蓮舫氏のついた「6つの嘘」はまだ解決していない

池田 信夫

東京都知事に立候補する蓮舫氏をめぐって、いろんな噂が飛んでいる。昔の事件は忘れている人が多いだろうが、彼女の問題は「二重国籍」ではない。

確かにアゴラが指摘するまで31年間、二重国籍だったが、それは台湾国籍を離脱して今は解決している。問題はそこに至るまでの説明が二転三転し、民進党員と国民をあざむいたことだ。その嘘を簡単におさらいしておこう。

    1. 2016年8月末、八幡和郎さんが「蓮舫にまさかの二重国籍疑惑」という記事を書いた。彼女がいろんなメディアで「生まれながらの日本人」だとか「18歳で帰化した」とか辻褄のあわない話をしていたからだ。
    2. 9月6日に蓮舫事務所スタッフが台湾代表処(大使館のようなもの)に行った。その目的を明かさなかったが、「改めて台湾籍放棄の手続きをした」と嘘をついた。このとき彼女はまだ台湾国籍が残っていることに気づいて、有効な旅券とともに国籍喪失申請をしたはずだ。
    3. 9月13日に「国籍離脱した」と発表し、それまでは離脱していなかったことを認めたが、これも嘘だった。翌年になって彼女が出した9月13日付の喪失国籍許可証書があったのなら、このとき出せたはずだ。これは党員・サポーター投票の〆切後だったので、「代表選は無効だから延期すべきだ」という署名が党内でも集まったが、9月15日に執行部は代表選を強行し、彼女は1回目の投票で圧勝した。つまり彼女は国籍法違反の状態で代表選挙に当選したわけだ。
    4. 2004年の選挙公報で「1985年、台湾籍から帰化」と経歴詐称した証拠が出てきた。これは公職選挙法違反(公訴時効は3年)であり、彼女も翌年7月の記者会見で事実は認めた。
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    5. 国籍選択宣言は10月7日に認められたが、これだけでは二重国籍は解消できない。実はこのとき国籍離脱の手続きは台湾内政部で審査しており、その後も12月17日まで外交部で審査していた。台湾政府のウェブサイトで「謝蓮舫」の国籍喪失記録を検索すると、次のように「1051017由內政部審核完成,將發文函送外交部」と出てくる。これは「民国105年(2016年)10月17日に内政部で審査が終わって外交部に送った」という意味なので、彼女はまだ国籍を喪失していなかった。
    6. 辞任する前の記者会見で戸籍謄本の一部と喪失国籍許可証書と1984年に失効した旅券を見せ、それ以降は日本国籍しかもっていないと主張した。しかし台湾政府の国籍喪失には現在有効な中華民国の旅券が必要なので、この旅券では国籍喪失の許可は下りない。

    われわれが何度も警告したように、二重国籍そのものは大した問題ではないので、代表選挙の前に「すいません。国籍離脱を忘れてました」と謝罪すれば終わった話だが、嘘をついて話が矛盾し、それを追及されると新たな嘘をついて収拾がつかなくなった。

    このうち第5と第6の嘘(国籍喪失の日付と旅券の有効性)については、まだ本人が論理整合的な答を出していない。おそらく1984年に旅券は更新され、その後もそれで台湾に入国したと思われる。本人も「二つのパスポートをもっているが、日本のパスポートはそのうち捨てる」などと公言していた。

    彼女はこういう追及を受けて戸籍謄本の開示を求められたとき「差別主義や排外主義には屈しない」と問題をすり替えたが、同じ時期に二重国籍が発覚した自民党の小野田紀美氏はただちに米国籍を離脱し、その証明書と戸籍謄本を開示した。これは単なる手続き問題であり、民族差別とは無関係だ。

    蓮舫氏がいまだに認めないのは、日本の国籍法では二重国籍が違法だと知らなかったことだ。だから「私は帰化した」とか「二つの国籍をもっている」とか矛盾する話を平気でしていた。それは芸能人としては大した問題ではないが、公権力を執行する都知事としては不適格である。