DMMビットコイン流出事件でユーザーに税金が発生する可能性は? (村上ゆういち)

2024年5月31日、DMMビットコインのウォレットから4502.9BTC(約482億円相当)が不正に流出したと報じられました。被害に遭った顧客のビットコインは、グループ会社からの支援により全額保証されることが事件直後アナウンスされ、資金調達及び流出相当のビットコインの調達が完了したことも同社は公表しています。

DMMは、仮想通貨の不正流出を受けて迅速な対応を行い、顧客に保証を約束しています。この事件は、仮想通貨のセキュリティ対策の重要性を再確認させるものとなりました。今後もDMMは、安全なサービス提供に努めることを約束しています。

過去にもマウントゴックスやコインチェックから仮想通貨が流出して大きな問題となりましたが、全額が弁済されるのなら問題は無い、損をするのは取引所だけ、ということになるのかというと決してそういうことではありません。特に大きな問題となるのが税金です。

今回はDMMからビットコインが流出したトラブルについて、仮想通貨専門の税理士である筆者の立場から、税金の処理がどうなるか詳しく解説します。

jroballo/iStock

流出時の税金について

ビットコインが流出した場合、税務上どのように扱われるのか国税庁のタックスアンサーを参考にして詳しく解説します。

今回のケースでは、流出したビットコインが日本円で補填される場合と仮想通貨で補填される場合の2つのシナリオを考える必要があります。

日本円で補填される場合

流出したビットコインが日本円で補填される場合、これは強制的に利確(仮想通貨を利益として確定)されたものと見なされます。具体的には、以下のような流れで税金が計算されます。

補填された日本円の金額が収入金額として計上されます。この金額は、仮想通貨取引所から個別にアナウンスされる金額となります。

失われたビットコインの購入価格が取得価格として計算されます。これは、元々そのビットコインを購入した際の金額です。上記より、収入金額ー取得価格=利益として計算し、利益が一定以上出ているのであれば確定申告が必要となります。

例えば、100万円で購入したビットコインが流出し、その補てんとして時価相当額である150万円を受け取る場合、150万円が収入金額となり、100万円が取得価格となります。この差額である50万円が利益となり、雑所得として利益が課税対象となります。

仮想通貨で補填される場合

次に、流出したビットコインが同等の仮想通貨で補填される場合についてです。この場合、実質的には資産の移動がないと見なされます。以下のように処理されます。

「失われたビットコインの数量」と「補填されるビットコインの数量」が同じであるため、投資家の資産の総額に変化がないと見なされます。「補填された仮想通貨」は、元のビットコインと同等の価値として扱われ、特に税務上の処理は不要です。

つまり、補填されたビットコインが元のビットコインと同じ数量であれば、資産が実質的に動いていないため、課税対象にはなりません。この場合、納税者は特に追加の税務処理を行う必要がなく、補填前と同じ状況が継続されることになると考えられます。

ただし、こちらについては、DMMビットコインの取引履歴上、どのように扱われるか、そもそも取引履歴に失ったビットコインと補てんされるビットコインが表記されてくるのかが不明です。

例えばDMMビットコインの取引履歴でビットコインのマイナスと、補填されるビットコインの枚数がプラスで表示されるのであれば、損益計算ツール上で売買として計算される可能性があります。つまりビットコインで補填される場合でも利益確定されたものとして課税されてしまう可能性があるということです。

今後のDMMビットコインからのアナウンスを待った上で慎重に検討する必要があります。

留意するべき事項

留意点としては、実際に補填される際に具体的な形態や条件によって税務処理が異なる場合があることです。例えば、補填されるビットコインの数量が異なる場合や、補填が遅れて価値が変動する場合など、様々なシナリオが考えられます。

このため、個々のケースに応じた正確な判断が求められます。

ハッキングされたビットコインはどうなるか

ハッキングされたビットコインがどこに流れるかというと、過去の報告によれば北朝鮮のハッカー集団が関与している可能性が高いとされています。盗まれた資産はミサイルや兵器の開発資金に使われているという報告もあり、非常に深刻な問題となっています。

この問題は、国際的な仮想通貨のセキュリティ対策の強化を促すものとなっています。各国の政府や企業は、仮想通貨のセキュリティ対策をさらに強化し、ハッキングによる被害を未然に防ぐための取り組みを進めています。

まとめ

  • DMMから約482億円相当のビットコインが流出。
  • 日本円で補填された場合は、強制的に利確されるため、損益計算と確定申告が必要。
  • 仮想通貨で補填された場合は、特に税務上の処理は不要。ただしケースバイケースなので注意。
  • ハッキングされた資産は北朝鮮の開発資金に使われている可能性が高い。

ビットコインの流出事件は、仮想通貨のセキュリティと税務に関する重要な教訓となります。今後どのようにして仮想通貨取引所はその資産を守っていくのか、安全に管理される事を期待します。

村上ゆういち (税理士・公認会計士)
新日本監査法人(現EY新日本有限責任監査法人)、横河電機株式会社、アカウンティングフォース税理士法人での勤務を経て、2020年に村上裕一公認会計士事務所設立。現在は「魔界の税理士」としてSNSやyoutubeでも活躍し、仮想通貨(暗号資産)・NFT・ブロックチェーンゲーム領域を専門とする。
公式サイト https://crypto-cpa.jp/
X https://x.com/Jeanscpa
YouTube 魔界の税理士ちゃんねる https://www.youtube.com/@makai-tax

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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年7月1日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。