川崎重工が防衛部門の売上を伸ばすべく画策していますが、止めてほしいです。
将来海外市場に進出するつもりはサラサラ無く、単に防衛省の脛をかじって、能力の低い装備を何倍も高い値段と更に高い維持費で売りつけて、財政赤字を増やすだけです。
しかも防衛目的で導入した生産設備を民需に使いまわして、「濡れ手で粟」で儲けている。防衛部門の強化というのは、ダダで設備投資をするためではないでしょうか。
そもそも会社としては三菱がデパートならば、川崎重工はショッピングモールで、個々の事業部は商店で、会社全体としての戦略を立てて集中的に投資するようなことは苦手な会社です。防衛部門を発展させるには明確な戦略とビジョン、そしてかなりの投資が必要ですが、それができない会社です。
防衛費倍増=「仕事も倍」川崎重工どう動く 語られた防衛事業のビジョンとは 「三菱とも協力を」
同社のグループ全体の業績を見ると2023年3月期の売上高は1兆7256億円。このうち防衛事業が占める割合は14%の約2400億円です。
内訳は哨戒機や輸送機の航空宇宙事業が65%と大半を占めており、潜水艦の船舶海洋事業が17%、舶用推進事業が14%、航空エンジン事業が5%と続いています。代表的な製品としては、陸上自衛隊の偵察オートやCH-47ヘリコプター、海上自衛隊のP-1哨戒機や「たいげい」型潜水艦、航空自衛隊のC-2輸送機やT-4中等練習機など。
2024年度予算案の防衛関係費は過去最大の7兆9496億円となっており、その中には川崎重工の製品が関わる分野が多く含まれています。
下川専務は「受注高は防衛費増額を契機として、2023年度は前年比2000億円増の4600億円を見込んでいる」と話し、売り上げ収益についても2022年度実績の2400億円から、冒頭のとおり2030年度には「5000億から7000億円」に達すると見込んでいます。
「防衛事業の課題とされていた収益面についても、契約制度の見直しを受けて今年度の契約から改正し、全ての契約が新契約に置き換わる2027年度には、事業利益10%以上を実現していく」とのこと。これまである意味、儲けは度外視だった防衛事業が、稼げる事業へと急速に変貌していくかもしれません。
まず記事を書いたライター氏は、経済や経営に関して無知です。「儲けは度外視」は上場企業では許されません。「趣味の軍事」で資本をムダ遣いすれば、株主から批判され、下手をすると訴えられます。
そしてご案内のように、防衛で導入した生産資源を民需に転用しているわけですから、利益が薄くても旨味があがります。
今度の防衛省の利幅拡大というのは、努力して無くてもカネをあげるよという話であり、防衛産業の弱体化になります。農政と全く同じです。努力しなくてもカネがもらえるなら、誰が知恵を絞って技術革新をし、経営改善を行い、コスト削減の努力をしますか。
C-2やP-1、自衛隊向けヘリにしても、川崎重工の航空機は海外に売れません。調達コストが他国製品の3~4倍、維持費が5〜10倍で売れるわけがないでしょう。川崎重工は軍事見本市や航空ショーに出展していますが、売る売る詐欺です。そもそも売れないし、売買の意思決定者はブースにはいない。出展はあくまで防衛省に対するやっているフリアピールです。
陸自のUH-Xも内局や経産省も支援しており獲得が確実だったのに、まさかのスバルに取られました。これはオスプレイ導入のため安い機体がいいという話もありましが、基本川崎重工が、もう契約は取れたも同然的に説明に顔を出さなかったことも大きいです。これが日本のヘリ産業の最後のチャンスだったでしょう。「子供部屋おじさんヘリメーカー」3社体制が二社となり、川重がBK117に続くエアバスとのジョイントで、世界の軍民両に通用する手札が増える予定でしたが、それが潰えた。
川崎重工が内外のヘリ市場に果敢に挑戦する気配はなく、オリジナルの2〜3倍高く、稼働率も低い「ラインセンス生産」と称する組み立て製品を延々と防衛省に売りつけて、財政赤字を増やしています。これは利敵行為といってもいいでしょう。
潜水艦にしても、設計は三菱で漫然と作っているだけ。それでいてベンダーも抱えていますから、潜水艦の製造コストは高止まりです。本来事業統合すべきだがそれもできない。
世界の民間市場、軍隊や法執行機関にオートバイを売り、ATVも世界に売っていますが、軍用ATVを開発し市場に参入するつもりはない。陸自のオスプレイ搭載用のATVも納品したら搭載できなかったという有り様です。
ただただ防衛省に寄生して税金チュウチュウするしかない企業、それが川崎重工です。こういう企業は防衛調達から外すべきです。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2024年2月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。