知識をひけらかす三流、知らないふりをする一流

黒坂岳央です。

昔、ある経営者から教わったのが「相手から聞かれもしないのに、自分が知っていることをペラペラ話し続けるな。真の実力者はその逆をする。自分が知っていても、相手にしゃべらせる」という話だ。これには興味を引かれてその真意を教わった。そして今でもこの教えは非常に正しいと感じるし、実際に自分はこれを実践するようにしている。

Tero Vesalainen/iStock

自分が話過ぎると損をする

件の話を別の言い方をすると、愚者は語り、賢者は聞く(Fools speak while wise men listen)という言い方ができるだろう。これは実際に正しく、あらゆる場面で、自分が話しすぎると損をするようになっている。

人が集まる場において、誰も聞いてもいない、明らかに求められていないのにひたすら自分の話を延々とする人はかなりいる。話の本題からズレているのに、無理やり自分の話に持っていき、周囲の注目を浴びることを最優先する。これは参加者全員の時間を使って、承認欲求を消化しているので付き合う相手に迷惑でしかない。これが続けば周囲から人が離れる。先日、学校の保護者会でそのような振る舞いをする母親がおり、延々と自分の話を続けるので周囲に白けた時間が流れているのを感じた。

また、損失はビジネスの場でいよいよ顕著になる。知らず知らずの内に相手から実力をジャッジされてしまうのだ。たとえば「この間、ついに月収100万円を超えまして」とか「ベンツの◯クラスを買ってうれしかった」といった「本人にとって誇らしい」と感じることをペラペラ話してしまうケースだ。仮に相手がそれ以上の実力者だった場合に「なるほど、その程度のことを誇ってしまうくらいの実力なんだな」としっかり伝わってしまう。

もちろん、実力があるビジネスマンは「よかったですね。自分は月収1000万円を超えまして」といった逆マウントで相手のメンツを潰して恨まれるほど愚かではない。表面上はニコニコ黙っているが、内心では「このビジネスマンに時間を使って得られるものはないな」としっかり実力を見限られてしまうというわけだ。

承認欲求の奴隷になって自分が話しすぎて、得をする場面など無い。話せば話すほど、知らない内にリターンのないリスクを晒し続けているだけだ。黙って聞いておく方が相手からの評価も上がるだろう。

世の中は聞くより話したい人が圧倒的に多い。そのため、需給バランスの観点からも供給者側に回ると重宝されるので人が集まりやすい。しかし、彼らも同じ人間、承認欲求からペラペラ話したいとは思わないのだろうか?そうしない理由はシンプル、一流はビジネスで結果を出してすでに周囲から認められており、仕事で承認欲求を消化している。「誰でもいいから話を聞いてもらいたい。自分をわかってほしい」という欲求がないのはそのためだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。