カマラ・ハリスの祖先が奴隷所有者だった不都合な歴史

プレジデント・オンラインに『あっという間にトランプ氏に肉薄…日本人が知らない「女性大統領候補カマラ・ハリス」の”履歴書” 過去の「愛人問題」が保守系からの攻撃材料に』という記事を書いた。

カマラ・ハリスの経歴について、「トランプ氏「ハリス氏は黒人に変身」 人種差別的と波紋」とかいうニュースもあるが、非常に興味深いところがあるカマラ・ハリスの経歴について、日本人には何が米国で問題になっているのか、なっていないのかとてもわかりにくい。

プレジデント・オンラインの記事は、一通り無難にまとめたものだが、アゴラの読者にはもう少し突っ込んだ話を何回かに分けて解説しよう。

ハリス副大統領SNSより

父のドナルド・ハリスは、ジャマイカ出身の黒人でスタンフォード大学の経済学教授。ロンドン大学やカリフォルニア大学バークレー校(カリフォルニア州オークランド近郊)で学んだ。ジャマイカは国民の9割以上が混血の黒人で、ドナルドも黒人だ。先祖はアイルランド系の血も引き、英国教系のプランテーション農園主で、奴隷を使う側であったと指摘されている。

カマラの父親である、ドナルド・ジャスパー・ハリスは、ジャマイカのセント・アン教区ブラウンズ・タウンで、アフロ・ジャマイカ人であるオスカー・ジョセフ・ハリスとベリル・クリスティ・ハリス(旧姓フィネガン)の息子として生まれた。

ハリスの名前は、彼が生まれた1年後の1939年に亡くなり、彼の先祖でもある、ハミルトン・ブラウンがブラウンズタウンに建てた壮大な英国国教会の教会の庭に埋葬されている、土地所有者で農産物の輸出業者である父方の祖父ジョセフ・アレクサンダー・ハリスに由来しているという。

ハリスの父方の祖母は、クリスティアナ・ブラウンとして生まれ、アイルランド生まれのプランテーション所有者ハミルトン・ブラウンの子孫である。

ハミルトン・ブラウンは少なくとも1120人の奴隷を所有しており、そのほとんどがセント・アン郡の砂糖プランテーションに住んでおり、「1835年から1840年の間にアイルランドからジャマイカに数百人の労働者とその家族を輸入するのに役立った」。イギリス議会が1833年の奴隷制度廃止法を可決した後、ブラウンは奴隷の損失に対して政府から24,144ポンド(2024年の289万ポンドに相当)の補償金を受け取ったという。

このハミルトン・ブラウンについて、一部の研究者は、その事実に疑問があるといっている。少し矛盾があるとか証拠がないというわけである。

ただし、奴隷主が奴隷女性に子どもを産ませた場合には、完全な形で記録が残らないのは普通のことで、カマラの父が自分の先祖について、そう聞いていると執筆している以上は、それを不確かな事実として報道などしないのはおかしなことだろう。

しかし、このあたりは微妙なのだ。米国の黒人の主流は、ナイジェリアあたりから奴隷として連れてこられ、南部で働いていたが、しばしば奴隷主は所有する奴隷の女性を愛人にして子どもを産ませ、その子孫である。

それに対して、オバマの場合は、白人の女性とケニアからの留学生とのハーフだ。見た目もナイジェリア系と全く違う。

そのことがオバマを黒人の有権者からは少し距離を持たれ、逆に白人からは、「黒人らしくない黒人」として評価されたということもあった。