3月1日から25年春に卒業する学生向けの就活が解禁になり、会社説明が始まりました。また面接は6月1日解禁ですが、そんな設定を守っている企業はほんの一握りで実態は水面下で良質な学生の争奪戦であります。大体、まだ3月1日なのに面接を受けたことがある学生が7割、内定が3割(日経)ということは多くの学生は大学3年の夏ぐらいから動いていたということなのでしょう。
昨今の就活事情は学生が焦るというより企業が学生の奪い合い競争に走っているという方が正確で、傍で見ていると尋常ではない域に達しています。中小企業の学生採用担当者はイベントに出展し、ブースのところに「初任給〇〇万円!」と掲げ、お金で学生を釣り上げる状態です。
世界スタンダードからすればおかしな光景でありますが、日本の学生のように大学時代遊びほうけていても概ね、どこかの企業に就職出来て会社で社会人教育される仕組みはユニークそのものです。今思い返してみれば、幼稚園から小学校が1段階目の成長、小学生が中学生になった時に2段階目、中学から高校が3段目、高校から大学が4段目、そして最後の就職で5段目であります。この5段階成長論、私が勝手に言っているので世の中にそういう考えが存在するのか存じ上げませんが、日本人の独特の成長プロセスだと考えています。思うに、各段階、ハードルが上がる、そして自分に課せられた使命なり目標がより鮮明になり人格も変わる、そんな感じでしょうか?
なので社会人にしてみれば「お前はまだ学生だろ、社会人はそんなに甘くないんだよ」とOB訪問した学生に思いっきり上から目線で自分の成長ぶりを披露するわけです。それを聞く学生は「社会人って大変なんだ!」と思うのか、就活の顔つきはよりキリリと締まり、緊張感を持つ、これが大方いつの時代にも見られるシーンです。
さて、学生も名は知れど、中身をよく知らぬ会社に身を捧げようとするわけですから就活終了宣言で喜べるのは3月末まで。4月からは失敗の連続でメンタルに堪えることもしばしばです。学生のうちにボランティアやインターン、更にはバイトで会社と馴染んでおくことも一つの手段です。吉野家の社長がバイト出身で話題になったこともありました。ポイントは学生が持つイメージと就職した際のギャップをどう埋めるかであり、そこを失敗するとの精神的な病、あるいは3年で3割の退職者グループに入ることになります。
お前はどうしたのか、と聞かれれば建設現場の事務方として聞いたことがない言葉が並ぶ業界で必死に覚え、先輩に聞き、体で覚えた、そんな記憶です。割とその当時のことは鮮明に覚えていて今でも昨日のことのような感じすらするのです。そして部署が変わるたびに新たな世界に出くわし、ずっと勉強だったと思います。その点、かなり広範囲な仕事を経験させてもらったことがあとあとの人生のステップに繋がったと思います。
私の場合、部署替えが転職に近いぐらい違う業務となりました。現場勤務⇒不動産事業本部⇒秘書⇒バンクーバーですのでそれぞれのステップに於いて前職の経験が直接的には役に立たなかったのです。その点、努力させられたし、そこを勝ち抜くことで今の自分があるのかと思います。
今の学生さんにアドバイスできることとすれば転職は40年前と違い、短期間に転職しすぎない限り、OKだと思います。むしろ、会社の人事ローテーションに頼るより、自分で可能性を見出す努力とチャレンジをする方が20年後により強く経験豊富なビジネスパーソンになっている気がします。その点で女子は専門職を除き、転職率が低いと思います。企業側が敬遠するのかもしれませんが、女子の総合力を引き上げる点でも転職を支援すべきかと思います。
海外では大学を卒業後、企業に入れる標準的工程はあまりありません。(非常に狭き門として存在します。)よって学生は休みの時期にボランティア、社会貢献、インターンなどあらゆる経験を通じたコネクションを利用し、要領よく企業に入り込むか、さもなければどこかで3年ぐらいキャリアを積んでくるチャレンジ心が求められます。それからすれば日本の学生は世界で最も恵まれており、悩まずに社会人にシームレスでなれるシステムが存在するのは特筆すべき点でしょう。大学を卒業したけれど、という悩みは中国だけではなく、欧米を含めどこでも当たり前です。
学生は就職出来るありがたみをもっと感じてもらい、会社の名前で就職するのではなく、やりたいこと、チャレンジしたいことに向かって突き進んでもらいたいと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年3月3日の記事より転載させていただきました。