今回の都知事選で目立ったのが小池陣営の選挙戦略です。
私は別に小池百合子氏を支持しているわけではありませんが、小池陣営の選挙戦略はマーケティング戦略として非常に勉強になる点が多かったです。
2023年12月8日に発売された私の新作『世界のニュースを日本人は何も知らない5』でも解説していますが、自分が同意しない政治家や企業からも学ぶことは多いものです。
まず対象とする有権者が明確でありその人々の心を掴むようなPRに注力しています。つまり高齢者や現状を大きく変革したくない中年以上の人々です。
離島や東京都下から周り、東京は中心だけではない、ということをアピール。
割と早い時点でAI百合子をリリースしたところもうまいなと思いました。
小池陣営は一般の人がAIという言葉を聞いて理解できるレベルを非常によく理解しています。
AIは基本的に1950年代から存在している仕組みが洗練されたものに過ぎません。ソフトウェアの発達によってさらに高度化したインプットを元に、さらに洗練されたアウトプットを出すことができるようになったものです。
要するに電算機の基本なわけですが一般の人にはそんなことを説明しても分かりませんので、AI百合子というアバターにニュースや政策を読ませることで具体的なビジュアルイメージを持ってもらった。これは非常に賢い戦略だと感じました。
AIに強い候補者の安野貴博氏は、AIを使った都政に関してマニフェストでも詳しく解説をしていましたが、お年寄りや一般の人々というのはそんなものを読んでも意味が分かりません。
安野氏のような超高学歴の人は一般の人々の理解力や期待することがどのようなものかということを全く理解していないのがよくわかります。これは高学歴の人や専門職の人で消費者向けのビジネスをやっていない人には非常によくあるパターンです。
一方長年テレビの世界で活躍し、竹村健一さんなどと時事問題の解決番組をやってきた小池氏は一般視聴者のことを非常によくわかっています。
一般の人に対して時事問題をどのように説明するか、何を伝えればアピールが高まるか、そして彼らが好む人物像というのもよく把握しているのです。
小池氏は怒鳴ることはなく、常に柔らかい語り口でとても説得力がある口調です。かと言って押し付けがましい声でも態度でもなく聞いていてとても心地が良いのです。
この雰囲気は大企業で長年管理職や幹部をやっている優秀な年配の女性にとてもよく似ています。そういう方は若手の人や中堅の人のためにこっそりと裏で根回しをしてくれたりしているのです。
また小池氏は動画でお母様の着物をリサイクルして洋服にして着ておられるということを説明されていましたが、これもまた非常に効果的なアピールです。
少なからぬ有権者には、高齢の両親がいたりすでに他界していたりしますが、家には親や親戚の来ていた着物や持っていたものがたくさんあります。
そして小池氏が動画を撮影していた場所は清潔感はありますが、決して華美ではなく、かと言って今風の意識高いインテリアだらけの部屋ではありません。そういうところもよく考えられているなと感じました。
このような共感力を呼ぶアピールは、ゴム長靴を履いて田んぼに入っていった田中角栄元首相を彷彿とさせるものがあります。
選挙もビジネスも、基本は有権者やお客様の共感力を得ることです。
つまり有権者やお客様が何を考えどう感じているかということをよく理解しなければなりません。
特に消費者ビジネスをやっている方には非常に重要です。マーケティングの教科書やMBAをやるよりも小池陣営が一体何をしていたかということを観察してみると学ぶことは多いと思います。
やはり思い出がありますから簡単に処分することもできない。そういったものをリサイクルして日常生活に活かすという小池氏に共感する方は多かったでしょう。
【参考記事】
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