共和党の大統領候補トランプ前大統領が13日、重要接戦州の一つペンシルベニアで演説中に銃撃を受けた事件は、LIVE配信中の番組(59:52~)を通じて瞬時に世界中を駆け巡った。『Axios』は治療を受けた直後にトランプが「Truth Social」に投稿した声明の全文を掲載した。
“I want to thank The United States Secret Service, and all of Law Enforcement, for their rapid response on the shooting that just took place in Butler, Pennsylvania. Most importantly, I want to extend my condolences to the family of the person at the Rally who was killed, and also to the family of another person that was badly injured. It is incredible that such an act can take place in our Country. Nothing is known at this time about the shooter, who is now dead. I was shot with a bullet that pierced the upper part of my right ear. I knew immediately that something was wrong in that I heard a whizzing sound, shots, and immediately felt the bullet ripping through the skin. Much bleeding took place, so I realized then what was happening. GOD BLESS AMERICA!”(原文)
ペンシルバニア州バトラーで起きた銃撃事件に迅速に対応してくれた米国シークレットサービスと法執行機関全員に感謝したい。何よりも、集会で亡くなった人の家族と、重傷を負った別の人の家族に哀悼の意を表したい。我が国でこのような事件が起こるとは信じられない。犯人については現時点で何も分かっていない。犯人は死亡した。私は右耳の上部を銃弾で撃たれた。シューという音と銃声が聞こえ、弾丸が皮膚を突き破るのを感じたので、すぐに何かおかしいと分かった。大量の出血があり、何が起こっているのか分かった。アメリカに神のご加護を!(google翻訳)
トランプは「シューという音と銃声が聞こえ、弾丸が皮膚を突き破るのを感じた・・」と述べているが、動画を観る限りでは、銃声が聞こえる前に耳を抑え、直ぐに伏せているように見える。光と音の速度の違いだろうか。それにしてもあと数CM右に逸れていれば即死の可能性があった。
この衝撃的なテロ未遂事件は、強運なトランプが11月に必ず勝つであろうことを幾つかの点で世界に見せつけている。
一つは、彼が敬愛してやまないレーガン元大統領を、この銃撃が彷彿させたことだ。今の共和党の諸政策(小さな政府・減税・強硬外交・反中国など)を形作ったレーガンも銃撃された。ハリウッドからカリフォルニア州知事を経て大統領になったという点も、根っからの政治家でないトランプと類似性がある。
二つ目。米メディアは挙って現場の写真を掲げたが、シークレットサービスに抱えられ右頬から唇にかけて血を二筋流しながらも、拳を握った右腕を高々と突き上げる2枚の『Epoch Times』の写真が、トランプの力強さを見せつけ、大統領選勝利を決定づけるショットになると筆者は感じた。
三つ目は、民主党の有力者が、内心とは裏腹?に歯の浮くような「ラバースタンプ(判で押したように似た内容の)」コメントを出したこと。
バイデン大統領:アメリカには、このような暴力の居場所はない。うんざりだ、気持ち悪い」「それが、私たちがこの国を団結させなければならない理由の1つだ」「このような事態を許す訳にはいかない」。
ハリス副大統領:「重傷ではないと聞いて安堵している」「私たちは、彼と彼の家族、そしてこの無意味な銃撃によって負傷し、影響を受けた全ての人々のために祈っている」「この様な暴力は、我が国に居場所はない。私たちは皆、この忌まわしい行為を非難し、これ以上の暴力に繋がらないよう、自らの役割を果たしなければならない」
カリフォルニア州知事で有力な正副大統領候補のニューサム:「私たちの民主主義に暴力の居場所はない。私の思いは、トランプ大統領と今日の集会で影響を受けたすべての人と共にある」
シューマー上院院内総務:「ペンシルベニア州でのトランプ氏の集会で起きたことに恐怖を感じ、トランプ前大統領が無事で安堵している。我が国に政治的暴力の居場所はない」
ジェフリーズ下院院内総務:「私の思いと祈りはトランプ前大統領と共にある。法執行機関の断固たる対応に感謝する。アメリカは民主主義国家だ。いかなる種類の政治的暴力も決して容認できない」
ペロシ元下院議長:「家族が政治的暴力の犠牲者となった者として、私はいかなる種類の政治的暴力も私たちの社会に居場所がないことを身をもって知っている。トランプ前大統領が無事で良かったと神に感謝する」「この恐ろしい事件の詳細が明らかになるにつれ、本日の元大統領の集会に出席した全ての人々が無傷であることを祈りましょう」
オバマ元大統領:「早期回復を願う」「我が国の民主主義には、政治的暴力が入り込む余地は全くない。何が起こったのかはまだ正確には判らないが、トランプ前大統領が重傷を負わなかったことに安堵し、この機会を利用して、政治における礼儀正しさと敬意を改めて誓うべきだ」
アダム・シフ民主党下院議員:「この明らかな暗殺未遂にぞっとしている」「法執行機関とシークレットサービスの迅速な対応に感謝する。トランプ大統領の早期回復を祈る」
正副大統領候補のバイデンとハリス、そしてロシア疑惑をでっち上げてトランプを弾劾に掛けたアダム・シフ以外は皆、バイデンの「アトランタの悪夢」(討論会での大失態)に遭遇し、裏でバイデンの差し替えを画策しているとされる、バイデンの言う「民主党のエリート」である。
「内心とは裏腹?」と「?」を付したのは、トランプ以外の共和党候補の方が民主党にとってむしろ手強い、との見立てがあるからだ。トゲのあるレトリックなどが災いし、トランプには強固な支持者がいる代わりに、絶対的に嫌う共和党支持者も無党派層も多い。トランプではない共和党候補者の場合、民主党には投票しない前者は、棄権するか仕方なくその候補に投票するはずだし、後者にはその候補に投票する可能性が生まれる。
とすれば、前者の棄権者数と後者の投票数の数比べになる。前述の見立ての根拠は、一部の世論調査などを頼りに、強固なトランプ支持者の多くが棄権に回るとみる訳である。が、筆者はこの銃撃事件を契機に、トランプ嫌いの共和党票と無党派層の票が一気にトランプに流れると考える。
バイデン降ろしの流れと言い、トランプ銃撃と言い、予想外の出来事が続く大統領選だが、15日からの共和党大会で副大統領候補の公表が、更に共和党の勢いに棹を差すことになるだろう。バイデンかハリスかの選択は、小池か蓮舫かの上を行く、まさに「悪魔の選択」である。
(追記)
本稿執筆(14日15時)後、射殺された容疑者の身元が20歳の白人と報じられた。この種のローンウルフと思しきテロリストも怖いが、それにもまして政府の司法武器化や事件に過剰反応した政府による宗教法人潰しなども、意見の異なる側を無力化してしまうという意味では、恐れるべきではなかろうか。