本書は、歯科医師であり心理カウンセラー・メンタルトレーナーの著者が書き下ろした心理学メソッド本です。アンガーマネジメントなどと同じく、ネガティブを制御するような心理療法プログラムと考えればわかりやすいでしょう。
「五感の魔法:あなたが主人公になる人生好転の脚本を創る方法」(松谷英子著)ごま書房新社
人生のたな卸しってなに
ちまたには、セルフマネジメントのプロという方がいます。本もたくさん出版しファンも多く、その道の専門家として認知されています。しかし、安易なセルフマネジメントはリスクがあり弊害があることも覚えておく必要があります。
たとえば、自己分析という手法があります。自己分析とは、過去の経験や出来事から価値観などを整理することからはじまります。志向タイプをはっきりさせて、自分の強みや弱みを明確にしながら自分自身の軸を発見するというものです。
多くの人にとって自己分析は新鮮に映ります。しかし筆者の経験から申し上げるなら、間違った自己分析に力を注いでも、ほとんど意味を持ちません。
それどころか「自己分析で見つけた強み」という思い込みは、誇大妄想になりかねません。実績として認めて数値化できるようなものでない限り、自己分析が他者と一線を画するほどのオリジナリティに溢れていることはまずないからです。
また、自己分析をすることによる最大の問題点は「自分は何者かを探し求める」あまりに、自分をひとつの型にはめてしまうことにあります。
たとえば、事業で成功して社会的に地位のある人でも、自己分析ができていない人はいます。自分の軸がない人もいます。それ自体は悪いことではありません。
軸を持たずに、自分のやりたいことや思考を目まぐるしく変化させるのは、世相や時代環境にあわせて変化していく柔軟な思考力を持っているということです。そのような場合は、自己分析に費やすよりも、他にやるべきことに費やすほうが賢明です。
自分の人生を自分で選ぶ
本書が興味深いのは自己分析をするポイントを五感(すなわち視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)に基づいている点でしょう。五感は、アリストテレスの時代から,外界のいろいろな刺激によって生ずる感覚として区別されてきました。松谷さんは次のように言います。
「あなたは、本当になりたい自分になっていますか?私はカウンセラーとして、多くの人の悩みを聞いてきました。その中で、よく耳にしたのが『本当は違うことがしたかった』『家族の影響でこの仕事になった』という言葉です。私が活動している医療業界では、親が医者や看護師だったから、とその道を選んだ人が少なくありません」(松谷さん)
「ふとしたきっかけから『あのときに〇〇に挑戦してみたかった』という思いが湧くことはありませんか?それは、心の奥に眠る本来の姿かもしれません。しかし、多くの人は、その姿に気づいても、実現するのは無理だと思いあきらめてしまいます。これが、人生の楽しさや充実感を失わせ、自信の喪失やストレスを引き起こす原因になります」(同)
では、どうすれば「理想の人生=ありたい姿」を実現できるのでしょうか?
本書では五感を活用して、人生をよい方向へと導く方法が紹介されています。人生は選択の連続です。自らを客観視してより良い人生を歩むきっかけをつかみましょう。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)