「5円玉」が額面以上の価値を持つ日は来るか?

太陽光発電投資設備に侵入して銅線を盗むという犯罪が増えているそうです。これは銅の価格が上昇することで、銅線の価値が高まっているからです。

銅価格の上昇は、硬貨の材料コストの上昇にもつながります。

例えば5円玉の原料は銅と亜鉛からなる黄銅で、混合割合は銅が60〜70%、亜鉛が40〜30%とされています。重さ3.75グラムのうち、銅が2.44グラム、亜鉛が1.31グラムという含有量です。

日本経済新聞によれば、5円玉の材料コストを取引価格から計算すると、直近では銅が4.03円、亜鉛が0.69円で合わせて4.71円となるそうです。額面に極めて近づいています。

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重さ4.5グラムの10円玉になると銅の比率が95%まで高まり、亜鉛と錫が含有されています。こちらも材料コストを推計すると7.54円となります。

銅や亜鉛の価格は今後さらに上昇する可能性があります。また、金属価格は外貨建ての取引が主体ですから、円安になれば円ベースの価格が上昇します。そうなればいずれ、5円玉の材料コストが5円を超える事態も考えられます。

硬貨を溶かして材料を取り出すことは貨幣損傷等取締法により犯罪行為になり、1年以下の懲役または20万円以下の罰金とされています。

溶かす人はいないかもしれませんが、集める人が増えて、5円玉が市中から姿を消してコイン商などで額面を上回る価格で売買されるというのはあり得るかもしれません。

ただ、例え5円玉を1万枚集めたとしても額面は5万円に過ぎません。材料コストが10円になったとしても数万円程度高値で売れるかもしれないというレベルです。保管場所の問題もありますから投資としては現実的ではないでしょう。

実際に材料費高騰で額面を上回る価値という事態になったら、財務省が材料比率の変更などの対応をするのか?興味を持ってモニタリングしています。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年5月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。