晴れの雨晴海岸:ローカル線とともに。

雨晴。

あまはらし。なんとも気持ちのいい響きの地名です。雨だけでなく心まで晴れ晴れとさせてくれるような、そんな気さえしてきます。

源義経が雨宿りをしたことでその名がついた雨晴。雨宿りではなく、雨晴、とこの地の名をつけた先人のセンスの良さに感激します。

富山県のJR氷見線。高岡駅から氷見駅を結ぶ短いローカル線の途中に雨晴駅はあります。ここを訪ねたのは昨年以来2回目。前回はうっすらと雪の残る冬の日でした。

雨晴駅は駅の向こうがすぐ富山湾。海を間近に望むことができる駅です。そんな青い海が見える雨晴駅にはやはり晴れ渡った青空がよく似合います。

筆者遠影。

黄昏ているおっさんは似合いません。

雨晴駅から歩いて10分ほどのところに道の駅雨晴があります。3階建ての白い建物はこれまた夏空の青によく映えます。前回来たときは雪が積もっていて床面がとてもよく滑って危険でした。

ここは氷見市。氷見市といえばやっぱり氷見うどん。稲庭うどんのような細い平らな形状の麺でそうめんのようにいただきます。暑い時期に最適。私も家で食べようと一把購入しました。

道の駅から雨晴海岸の海岸線を眺めます。道路と海岸線の間を走るのがJR氷見線。もうすぐ電車がやってくる時間です。

きました!

国鉄型の気動車キハ47が颯爽と海岸沿いを走り抜けていきます。西日本を中心にローカル線でいまだ活躍するキハ47。氷見線でも元気な姿を見せてくれていますが、JR氷見線はともに高岡駅を起点とするJR城端線とともに第三セクターのあいの風とやま鉄道に移管される予定です。その準備段階として2028年に車両の置き換えが予定されているのでこの朱と青のコントラストも見られなくなってしまいます。

列車に限ったものではないですが、旧きものはいつか新しいものに置き換えられて行きます。今のうちにその雄姿をカメラに収めておかないとと思います。

女岩を向こうに見つつ去っていくキハ47。条件がそろえば湾の向こうに雪をかぶった富山連峰が眺められるのですが、その絶景を見るためには雨が晴れる以上の幸運に恵まれる必要がありそうです。

冬場は人影のほとんどなかった雨晴海岸。夏場は海岸で波と戯れる観光客も多くにぎやかです。線路を渡って海岸に渡ってみましょう。海岸沿いを歩いて雨晴駅まで戻ることができます。

波打ち際から女岩を望む。

この日も暑い一日でしたが海を渡る風はどこか涼しい。水の色も澄んでいて心も晴れ渡ります。

こんな穏やかな富山湾ですが、能登半島地震の際にはこの雨晴海岸も1.7メートルの津波に襲われました。自然は時に無常に人々に牙をむきます。それに抗うことはとても難しいことと思いますが、これまで培った経験を活かしていかに被害を小さくするかを考えていかないといけないと思います。

私の歩く海岸沿いの道の横を颯爽とキハ47が走り抜けていきました。鉄道がダイヤ通りに走っていることも決して当たり前のことではないのだと思います。

再び雨晴駅に戻って来ました。先ほど海岸で見た列車が氷見駅で折り返して迎えに来てくれました。暑かったですがその名の通り雨が晴れ、さわやかな空の青、海の青を望むことができました。車で走り抜けるのもいいですが、ローカル線でゆっくり時間をかけて訪ねるのもいいと思います。夏の雨晴、ぜひお越しください。

車窓から間近に見える女岩もあなたを待っています。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年7月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。