、15区出馬のシナリオが先であるが、首班指名への道のりが描けなければ、15区への出馬はない。こちらのシナリオが重要である。
まずは、当選後、5、6月は、無所属のまま「もし機会を頂ければ、首班指名を目指します。よりよい日本を作っていきたい」というスタンスを維持し、野党連合か自民党か、どちらにつくかは「政策を熟慮して」としておく。
与野党問わず幹部と会談を行うなど、耳目を集める行動により、マスコミへ様々な憶測をさせ、地上波ニュースに何度も露出する環境を作る。
第一目標を9月の自民党総裁選に置くにしても、早い段階でこの目標を晒すと、野党は攻撃側に回るので、そんなことはおくびにも出さない。むしろ、自民党とは距離を置き、野党連合からの期待を集め、彼らに、小池氏を持ち上げるような行動をさせれば、その後の展開の際、野党は攻撃しにくくなる。
「排除する」の一言で頓挫した前回の希望の党による政変劇の経験から、首班指名を得るには組織の厚みが重要であることは認識し、野党連合からのハードルが高いことは重々承知している。とは言え、この段階ではまだ、自民党の大きな失策による自滅という万一のこともあり、当面、野党連合との連携の目は残しておいた方が良い。
自民党との距離感は、「今の自民党には入るつもりはない。」として、自民党の改革を促すスタンスをとる。マスコミ、特にワイドショーのコメント屋は、その条件、改革とは何か?ああではないか、こうではないかと、憶測により解説するので、テレビへの露出が増えるだろう。コメント屋の改革アイデアの中に、大衆受けするものがあれば、しれっとパクることもできる。
野党は、自民党を揺さぶる為の当て馬として使うのに都合の良い存在となる。
自らの辞任により4月ないし5月に繰り上がった都知事選で、息のかかった人物を応援し当選させれば、後任となる都知事から、2期8年の都知事としての実績、果実を様々な形でプロモーションし持ち上げさせ、派手にアピールさせることも可能となり、政策通との好感度を高めることができるだろう。
7月頃からは、引続き無所属のまま、小池総裁待望論を固めてゆく。派閥が解体されたことで、水面下で、総裁選に必要な20人の推薦議員は簡単に集まる。次の衆院選に危機感を持つ議員は、場合によっては、自ら売り込んで来るだろう。「お名前は出せませんが、多くの自民党議員から、復党するなら応援するとのお言葉を頂いております」と言えば、マスコミは大騒ぎとなる。
こうして、待望論が高まれば、自民党に復党するための条件を、マスコミも巻き込みつつ、小池氏側から突きつけることができる。
例えば、公明党は、過去の経緯から復党に拒否反応を示すだろうが、これを逆に利用する。いわゆる統一協会に関する動きを見て、宗教法人への批判が高まるタイミングで、公明党との連立解消を自民党復党の条件としてコメントすれば、マスコミや世論は湧き立つであろう。そして、この連立解消は、国民民主や維新が、自民党との連立に向け、小池氏側になびくことにもなる。
小池総裁待望論には、自民党内から「造反」議員が出るだろうが、これも利用できる。2005年の小泉劇場を参考にするのだ。
小池氏は最初の都知事選出馬にあたり、反発する都議会に向けて、都議会を冒頭解散すると言う発言をし、地方自治法をきちんと理解してないのではないかと疑われたが、今回、首相候補ともなれば、解散カードをちらつかせることができる。
都民ファーストでプールした人材なども活用して、小池チルドレンの準備を始め、その動きをマスコミに取材させることで、造反議員に揺さぶりをかけることができる。マスコミ、特にテレビは、小泉劇場の際の映像を使い、おもしろおかしく報道するだろう。
こうした一連の動きは、風を読み、マスコミが飛びつく話題を提供する技を磨き込んだ小池氏なら、そう難しいことではない。小池氏への追い風が大きければ大きいほど、大衆受けする多くの注文を自民党につきつけ、復党し、総裁選を勝利することも可能ではないだろうか。
はたしてこのようなシナリオを懐に、小池氏が東京15区から出馬することは、あるだろうか?
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中村 哲也
団体職員(建設分野)