スペイン・バレンシアで14階建てビルの大火災

消防士も驚いた火回りの早さ

スペイン第3の都市バレンシア市は人口81万人。この都市で24日、午後5時過ぎにスペイン全国を始め、日本でも報道されるという大火事が発生した。

10階と14階建ての二つを繋げたマンションビルの後者の7階から午後5時過ぎ火災が発生。それが30分も経過しない内に火災は上層階を襲っただけでなく、下層階にも延焼し、隣の10階建てにも火が及ぶという事態になった。ビルの火事であれば、火災は上層階に延焼して行くというのが通常のケースである。ところが、今回の火事は下層階にも火災が及んだ。それも非常に早いスピードで建物の外壁は炎に包まれるという事態になった。

20台の消防車が消火に当たったが、その時間帯は時速60キロの強度の風が吹いており、はしご車のバスケットは風力に揺られ、しかも風に煽られた火が勢いよく消防士の前を遮り消火活動を妨げた。その為、火を消して救出活動をするということが殆どできない状態だったという。

また有効な消火活動をするのに地上から建築士やエンジニアが建物の構造、建築年数、建築材料さらに消火水の重量などを即座に計算して消防士に消火作業の為の指示を出していたので消防士たちは消火作業で麻痺することはなかった。しかし、強い風に煽られて狂ったような火と延焼するスピードの速さの前に無能感を覚えたと数人の消防士は語っている。

驚く程に火回りの早さの原因

なぜ火の回りが早かったのかという要因は、建築構造と使用していた断熱材が影響しているからである。

当初、アルミ箔の中にポリウレタンを挟んだサンドイッチ状の断熱材を内側の壁面に使用していたと言われていた。ポリウレタンも断熱材として有効であるが、延焼性が高い。ところが、調査の結果、判明したのは、アルミ箔にロックウールと呼ばれている断熱材を壁面に使用していたというのが判明。

ロックウールも燃焼性は高い。しかも、外壁とこの断熱材の間に僅かの隙間を設けて、それが通気層となっていた。だから、当時は強風に煽られた空気がこの隙間に入り込んでそこに火を呼び込むようになっていたため非常に早いスピードで延焼が拡大したということである。今ではこの断熱材は10階以上の建物には使用できないことになっており、しかも、通気壁を設けるようになっている。

しかし、今回の建物が竣工したのは2006年で完成したのは2008年。その当時は上記のような規制はなかった。しかも、当時は建築ブームでロックウールの断熱材を壁面に使用した建物はスペイン全国に多数あるとされている。

今回の建物を建設したカタルーニャの業者フェベックス社(Fbex)は2010年に60箇所で建設が予定されていたが、資金繰りの問題から6億ユーロの負債を抱えて倒産している。(2月23日付「OKディアリオ」から引用)。

この2棟に住んでいた居住者は450名

この二つの棟には138戸、450名が住んでいた。死者は10人、負傷者15人という結果になった。火災が夜に発生していれば犠牲者はかなり増えていたはずだ。日中の火災で、多くの住民は勤務などで家にはいなかったというのが不幸中の幸いであった。

犠牲者の中で一番悲惨なのは2歳と生後2週間しか経過していない赤ん坊を抱えた若い夫婦である。この一家は火災が発生した7階に住んでいて周囲が火に包まれて避難できなかったようだ。ワッツアップで救出を家族に発信していたようだ。

被災者に市役所が住宅を提供

被災者は現在市役所が割り当てたホテルで生活している。市役所が所有している建物から131戸を被災者に提供することになっている。また最初の救済金が6000から1万ユーロ(72万円から120万円)が支給されることになっている。また新たに住宅を借り事を望む場合は毎月1000-1500ユーロ(12万円ー18万円)が支給されることになっている。(2月24日付「OKディアリオ」から引用)。

一番の問題は賠償保険であろう。火災の発生の原因が未だ究明できないでいる。建物が保険に入っている以上、それによって保険会社の方での被災者への対応が決まることになる。また大手銀行の一つサンタンデール銀行は同銀行と契約している住民の住宅ローンの支払いを当面は保留にすることを決めた。

それにしても、今回の火災が教訓となって、新しい建築構造や建材の検討が実施されるはずである。また今回の建物と同じ材料を使った建造物はスペイン国内に多数あり、その対応についても検討が必要となって来る。(2月24日付「OKディアリオ」から引用)。