4/7まで米議会は休会:2024年度本予算の振返り

1. 2024年度本予算(9月末まで)が成立

① 2024年度本予算の投票

迅速に投票に進めるため、今回も規則を停止して即投票に進める特別ルールで対応した。そのため、可決するには投票者(棄権者を除く)の3分の2の賛成票が必要だ。280票必要だったところ、ギリギリの286票の賛成で通過した。

賛成(YEA) 反対(NAY) 白票 棄権
共和党 101 112 6
民主党 185 22 6
合計 286 134 12

ジョンソン議員が下院議長に就任してから、共和党は初めて賛成よりも反対票が上回った。事前予測で、共和党は100票の賛成を確保できない可能性があると指摘されていたがギリギリだった。

民主党からの反対はジェフリーズ少数党下院院内総務総務がほぼ予測していた通りの反対票数がでた。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金提供禁止が盛り込まれたためだ。

上院での採決は以下のとおり。12の修正案が採決されたが、すべて否決された。

民主党(無所属含む)からの反対は、サンダース上院議員とベネット上院議員。サンダース上院議員は下院民主党の反対と同様に 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金提供禁止に反対したため。ベネット上院議員は、ウクライナ支援が含まれなかったためとリリースをだしている※1

賛成(YEA) 反対(NAY) 棄権
共和党 25 22 2
民主党・無所属 49 2
合計 74 24 2
② 2024年度本予算に盛り込まれた注目点

共和党と民主党の発表資料※2から、いくつかピックアップする。共和党も民主党も勝利宣言をしているが、どちらかというと共和党のほうが多く勝ち取ったように思える。

  • 国境警備と執行のための予算を増額。移民収容施設のベッド数を34,000床から42,000床に増やし、最大2,000人の国境警備隊を追加できる予算を追加
  • 低所得家庭の5歳までの幼児と身体障害児を対象にしたHead Start Programと、軍人家庭への新設するチャイルドケアセンターに10億ドルの増額
  • ガン研究に1.2億ドル増加。アルツハイマーの研究資金にも1億ドル増加。
  • 台湾へ中国に対抗するための安全保障協力資金を倍増
  • インフレ削減法で可決したIRSへの追加資金から200億ドルを取消。
  • ガスコンロ設置禁止を禁止する
  • 米国に協力したアフガニスタン人に新たに1万2000人のビザを発給
  • 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に税金をつかって資金を提供することを2025年3月25日まで禁止。ただし、 ヨルダン川西岸とガザ地区の人道的プロジェクトに1億7500万ドルの資金が別途割り当てられた。

2. ジョンソン下院議長の解任動議提出

① 解任動議を提出されたジョンソン下院議長。グリーン下院議員がいつ投票に持ち込むかまだ未定。

共和党内部のルールでは、法案提出から採決まで72時間あけることとなっている。法案が提出されてから採決まであまりに短く、数千ページも目を通せないことが以前から問題になっていた。すべての議員が法案内容を把握しているわけではない。交渉メンバーに入っていない議員は、何も知らないこともある。

で、ジョンソン下院議長は以前も72時間未満で採決に持ち込んだ法案があったが、今回の年度予算採決についても同様に規則をやぶって採決を進めた。

そもそも共和党下院議員の半数以上から反対がでるくらい内容についても反対があったのだが、それ以上に72時間ルールを破ったことに反発が高まった。

以前から、ジョンソン下院議長の動きに反発してきたグリーン下院議員だったが、今回の約束破りには我慢ならなかったようで下院議長の解任動議を提出した。

ただし、これはグリーン下院議員本人も以下のように発言している通り、まだ警告の段階だ。

“It’s more of a warning”

“We’ve started the clock to start the process to elect a new speaker.”

解任動議の投票に進むには、下院議員は議場に出て投票を要求する必要がある。下院指導部は立法日の2日以内に決議案の採決をしなければならない。 グリーン下院議員はまだ解任動議の投票をいつ要求するかについては発言していない。しかしながら、ウクライナ支援を投票に進めるならば解任動議を提出すると以前から脅してきた経緯がある※3

現在は休会中なので、グリーン下院議員が最短で投票を要求するとすれば休会明けの4/9(火)になる。仮に、最短で進めば4月第2週に解任投票を実行することになるだろう。

しかしながら、あくまで現段階ではジョンソン下院議長の解任に賛成すると表明した共和党下院議員はでてきていないようだ。マッカーシー元下院議長の時と同じように、民主党は解任賛成に投票することになるだろう。そうなると、共和党下院議員からたった数名の賛成票でジョンソン下院議長は解任されることになる。そうなると、下院議長を決めないと何も投票できない事態に陥る。

しかも、ギャラガー下院議員が4/19(金)で引退するため、現在の共和党218議席が1議席減ることになる。さらに共和党にとって試練となるのは、4/30(火)にはNY州の特別選挙で民主党が1議席追加となる。そうなると、共和党217議席/民主党214議席となり、さらに議席差が縮まることになる。

5/21(火)にはマッカーシー元下院議長の議席をうめる特別選挙が行われるので、そこで共和党が勝利すればまだ218議席に戻るだろうが、それでも数席の差が続くことになる。

② 年内に下院の多数党が民主党になる可能性

ケン・バック下院議員は再選を目指さないとしていたが、急遽、3/24(金)に辞任した。ウクライナ支援を進めるための除名請願に署名し、フリーダムコーカスから除名処分となるなど最後の最後まで話題に欠かなかったが、「議会は機能不全に陥ってる」として議会を去った。

ギャラガー下院議員も家庭の事情としながらも、年内引退を早めて4/19に辞任することになってしまった。

共和党下院議員でベテランの委員長クラスが今年は何人も引退するのだが、どうも引退が早まっている。このままあと数名でてきた時には、民主党ジェフリーズ下院院内総務が誕生してもなんらおかしくない。

会期中の多数党交代は上院では歴史上何回かあったが、下院ではいまだかつて起こったことがなかった。

もしそうなったら、総選挙前に「オールブルー」となり、民主党は勢いづくことになるだろう。

今回の年度予算でも共和党は反対票の方が上回った。年内に、あと数名、辞任を早める議員がでてきても、おかしくない状況になっていることは注意しておいたほうがよさそうだ。

Mikhail Makarov/iStock

【参考資料】

※1:https://twitter.com/SenatorBennet/status/1771571643002851580
※2:Senator Murray Remarks Urging Swift Senate Passage of Bipartisan Funding Package
FURTHER CONSOLIDATED APPROPRIATIONS ACT, 2024
※3:What’s next now that Speaker Mike Johnson is facing a motion to vacate from Marjorie Taylor Greene