政策的な議論が一向に盛り上がらないまま実施された都知事選ですが、終わってみれば現職への有力な対抗馬と見られていた蓮舫氏が3位と惨敗。
ほぼノーマークで党派色も出さなかった石丸氏が無党派層、若年層の支持を集めて2位に食い込むなど、驚きの結果となりました。
筆者は選挙前に今回の見どころとして
・共産党とがっちり組むとどうなるか
・党派色を出さず無党派層に軸足を置くとどうなるか
の2点だと指摘していましたが、結果的に「共産党と組むと負ける」「既存政党によらず無党派層を意識すれば十分に戦える」ということがはっきりしたと言えるでしょう。
政策論的には全然な都知事選なんだけど、期せずして「共産党とがっちり組んだらどうなるか」「党派色を消して無党派層にアピールしたらどうなるか」の実験場になってる点は非常に興味深い。
— jo shigeyuki (@joshigeyuki) July 6, 2024
さて、蓮舫氏はなぜ大敗したんでしょうか。また、今回の選挙結果はこの後の国政にどう影響するんでしょうか。
いい機会なのでまとめたいと思います。サラリーマンとしても気になるところでしょう。
負けに不思議の負けなし
まず共産党と連携云々を論じる前に、共産党がどういう政策スタンスなのかを説明すべきでしょう。
彼らの決まって主張する政策は、だいたい以下のようなものです。
・法人税は上げろ、消費税は下げろ
・企業の内部留保を吐き出させろ
・高齢者の医療費窓口負担を1割に下げろ
「内部留保は現金だ」とか「法人税を下げるために消費税が導入された」「大企業は輸出還付金で大儲け」みたいなデマは(筆者を含め)いろんな人間があちこちで論破済みなのでここではあらためて紹介はしませんが、結論から言えば、
これらの政策はすべてサラリーマンの給料を減らす効果があります。
ただし、共産党のメインの支持基盤は既に引退している高齢者や一部の自営業者なので、そういう意味では自分たちのお得意様に精一杯サービスした政策だとも言えます。
要するに共産党のスタンスというのは「もっと取りやすいところから取って、俺ら(高齢者や一部の自営業者)に金をよこせ」ということなんですね。
取りやすい人たちというのが給与をガッツリ把握され漏らさず天引きできるサラリーマンなのは言うまでもありません。
あと、そう考えると彼らが消費税を異様に忌避するのも筋が通ります。高齢者も自営業も無職もニートも、消費税からは逃げられないからです。
東京は沖縄に次いで平均年齢の最も若い都道府県です。そして、日本でもっともサラリーマンが多い都市でもあります。
もちろんサラリーマンには家族もいます。また、サラリーマン相手に商売している各種サービス業もいっぱいあります。
そういう人達は正規雇用ではないとしても、広い意味でサラリーマンの利害関係者とも言えるわけです。
そういう都市で共産党と組んでフリーライダー向けのリップサービスをぶちあげるというのは、明らかにデメリットの方が大きいわけです。
筆者が今回「蓮舫さんはひょっとして大敗するんじゃないか」と最初に感じたのは、連合東京が早々に蓮舫氏と縁を切って小池支持を決めた時ですね。
はい、蓮舫さんの都知事選終了。解散。:東京都知事選挙、連合東京は小池氏を支援…共産と連携の蓮舫氏に不信感 : 読売新聞オンライン https://t.co/BTseRdNHf7
— jo shigeyuki (@joshigeyuki) June 13, 2024
労働組合というのは後述するようにトップダウンで統制をとって動くような組織ではありません。持ち回りでやってる労組の役職者にそんな権力などありません。
それが早々に手を引いたということは、現場レベルで「蓮舫候補は絶対に応援したくない」という声が噴出していたんだと思います。
それでもまだ「労組が応援しないのは共産党が原因かどうかわからない」と駄々こねる人もいそうですが、「共産党と組むなら応援はしない」というのはほとんどの労組の共通したスタンスで、実際に行動に移す労組も既に出ているので、その点に議論の余地はないです。あしからず。
【参考リンク】トヨタ労連、立民離れ…共産共闘に拒否感「もはや敵だ」と反発も
まだあります。有名な話ですが、東京都は地方交付税交付金の無い唯一の自治体です。
ほとんどの自治体が必要な予算の半分以上を国からの交付金に依存する中、自主財源だけで切り盛りしているということは、言い換えるなら東京都民は地方に多額のお金をチューチューされているということになります。
そして、この傾向は近年加速中です。
サラリーマンは都民としても2重にたかられているし、高齢者、自営業であっても同様にたかられる側の人間なわけです。
“たかられ者の都”で「取りやすいところからもっと金引っ張ってみんなで配ろう」てやったらどうなるかは明らかでしょう。
そういえば都知事選後、誰も聞いてもないのに島根の山の中から蓮舫さんの援護射撃してるオッサンがいましたね。
たぶん平均年齢50歳超、2050年にも人口50万人割れの予想される県からみるとそうした主張はまんざらでもなかったということでしょう。
【参考リンク】「石丸さんに注目が集まってますけど、注目すべきは蓮舫さん」島根・丸山知事の都知事選の視点
一部には蓮舫氏に4年後の都知事選リベンジを期待する向きもあるようですが、敗戦後の言動を見るに学習能力ゼロっぽいのでなんべんやっても無理だとおもいますね。
まあ筆者がキャリア相談してあげるとしたら、次は島根県知事選とかどうでしょう?
県民に選ばれた現知事が評価してくれてるくらいだから、松江あたりに移住した上で大好きな共産党と組んで「サラリーマンと東京からもっと金取ってきて配ります!」ってやったら結構いい線行くんじゃないですかね。
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以降、
・立憲民主党が蓮舫さんをあっさり国政復帰させられないわけ
・石丸候補が掘り当てた大鉱脈
Q:「役職定年制度の見直しの狙いとは?」
→A:「果たす役割に応じて処遇を決めるのが最も自然です」
Q:「昇給に大きく差が出るようになりました」
→A:「企業にとってはすえ置くだけで実質賃下げできる絶好のチャンスですから」
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