日本のテレビニュースを当地で見ていて気になったのは頻繁に「コメ価格が急上昇している」とか、「スーパーにコメの在庫がない」といった報道を大々的に展開している点であります。5キロ当たり1000円も上がったという報道もありました。画像からは2800円程度の値札が付いていたのでそれが本当だとすれば50%も価格が上がったことになります。
私はこれは悪手の報道で国民に不安心理を増幅させると思います。なぜ、このような報道をしらっとできるのか報道局の姿勢を知りたいものです。石油ショックの時にスーパーからトイレットペーパーがなくなった事件があったのですが、あれも群集心理とそれを煽る報道が背景でした。コロナの時もマスクがないと大騒ぎしたのは報道が背景でした。
今回、更に手が込んできたと思うのはブームのおにぎり屋に外国人が詰めかけるシーンで外国人が「おいしい」と食べる画像の中、「訪日外国人が増えてコメの消費量が増えたことも今回のコメ騒動の原因の一つ」報じているわけです。本当かい?証拠を見せよ、といいたくなるのです。
「令和の米騒動」はあとひと月ちょっとで収まります。新米が流通するからで現状の育成状況は全国押しなべて良好とされます。報道では本来、これを流さねばならないのです。米を作る農家に取材に行って「今年はどうですか?」「順調に育っていて例年並みかそれ以上ですね」と報じればよいのです。ところがマスコミはこれでは「絵にならない」と考えるわけです。つまりサプライズ感がない報道は誰も見ないと考えるのです。私はそんな報道局なら「止めてしまえ」と言いたいところです。
天気の報道もかなり不安を煽るような発言が多く、台風の報道では風もなく雨も降っていないのに「天気が荒れてきています」とか、先週埼玉県庁に雷が落ちた時もレポーターが「激しく破壊されています!」と興奮気味にしゃべっているのですが画像ではちょっと構造物が飛んだだけです。おかしいですよね。
コメの話に戻します。農林水産庁の6月のデータによると令和元年比で小売業者向け価格は115.6%、つまり5年前に比べ15.6%上がったと出ています。ところが事業者向け卸価格は97.0%なのです。つまりむしろ下がっています。あれ―?でしょう。報道はここを捉えないのです。米問屋もわかっているはずです。新米が出れば価格は急落するから今のうちに小売り向けは売り捌くということです。
生鮮食品、特に野菜は価格の変動が激しいのは世の常なのですが、日本は幸いにして細長い国土なので日本全体が均一の気象条件というわけではありません。よってある地域の作柄が悪くても他の地域のモノが収穫されると価格はすぐに鎮静化するケースが多くなっています。
飲食店などでのインタビューでも「これだけ野菜が高くなると値上げせざるを得ないですよねぇ」と店主がまじまじとしゃべっているのを全国区に流すわけです。あれはやめてほしいのです。客観性がなく、主観だけの内容を何百万の世帯に電波で伝えるわけですからね。
ところでカナダでコメはどうしているのだ、と思う方もいるでしょう。当地ではカリフォルニア産米が豊富にあります。コメは食文化が見事に反映される食材であり、日本米(ジャポニカ米)と称するものは水分含有量が多く短粒米です。一方、東南アジア系、インド系は長粒米が主で水分が少ないぱさぱさしたものです。例えばチャーハンを作るには水分を飛ばすのが原則なので長粒米の方が合うし、インドのカレーもルーとの相性からぱさぱさの長粒米です。
日本のカレーは海外から見れば独特の組み合わせだと思います。韓国料理はジャポニカ米で韓国料理店で出されるコメはなぜか異様にうまく感じます。一方弁当屋のご飯はその場で食べるなら良いですが、翌日に持ち越すと臭くて食べられないのは古米でも使っているからでしょうか?
価格は比較的入手しやすいカリフォルニアのカルローズ米で5キロ換算で1700円程度。カルローズというのは長粒米と短粒米の中間の中粒米です。日本のコメのような粘着性がないのですが、この品種は私にはぜんぜん受け入れられるというか、むしろ好きかもしれないです。チャーハンでもカレーでも普通に炊いても何にでも合う便利な品種です。日本ではジャポニカ米一本勝負なので日本人には違和感があるかもしれませんが、コメにもいろいろ種類があるわけでバリエーションとして考えてみても面白いでしょう。
日本の食文化は深いですから百歩譲って令和のコメ騒動がもっと深刻化し、コメの消費を減らさなくてはいけないとしても麺類など代用はいくらでも効くでしょう。私もコメが家にない時には即席お好み焼きですし、うどんを打つこともできます。工夫はいくらでもできると思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年8月11日の記事より転載させていただきました。