仕事がうまくいくかどうかは、関わる人々の心意気で大きく変わります。
相手を「ムズムズさせて、仕事がうまくいく方法」をうまく使って、相手を「やりたくてムズムズさせる」ことができれば、物事がスムーズに、そして楽しく進みます。
「ムズムズ仕事術」(市川浩子著/あさ出版)
仕事に大切な「ムズムズ」のテクニック
ムズムズはレジ前の「ひと口羊羹」だと市川さんは言います。どのようなことでしょうか?
「コンビニで支払いをしようとした時、ふと、レジ前に置いてある『ひと口羊羹』が目に入り、『これも、お願いします』と、つい買ってしまったこと、ありませんか。ひと口羊羹でなくとも、いちご大福、チーズ入りかまぼこ、チョコレート菓子、ホットスナック・・・・・でも構いません(笑)。こうして、つい買ってしまったひと口羊羹は、いつにも増しておいしく感じませんか?」(市川さん)
「買うつもりじゃなかったのに、目に入ったとたん、『おいしそうだな』『食べたいな』『そう言えば、小腹すいているな』などの思いが生まれ、買わずにいられなくなってしまった。この『ひと口羊羹との出会い』が『ムズムズ」』です。『ムズムズ』が起きると、人は少しでも早く行動し、叶えたくなります。 そして、『ムズムズ』を叶えた後の満足度は格別です」(同)
ビジネスの際に、相手が「ムズムズ」していれば、 「叶たい」「欲しい」という想いをより一層引き出すことができると、市川さんは指摘します。
「ちょっとした仕掛けで他人を『ムズムズ』させることができるのです。レジ前で『ひと口羊羹』を見て、つい買ってしまったという行動は、一見、本人の心のままの行動のように思われるかもしれません。実は、お店の人が演出したことによって生まれたものです(市川さん)
「ムズムズ」は色んなものに転用できる
筆者は著述家でもあるので多くの文章を書いています。文章には、さまざまな機能があります。インパクトをもって効果的に伝えるために大切になるのが、「フック」です。
読者の気持ちをつかむには、導入部分にフックとなる印象的な話題を用意しないと、次の文章に誘導できません。これは「ムズムズ」に近いものだと考えることができます。
特に最初の100文字は重要です。ここでフックが掛からないと読んではもらえません。フックで読者の心をつかみ、心を刺激することが重要なのです。ただし、フックが大事といっても、そればかりに意識が向くと過剰な書き方になったり、内容が伴わない文章になったりしてしまうので注意しなければなりません。
日常的な仕事でも、フックは役立ちます。たとえば、企画書、プレゼン、セミナー資料も同じことです。フックがあることで、相手は「そういうことだったのか!」と納得するからです。そのためには、フックが掛かった後、読者に期待することを明文化することも必要になります。
「ムズムズ」は時代によって変化する
10年ほど前、ニュースサイトでコラムを書き始めた頃の話です。K氏の格調高い文章は、バイブルになると言われたことがあります。ところが今ではそうではないのです。文章は時代とともに変わるので、当然といえば当然のことなのでしょう。
しかし、時代の変遷に左右されない普遍的なお手本もあります。中原淳一は、少女雑誌「ひまわり」の昭和22年4月号に次のような文を寄せています。
「美しいものにはできるだけふれるようにしましょう。美しいものにふれることで、あなたも美しさを増しているのですから」
今でも通じるクオリティーの高いコピーです。時代の変遷に左右されないお手本とは、著者の技術的探求の結晶ではないかと思います。そして、時代を経ても解釈が変わることはありません。
この機会に皆さまも「ムズムズ」を探求してみませんか。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)