読書後は、自分の考えや感想を言葉にすることで、効果を高めることができます。ロジカルな書き方ではなく、感動を伝える書き方が必要です。その理由とコツをお伝えします。
ロジカルな思考は役に立たない
ロジカルな思考はビジネスで必要だと思っていませんか? ロジカルな思考に頼ると、あなたは自分も相手も幸せにできないことがわかります。
文章を書くときには「重要なことを先頭に持ってくる」というルールがあります。これを「5W1H」といいます。欧米では「Five Ws」と呼ばれますが、日本ではさらに「1H」をプラスして「5W1H」と呼ばれます。文章のテクニックとして紹介され、多くの文章術の本でも「5W1H」は必須スキルだと書かれています。
When(いつ)、Where(どこで)、Who(だれが)、What(何を)、Why(な ぜ)、How(どのように)を押さえて書くというものです。しかし、必要以上に意識する とかえって文章が書きづらくなり、読者に伝わらなくなります。むしろ滑稽になるので注意が必要です。
「5W1H」はまったく役立たないというわけではありません。ビジネスの文書や報告書では、事実や結論を明確に伝えるために有効です。しかし、本書でお伝えしたい「共感」を生み出す文章には向きません。「5W1H」で書いた文章は、読者の心に響かないからです。
考えてみてください。日常会話で「5W1H」で話している人はいませんよね。「5W1H」で話す人がいないように、「5W1H」で書く人もいません。
ビジネスの世界では、「5W1H」を意識してさらにロジカルを意識することで、ビジネスを潤滑に進めることができるという人がいます。また、このように伝えられる人が「デキる」と評価される向きさえあります。しかし、それは幻想だと申し上げておきます。
ロジックやロジカルは相手を説得したり、事実を客観的に伝えるための道具です。しかし、それだけでは人の心は動かせません。人は感情で行動する生き物です。あなたがどんなにロジカルに説明しても、相手が感じることは「冷たい」「つまらない」「理屈っぽい」だけです。それではビジネスでも人間関係でもうまくいきません。
どの会社にも、必ず「ロジカル・バカ」みたいな人がいますが、人の気持ちはロジカルでは動きません。ニュースなどの報道も「5W1H」ですが、これは事実を端的に伝えるためです。ニュースに視聴者を感動させる要素は必要ありません。
論より証拠、あなたはテレビのニュースを聞いて感動したり心を動かされたことはありますか? ロジックやロジカルにだまされてはいけないのです。
ロジックやロジカルにだまされない
コンサルティング会社が提供しているセミナーや研修に参加すると、触発された人が急にロジカルになることがあります。「このロジックは」「やはりロジカルに」などと、頻繁に口に出すようになります。
ロジックやロジカルは、相手を説得するためのフレームワークにすぎません。そこからは価値を生み出しません。
人の気持ちはロジカルだけでは動かず、そこに強い思いや情熱があったり、楽しいと思うから動くのです。気の向くまま、感情のおもむくままに本を読みアウトプットしてください。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)