5月18日、岡山県をぶらぶら旅していました。今回やってきたのは倉敷。大原美術館を中心とした美観地区の街並みは全国的にも有名です。
美観地区はもう何度も訪ねているのですが、何度来ても飽きることがない素敵な町です。「倉敷」の名は江戸時代、この地が天領であり米の集積地だったことで「蔵屋敷」がたくさんあったことからそれが転じて「倉敷」となったとも、蔵の集積地のことを「倉敷地」と呼んでいたことに由来するとも言われていますが、いずれにしてもここに多くの蔵が立ち並んでいたことが町の名の由来なのは間違いないようです。それが証拠に今も美観地区には多くの蔵の跡を見ることができます。
倉敷駅の周りにいると海を感じることは全くありませんが、実は倉敷は干拓でできた街であり、中世までは島の集合体でした。江戸時代に干拓事業が進められて倉敷周辺の島々が繋がり現在のような陸地が出来上がっています。倉敷市内には児島、水島、玉島など島のつく地名が多いですがそれはこれらの地区がもともと独立した島であったことを示す名残です。
鶴形山から美観地区を見下ろします。今は市街地の中にある小高い丘のような印象を受ける鶴形山もかつては島。山の鎮守様である阿智神社が海の守り神であるのもこの地域がかつては海であったことを物語っています。干拓されたあとは倉敷川などの運河が敷かれ、この地に蔵が建てられ米の中継地としての機能を果たしました。
そんな蔵が立ち並ぶ美観地区。多くの蔵がリノベーションされて土産物店などの店舗に生まれ変わっています。
こちらはかつて診療所だった建物。今はジャムなどを売る店に生まれ変わっています。レトリックな看板がそのまま残り何ともエモーショナル。
街歩きが何とも楽しい。商品を買わずとも、興味をそそられる店が多くあって足が止まります。どれだけ時間があっても足りませんね。
酒蔵だった建物をリノベーションした焼き鳥屋。
酒蔵は手放しているもののその向かいで森田酒造は今も健在。100年以上この地で日本酒を作り続ける老舗で黒漆喰の壁に貫禄が現れています。
蔵の並ぶ通りの東の端まで来ました。倉敷に来ると必ず立ち寄るのが如竹堂さん。ここではある「倉敷の新名物」を販売しています。
そう、それは「マスキングテープ」。かつては塗装やシーリングの際に塗装箇所以外を汚さない目的で使用されるなど施工現場の道具として使われていましたが、今はこのような様々な柄のテープが売られ、手帳や部屋の装飾、部屋の汚れ防止のために使われるなど汎用性が高まっています。雑貨用マスキングテープのメーカーのひとつであるカモ井加工紙は倉敷市に本社を置いています。
かつて多くの船がコメなどの物資を運んだ運河、倉敷川。大原美術館のほか多くの観光施設が集まる美観地区のハイライトスポットです。こういう水辺を歩くととても気分が落ち着きます。
さて、川の向こうの方からなにやら威勢のいい掛け声が聞こえます。どうもこの日は阿智神社のお祭りが開かれていたようです。川沿いを神輿を担いだ人たちがやってきました。
倉敷川にかかる橋を渡る神輿。子供たちも威勢のいい掛け声を掛け歌を歌います。倉敷にはほかにも夏に天領まつりなど大きなまつりがあるようですが、春のこの地域の祭りも地域に密着していることを伺わせます。倉敷にも多くの外国人観光格がいましたが嬉しそうに写真を撮っていました。
さて、そろそろ電車の時間が近づいてきたので駅に向かうとします。
何度歩いても楽しい蔵の街倉敷。蔵造りの街並みを堪能してもよし、ショッピングを楽しむのもよし、食べ歩きを楽しむのもよし、それぞれの楽しみ方ができます。駅からも近く10分ほどでアクセスできますので、近くを旅することがある方はぜひ立ち寄って蔵の街歩きを楽しんでみてください。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年6月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。