イランによる「恐る恐る」のイスラエルへの攻撃。事前に攻撃に関する情報を出して、イスラエルの激怒を避けた。人類は数千年戦争をやってきた。どこの誰が、攻撃する相手国に事前に通告のようなことをするのか?以前、トランプ政権に革命防衛隊司令官を殺害された時の報復として、イラク米軍基地への報復でもイランは予告した前歴はあるが、まずあり得ないことをイランは今回もやった。全面戦争を避ける目的で、あくまでも弱腰という批判を避ける国内世論向けの攻撃だが、それには以下の理由がある。
ひとつのキッカケになったイスラエルによるシリアのイラン大使館への攻撃は、国際法違反であるのは間違いない。さらに普通の常識では考えられないことだ。そこはそこで当然、強く批判されるべきだ。
だが10月7日以降のイスラエルのやり過ぎ。日本語情報には「コタツ」報道が多いせいか、日本人があまり知らない部分がある。
例えば今回のイラン大使館への攻撃。日本ではあまり報道されないので、日本人の多くが知らないこと。一応大使館の一部だが、本館は無事。破壊された隣の独立したビルには、イランの革命防衛隊など、テロリストのハマス、ヒズボラ、フーシ派などなどを側面支援する軍事専門家がいた。つまりシリアにあるイラン大使館を隠れ蓑にして、さらなるイスラエルへのテロ攻撃を計画していたと言われる。
米諜報によるモサドへの情報提供も少しあったと推測されるが、その数人、つまり中東の安定を損なうことをやっているテロリストを抹殺する目的で攻撃が行われたといえる。
いまでも、安全なカタールなどの海外にいる億万長者ともいわれるハマス最高幹部やガザ南部にいるハマスの幹部連中も、イスラエル軍は燻り出して抹殺する。
日本人の多くはガザの女性・子供の被害など本当によく知っており、イスラエルだけを非難する。確かに3万人とも言われる犠牲者には言葉も出ない。
だが、ハマスが病院や学校を使って、可哀想なパレスチナ人を人間の盾にしていることは,殆ど知らないし、大した関心もないようだ。
病院などの地下施設に関する日本語の報道をみよ。小生はCNNや日本での報道の前に、大昔イスラエルが建造した事実を公開した。日本人の多くが「そんなものない、証拠をみせろ」の連呼だった。流れを変えた大病院の被害。イスラがやったというハマス側の嘘を日本メデイアは基本的に信じて大きく報道。イスラ側の主張はほぼ無視、当然許されない無実の人々の死、イスラのやり過ぎを大きく報道、理由にはほぼ目を背けつつ、イスラへの批判ばかりだ。
簡単にいえば、ハマスがパレスチナ人を「盾」にするのを止めれば、「虐殺」と言われる巻き添え殺人は、ほぼ終わる。
今回のイラン大使館への攻撃も、イランのテロリストといえる幹部が会議していなければ起きなかった。
さらに、大使館を攻撃すればイランは確実に反撃する。その結果、米国などイランをテロ国家と信じる人々が、やり過ぎ感が強いイスラエルのネタニヤフへの批判を弱める。かなりの巻き添え犠牲者が出ても、ガザにおけるハマス幹部殲滅作戦を継続し易くなる。そんな計算も、ネタニヤフにあったに違いない。
国際法違反だの、大使館攻撃などとんでもないと怒る日本人も多いが、上記の論点を指摘する人はあまりいないだろう。
一応、やり過ぎで国内でも批判が高まっているネタニヤフにも問題がある。だが一応、イスラエルは民主主義で動いている。
他方「権威主義」のイランをみよ。ハメネイという最高指導者が、最終決定をしている。最後は全て「アッラーの思し召し」で決まる。嘘も米国などと比べれば、その質と量の違いが、「コタツ」報道でも、理解できるはずだ。
若い女性がヒジャブ着用しなかったために、当局に殺されたという解釈もある事件もあった。それを批判した反体制派も死刑になった。つまり言論・報道の自由があまりないのがイランだ。
一応、イスラムの教えでは、大量殺戮兵器は持てないといわれる。だが最高指導者がなんらかの言い訳をすれば、止める手立てなどない。イラン、露中のような「権威主義」。他方、なんでもかんでも時間がかかる「民主主義」との違いは鮮明だ。
日本人女性専門家、母校の慶大の錦田愛子教授が「既にイランは核兵器を持っている」という「思い込み」を言った。それは間違いだ。完成間近だが、あと数週間から半年、1年弱かかる。
黒井氏も言ったが、イランに核を持たせると怖い。一応の民主主義が生きているイスラエルや米国との基本的な違いだ。
今回の遠慮したイランによるイスラエルへの攻撃。やり過ぎれば、以下のように筆者が1年以上前にアゴラに書いたこと。イラン国内の核施設が、以前のように、1981年イスラエル軍により完全破壊される可能性が大だ。
あの時もそうだった。一部は同じようにイランの核保有に「反対」の米国が支援したという論もあった。筆者は裏を取ったが、事実としてはなかった。
だが、今回イランがやり過ぎたとイスラエルが判断するなら、以下に書くように、イラン本土への攻撃をして、核施設を破壊する。イスラエルには2回の前科がある。1回目は1981年。例のイラクのサダム・フセインがmフランスの協力を得て核兵器を持とうとした時だ。トム・クルーズ主演映画「トップガン」のモデルにもなった。2回目は2007年シリアの原子炉を破壊。イスラエルはやる時はやる。国際法違反とか言ってもやる。誰も止められない。
イランはそれを恐れて、今回遠慮がちの攻撃にしたと考えられる。折角、経済制裁まで受けても、努力して、完成間近までもっていった核兵器施設を破壊されるのは、どうしても防ぎたい。
同時に、イランからみた世界。逆の立場。イスラエルによる大使館への攻撃を理由に、イランは祖国防衛を理由に、紆余曲折を経て、これまで少し遠慮してきた核兵器開発を一気に完成させる可能性も高まった。イスラエルの攻撃を受けたとして、核拡散防止に関する国際的な枠組みから比較的簡単に離脱、胸を張って核兵器を持つようになる。
イランの核施設は地下深くにある。以前のようなイスラエル空軍による空爆から身を守るため、通常爆弾では届かない場所にある。
だが筆者が日本人ジャーナリストとして唯一、ロスアラモス研究所を訪問取材、日本に紹介したのが「地表貫通爆弾」だ。もともとはシベリアのツンドラ地下深くのWMD(大量破壊兵器)施設などの破壊を目的とした特殊爆弾だ。通常、核弾頭を付ける。
米が提供するなら、イラン核施設を破壊できる。公的には認めないが、イスラエルが核兵器を持っているのは世界の常識。
それと同じように、イスラエルは既に「地表貫通爆弾」を持っているという論もある。
これも以前アゴラに書いた。日本は唯一の被ばく国と言いつつ、核廃絶に努力しているはず。しかし米国オバマ政権が核拡散を防止するため、例えば非核国に対して核の先制攻撃しない約束など、核の威嚇力を弱める準備をした時だ。いまも昔も世界の常識だが、日本の防衛は米国の核の傘に頼る。それを受けて「日本防衛のマイナスになるのでやらないでくれ」と、政権だけでなく、議会にまで、お願いをした史実がある。
日本の「核」政策:もっと真剣に日本の防衛を議論せよ 野口 修司 アゴラ
ワシントンを中心に、日本政府がやっていることを世界は知っている。だが、日本人の多くは知らない。日本は世界に向けて「核廃絶」にまっしぐらと、勝手に思い込んでいる。
だが小生が書いてから7年くらい経過して、NHKも証言と文書を元にこの史実を正確に報道した。このように、世界の安全保障の冷徹な現実が示すこと。日本は廃絶どころか、拡散防止努力をする米国にまで頼んで、自国防衛のため逆の行動を取っている。
それが世界における日本の「立ち位置」の現実。世界の安全保障における核兵器の意味だ。自国防衛と抑止にいまは必要。廃絶は目標として当然素晴らしい。だがプーチンの蛮行をみても理解できるが、現時点で世界は逆方向に向かっている。
さらに、日本はイランと仲がよい、中東で独自の和平交渉ができるとかいう人もいる。仲がよいのは間違いない。だが外交と国際政治に関してはなにも分かっていない。昭和天皇に拝謁したサウジのヤマ二石油相やアルジェ石油大臣に小生が対談した時の話も裏付けになる。1970年代の石油危機当時のイランとの関係を勉強するべき。最近に至るまで、文化や民間レベルでは確かに友好関係は実存する。
だが安全保障に関して、イランとの交渉などまず間違いなく無理だ。日本独自の平和外交ができるとか日本人。これも思い込みだ。
中東の混乱は核拡散につながる可能性が高い。プーチンによるウクライナ戦争をみても分かるが、世界は大変な方向に向かっている。
さらなる、現実と史実を勉強。それを元に深い議論が必要だ。