レガシーと化した銀行業の持株会社を通じた構造改革

今や、社会構造や技術条件の変化は、ディスラプティブ、即ち、断絶的、不連続的、あるいは破壊的とすら呼ばれるくらいだから、常に、どこかの場所で何らかの新旧交代が生じて、何かが必ずレガシー、即ち、負の遺産として捨てられるべきものになっているわけである。

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しかし、ある企業にとっては、レガシーでも、別の企業にとっては、レガシーとは限らない。例えば、造船業は、総合重工や総合重機と呼ばれる複合事業体の巨大企業にとっては、レガシーとなっても、総合重工とは全く異なった経営風土をもつ専業の中堅造船会社にとっては、レガシーではなく、故に、そうした専業社を軸に、造船業の産業再編が起きたのである。つまり、造船業自体は、レガシーではないわけだ。

造船業は一つの例にすぎず、複合事業を営む大企業にとってはレガシーになった事業でも、産業自体はレガシーになっていないものは少なくないだろうから、様々な分野で、そうした大企業のレガシーを集約することは、日本産業の成長戦略になろう。

では、産業自体がレガシーになってしまったら、どうすればいいのか。もはや、産業構造を抜本的に転換するほかないであろうが、多くの場合、ある産業がレガシーになる理由は、環境変化により、顧客の利便性が失われることにあるのだから、構造改革による革新は、顧客本位の徹底になるはずである。

革新とは、同じ顧客基盤に対して、顧客本位を徹底するために、同一の機能を、より高い付加価値をつけて、より高い利便性のもとに、本質的に異なる方法によって提供することだとしたら、レガシーと化した旧事業部門とは別に、持株会社のもとに新事業部門を設立し、速やかな移行を推進するほかなかろう。

こうしたレガシーの典型は銀行であって、銀行改革は、事実として、銀行の持株会社の業務範囲を見直し、銀行以外の事業部門の機能を強化することで、銀行機能の縮小を図る方向にあるわけだ。

森本 紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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