韓国、台湾におけるコロナ流行の最新情報

mapo/iStock

7月に入って、わが国のコロナ感染者数が急増しているのに、英国、ドイツ、カナダ、オーストラリアでは、感染者数の増加がみられていない。

なぜ日本ではコロナの流行が続くのか?

なぜ日本ではコロナの流行が続くのか?
モデルナ社が発表する全国のコロナ新規感染者数は、5月の66万人が、6月には100万人に増加、7月は21日までの集計が150万人に達した。「今回の流行は、これまでの変異株と比較して感染力の強い新たな変異株KP.3が出現したことによる」...

それでは、隣国の韓国、台湾ではコロナは流行しているのだろうか。

日本、韓国、台湾の3カ国は、パンデミックが始まった2020年ではコロナの患者数や死亡者数は、欧米諸国と比較して圧倒的に少なく、その感染対策が賞賛された。しかし、2022年に入りワクチン接種率が欧米を上回るようになると世界最多のコロナ感染国になるなど共通点が多い(図1)。

図1 日本、韓国、台湾のコロナウイルス新規感染数の推移
Worldometer

筆者は、小児がんサバイバーのワークショップに参加するために、7月26日から28日の3日間、ソウルを訪れる機会があった。

ソウル市内では、マスクを着用している人を見かけることはほとんどなかった。韓国では、2023年3月から一部の施設を除いて、マスク着用の義務が解除されたが、その後も病院内での着用は義務とされていた。それも、今年の5月からは病院内でのマスク着用義務は解除され勧告となった。

今回、韓国で最大の病院であるアサンメデイカルセンター(病床数:2,700床)を訪問したが、病院内でマスクを着用している人はほとんどみかけなかった

到着した当日に、韓国の医師にコロナの感染状況を質問したところ、最近はコロナが話題になることがほとんどないのでわからないとのことであった。しかし、翌日になって、コロナの検出率が6月は6.4%であったのが、7月第3週には17.0%に増加したというニュースがあったことを知った。韓国ではコロナ感染のモニタリングは、ウイルスの検出頻度で行っているようである。

新規感染者数は増加しているのかと質問したところ、コロナに感染しても無症状のこともあるし、検査を受けないことも多いので、新規感染者数を把握すること自体意味がないのではないかという意見であった。検出された変異株は、これまで流行していたJN.1の検出率が減少して、KP.3が39.8%、KP.2が16.1%に増加した。

韓国では、2023年8月からコロナ感染者の全数把握が終了して、220の医療機関での定点観測に移行した。最近のコロナによる入院患者数は、今年の2月の第1週がピークで、その後減少していたが、6月の第4週から再び増加している。6月の第4週が63人、7月第1週が91人、第2週が145人、第3週が225人と、4週前と比較すると3.5倍に増加した。

ワークショップに参加した台湾の医師からも、台湾におけるコロナ感染の最新情報を聞くことができた。台湾では、今年の5月からマスク着用の措置が緩和されたものの、マスクを着用している人は多いとのことであった。現在も、病院や交通機関内、さらに高齢者や免疫能が低下している患者ではマスクの着用が推奨されている。6月末から、患者数は増加しており、詳しい状況は台湾疾病予防管理センターのサイトでみることができるとのことであった。

図2には、2023年3月以降の台湾における新規感染者数を示す。今年の6月に入ると感染者数の増加が見られるようになり、月末にはピークに達した。新規感染者数は1日2万人ほどであったが、7月に入ってからは、減少している。年代別では30代の感染者数が最も多い。検出された変異株はJN.1が29%を占め、KP.3が26%、KP.2の17%が続く。

図2 台湾における2023年3月以降の新規コロナ感染者数の推移
台湾疾病予防管理センター

日本における現在の新規感染者数数は、昨年夏の流行に似ており、1日の新規患者数は12万人ほどである(図3)。日本の人口は台湾の6倍なので、現在の流行は、台湾のピーク時に匹敵する。

図3 日本における新規コロナ感染者数
moderna-epi-report.jp

台湾はわが国と同様にコロナワクチンの接種に積極的である。2023年9月末で、総接種回数は68,158,988回、台湾の総人口は2,335万人なので接種率は292%である。モデルナのシェアが41.5%で、ビオンテックの29.1%、アストラゼネカの22.4%が続く。

一方、日本の総接種回数は2024年3月末で436,193,341回、接種率は349%である。表1には、接種回数ごとの、日本と台湾の接種率を示す。小児を含めた全人口の接種率なので、日本の1回目、2回目、3回目の接種率は、80.4%、79.5%、67.1%であるが、65歳以上の高齢者に限ると、93.1%、92.8%、91.9%とさらに高率である。

表1 日本と台湾におけるコロナワクチンの接種率

東アジアの3カ国では、現在、新たな変異株によるコロナ感染者数の増加が見られるが、韓国では、ほとんど、コロナの流行は話題になっていない。

3カ国間における国民の関心度やメデイアの報道の違いがどこから来ているのかを明らかにすることは、わが国の現状を客観視するのに必要である。さらに、海外と比べてコロナ流行の終息がわが国では遅れている理由を知る手がかりにもなるであろう。