最近では、ディスラプトという言葉が使われるが、ディスラプトとは、自然な流れにそった連続的推移を乱すことであって、古いものが技術的条件等の環境の変化に合わせて自然に連続的に進化発展していくことではなく、その自然な流れが中絶されたところに、全く新しく非連続な展開が始まることを意味する。
ディスラプトが非連続だとして、事業構造が非連続である以前に、事業主体が非連続でなければならない。これは、事業主体の連続性からはディスラプトによる真の創造は生じ得ない、即ち、古い事業を継続しながら、それを自ら否定し、それを超克して、新しい事業を創造することはできないという自明のことである。
資金調達の面でも、ディスラプトは非連続なのであって、真に新しいものは、真に新しい資金によってしか、創造され得ない。しかし、その新しい資金は古いものからしか創出され得ないのだから、古いものに精気が吹き込まれることで、全く異なった性格のものに転換され、真の創造を行う企業に再投資されていく流れを作る必要がある。
社会変革の速度が速くなっていくと、真の創造といえども、短期間のうちに古いものに転じていくわけだから、そのときに適切なる事業主体へ売却され、新規創造とは異なる経営技術のもとで、発展させられる必要があるわけである。そこで、起業家は事業を売却し、売却によって得られた資金を新たな創造のために再投資するわけである。ディスラプトとは、まさに、この事業売却によって生じる事業主体の非連続のことなのである。
このようにして事業売却代金を得た起業家は、その資金を用いて新たに全く別の事業を創造することも理屈上は可能だが、その成功は、人間の能力の限界として、極めて非現実的であって、実際には、投資家としての立場に身を変えて、創造に挑戦する別の起業家に資金を供給することになる。これが現代の事業創造の金融面における仕組みである。
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森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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