途上国の人が『インプレゾンビ』になる理由を日本人は何も知らない

日本人のXの人気スレッドに、ここ最近はインプレゾンビというアカウントが湧いてきており、かなりめんどくさいなぁと思っている方が多いでしょう。

実は私もここ半年位の間でしょうか、インプレゾンビが湧きまくっていて、自分のタイムラインが埋まってしまうことが少なくなく困り果てています。

2023年12月8日に発売された私の新作書籍『世界のニュースを日本人は何も知らない5』でも解説していますが、海外のネット事情は日本と色々異なるので、インプレゾンビ出現に関しても海外の事情を知っておくとさまざまなことが読み取れます。

このインブレゾンビと言うのは、Xの人気の投稿やスレッドに意味不明な返答を送り付けて、他人の投稿人気にタダのりして自分の投稿を見る人の数(インプレッション)も伸ばしてお金を稼ごうとするアカウントのことをいいます。

Vadym Plysiuk/iStock

いくらブロックしても次々に湧いてくるので、ゾンビと言われているわけです。

こういったアカウントの多くは、インドやパキスタンのような南アジア、ケニア、ナイジェリアといった発展途上国のユーザが作ったと思われるアカウントが大半を占めています。

おそらくインプレゾンビのマニュアルが出回っているのだと思います。

イーロン・マスク氏が導入した広告収入シェアの仕組みにより、現在では条件を満たしているXの有料会員の場合はインプレッション数に応じて報酬が支払われます。

ただし、フォロワーが20万人とか30万人いるインフルエンサーの場合でも月に10万円から20万円程度の報酬にしかなりませんので、フォロワーが少ないユーザの場合は、たいしたお金にはならないのです。

インプレゾンビのアカウントの場合は、1ヵ月に数千円程度の報酬を得ているようです。

しかし日本人の多くは、なぜ彼らがこんなに少ない報酬でインプレゾンビをやるかということがよくわかっていない方が多いようです。

これは海外にいないとなかなかわかりづらいのですが、発展途上国の多くは国際経済統計で見るよりも、実際に住んでいる人の現金収入がはるかに少ないのです。

例えば欧州でもブルガリアとかマケドニアの田舎に住んでいる人の場合は、月収が数千円程度ということが割と珍しくありません。とにかく地元には仕事がありません。

ケニアやナイジェリアの田舎の場合は、やはり現金収入を得る仕事が本当に少ないので、月に5000円程度の仕事でも大変な収入になるわけです。

これは実は経済成長が著しいと言われているインドでも農村に行けばそんな感じです。インドと同じくバングラデシュもパキスタンもとにかく格差が凄まじいので、何とかして現金収入を得たいと言う人がかなりいるわけです。

日本のメディアに登場するIT企業のオフィスなどは、超エリートが働く世界です。とにかく格差が凄まじく、コネがなければ仕事はないので、大半の人は恐ろしく貧しいのです。

こういった理由で、実はここ数年インターネットを騒がせてきたフェイクニュースやTikTok上の過激な動画というのも、途上国の人が作って投稿しているものが多いのです。先進国の暇人やニートがやっているわけではありません。

マケドニアやアルバニア、などにはフェイクニュースの工場があって、現地で現金収入が無い若い人たちがオフィスに集まって、せっせとフェイクニュースを作っています。こういった国の場合は、先進国の個人情報規制や著作権法が適用されないので、他の国であれば犯罪に問われることもやってしまっているわけです。

しかし、フェイクニュースを作ったり、手の込んだ動画を作るのには、ある程度のノウハウやPCが必要になりますから、Xのインプレゾンビのように、低価格な中古のアンドロイドスマホから、延々とレスを繰り返す作業は、非常にコストパフォーマンスが良いわけです。

途上国でも中国経由で入ってくるアンドロイド機種は安く、SIMカードもプリペイドのものが安く手に入ります。

つまり途上国からインプレゾンビが湧いてくる現象からは、途上国の経済格差、中国製のスマホの普及、携帯電話網の発達、現在のインターネットに関係する法の穴などがわかるわけです。

そしてこの様な環境は実は国際政治に深く関わります。

現金収入が欲しい途上国の人々に、中国やロシアは情報工作を外注し、フェイクニュースを大量に流すことで敵国を混乱に陥れます。しかし情報通信関係の法やスパイ規制法は国内でしか通用しませんし、他国のフェイクニュース工場の人々を逮捕することができないので手出しができません。しかもやりたい人は大勢いるので叩いても叩いても湧いてきます。

【参考記事】