渋谷・アートなトイレめぐり②

先日、「散歩の達人」編集長の久保拓英さんと一緒に渋谷区内に点在する「アートトイレ」を巡る旅(散歩)に参加しました。

414 渋谷・アートなトイレめぐり①|ミヤコカエデ(Miyako Kaede)
東京・渋谷にやってきました。日曜日の渋谷はどこもかしこもすごい人!ぶつからないように歩くので精一杯です。みなさんどこにいくんでしょうね。 さて今回のタイトルは「渋谷・トイレめぐり」。渋谷で悪いものを食べてお腹を壊してたわけじゃないですよ?雑誌「散歩の達人」の編集長・久保拓英さんと一緒に渋谷のデザイナーズトイレを巡る散...

↑そのときの記事はコチラ。

THE TOKYO TOILET
見たことがないような公共トイレが渋谷区に。日本財団が実施する、誰もが快適に使用できる公共トイレを設置するプロジェクト。 トイレは日本が世界に誇る「おもてなし」文化の象徴。渋谷区の17カ所で、順次公共トイレが生まれ変わっていきます。それぞれのトイレには、世界で活躍する16人のクリエイターに参画いただきました。それぞれに個...

渋谷区内の公園や街角には現在17のアートトイレがあります。かつて公共トイレは臭い、汚い、怖いといわれ使いたくても使えない、犯罪の温床になるともいわれていました。

そのイメージを一掃し、だれも安心して心地よく使える公共トイレを作ろうと日本財団が区に企画を持ち掛けたのが「THE TOKYO TOILET プロジェクト」です。16名の建築家がこれに参加し求められた設置基準の中で斬新なデザインを練り上げて2020年以降区内に17のトイレが完成しました。

久保さんとはそのうち3つのトイレを巡ったのですが、そのあとほかにはどんなトイレがあるのか調べてみました。するとなかなか個性的なトイレがほかにもあるじゃあありませんか。そこで今回は5月22日にひとりで歩いたそのほかのトイレをご紹介したいと思います。

A. 代々木深町小公園のトイレ

そのほかのトイレを紹介すると言いながら、最初に来たのは前回も久保さんと訪ねた代々木深町小公園のトイレ。

壁面のガラス壁が透けて中が見えることで話題騒然となったトイレですが、実はこのときには不具合が発生しており壁面は常時中が見えない状態になっていました。寒い時期には機能しないということだったので、今回改めて訪ねてみました。

透けてる!

ほんとうに中が丸見えです。これはなかなかのインパクト。

中に入るとこんな感じ。内側からも公園が丸見えです。それが鍵をかけると…

みごと!スモークがかかって見えなくなりました。ガラスには不透明のフィルムが貼られていて、開錠すると電気が流れてフィルムが透明になるという仕組みだそう。夜間はトイレの中の灯りが街灯代わりに公園を明るく照らしてくれて防犯の役割をしてくれます。

画期的なアイデアのトイレ。海外の方も次々と来て利用したり写真を撮ったりしていました。くれぐれも鍵を閉め忘れることがないよう注意したいものです。

B. はるのおがわコミュニティパークのトイレ

代々木深町小公園から徒歩3分の場所にある「はるのおがわコミュニティパーク」のグラウンドにも色違いの透けるトイレがあります。グラウンドの利用者がいないときはこちらのほうが空いているかもしれません。

C. 西参道交公衆トイレ

はるのおがわコミュニティパークから20分ほど歩いて甲州街道まで来ました。ここは渋谷区の北の端、道路の向かいは新宿区です。西参道交差点の隅にあるのは真っ白な装いのおしゃれなデザインのトイレ。オリーブが植えられていてまるでギリシャに来たかのようです。行ったことないけど。

デザインした藤本壮介さんは「トイレとは都市における水場」であり、人々が寄り集まる器をイメージしてこのトイレをデザインしたそうです。器には様々な高さの蛇口があり、コンセプトを活かしつつ子供も大人もだれもが使いやすいような機能性も考えた設計になっています。

入口の照明が夜は街灯代わりになります。壁が白いことで建物全体も明るく町を照らすような役割を果たしてくれます。ただ南国風という理由で白いわけではないんですね。白は清潔を象徴する色でもありこの後のトイレも白いデザインのものが多くあります。

D. 西原一丁目公園のトイレ

甲州街道を西に進み、幡代バス停のあたりにある遊歩道にあるのが西原一丁目公園のトイレです。大きな通りから一本中に入った場所で夜は人通りも少なく、以前は暗くてとても入りいトイレだったそうです。

明るく開放的なトイレで公園全体を明るくすることをコンセプトにこのトイレがデザインされました。中に入るとゆるやかな光が注いで表にある木々の影を映し出しています。居心地がよくてつい長居してしまいそうになります。

E. 七号通り公園トイレ

甲州街道を幡ヶ谷駅まで進んで街道の北に渡ります。街の小さな公園にあるインパクトの強い白いドーム型の建物。これが七号通り公園トイレです。

このトイレ、なんとトイレに手を触れることなく使用できる画期的なトイレです。公衆トイレを使う人の多くがレバーを足で踏んで流したり、お尻でドアを開けるなど極力手を使わないようにしているという実態を踏まえて考え出されたそう。

道路の裏手にある入口にはこんな画面があります。

※画像は一部加工しています。

スマートフォンでQRコードを読み取って「入室」ボタンを押すとドアが開きます。画期的!

トイレの中にはマイクがあって、「Hi Toilet! 水を出して」というと蛇口の水が流れ、「水を止めて」というと水が止まります。声が小さいと「もう一度はっきりと言ってください」と言ったり反応しません。大きい声で言うと外に声が漏れてそうでちょっと恥ずかしい…。

それでは、蛇口の水を流してみましょう。

あれれれれ~?おかしーなー。いろいろ試したんですが誤った聞き取りが多い気がしました。

まだ開発途上ではありますが新鮮な体験をしたと思いました。もっと精度が上がってくれば今後手を使わないでいいトイレが増えていくのかもしれません。

F. 幡ヶ谷公衆トイレ

最後に訪ねたのは幡ヶ谷第三公園の脇の笹塚出張所交差点にあるトイレ。5メートルもある高い天井と広い間口が印象的です。

手前と奥の正面、奥の右手の三か所にトイレがありますが、パット見ただけではトイレとは思わずイベントスペースのようです。それもそのはずでこのトイレのコンセプトは「…With Toilet」。常にともにあるトイレを目指し、イベントやギャラリーとしても活用できるスペースとして中央空間を設けました。こちらも夜は街灯代わりとなって町を明るく照らします。

おわりに

今回は6つのアートトイレを巡り歩きました。どれもいかにみんなが使いやすいトイレにできるか、いかに町になじむか、いかに町を明るくするか考え抜いてデザインされた秀作だと感じました。

トイレを見て歩くだけでもこんなに楽しい散歩ができます。みなさんも渋谷のトイレ散歩、トライしてみてはいかがでしょうか。

今回歩いたルート。アルファベットはタイトルのものと一致しています。
Gはゴールの笹塚駅。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年5月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。