ビジネスメールを1往復で終わらせるのは失礼?

黒坂岳央です。

「ビジネスのメールのやり取りを1往復で終わらせるのはいいか?悪いか?」という議論がSNSで話題となっている。

たとえばクライアントから仕事のオファーを受け取り、あいにくお断りメールを出す、ここまでで1往復となる。

ちなみにお断りメールを出した後に「かしこまりました。お忙しいところ返信を頂きありがとうございました。またの機会によろしくお願いいたします」と返すまでが1.5往復となる。どちらが良いのだろうか?

日々、大量の問い合わせをEメール返信している筆者の立場で私見を述べたい。

juststock/iStock

理想はやはり1.5往復

件の「1往復主義」の真意としては合理性ということのようである。つまり、最後の「またの機会によろしくお願いいたします」という文章を制作する時間と労力のムダであり、タイパを考えると1往復主義で良いと考えるビジネスマンが増えてきたというのだ。だが個人的には自分自身が実践している1.5往復で行く方が良いと考える。

1つ目の理由は受け手の印象だ。1.5往復で完結すると想定するビジネスマンにとって、1往復で終わったら「もうお前に用事はないということか」という印象を与えかねない。もちろん、全員ではないしその感覚が新たに変わるという話ではあるのだが、少なくないビジネスマンがそのような印象を受ける可能性は否定できない。

ビジネスの営業において取引先や潜在顧客に悪印象を与えるのは得策ではない。仮に現状の案件が流れても、将来的にまたお願いをする可能性だって十分にある。その時に「前回、気遣いがない相手だったな」という印象を持たれればもう話を聞こうと思わない人は確実にいるだろう。

2つ目はメール確認のシグナルである。過去記事でも書いたが昨今、Eメールは届きにくくなった。迷惑メールにすら入らず、まったくの未着というケースすらある。また、先方が大量のメールに埋もれて返信を見落としている可能性だってある。仕事をお断りした側としても「本件はno dealで完結した」という認識になればタスク完了となるが、返信が来なければ「もしかしてメールが未達?先方は見落としているのでは?」と不安を与える可能性がある。

1往復主義は「相手が確実に内容をチェックした」という大前提に立脚しており、メールでは仕組み上それを担保することができない(開封確認機能がないケースは多い)。

3つ目は先方の心情である。BtoBであっても、ビジネスは人と人との対話である。お断りを出す側には「期待にそえず申し訳ない」という心労になることもある。そんな時に先方から「また機会があればお願いします」と届けばホッとする。沈黙で終わると「怒っているのか?」と繊細な人は考えてしまうかもしれない。

つまるところ、メール1往復主義は自分本位で、1.5往復主義は相手本位なのだ。信用経済下におけるビジネスは利他的行動が支持される本質があるため、1.5往復主義が良いと考える。

時代が変わればマナーも変わる。昔は絶対なる権力を持っていたマナーもドンドン変化していくし、昔のマナーに縛られている会社や人や「時代に取り残されている」と疎まれてしまいがちだ。自分も老害と呼ばれる年代のド真ん中なわけで「お前は年寄りで時代に遅れている」と言われるかもしれない。

だが、上記3つの理由を覆すテクノロジーがメールに実装されない限りにおいて、やはりメールは相互の関係性を俯瞰した場合に1.5往復主義がより合理性を担保する可能性が高いと考えるのだがどうだろうか。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。