知り合いの日本人個人事業者が一時、週休3日を取り入れていました。結局、業務が機能しないのでまた週休2日に戻しましたが、大胆な試みだったと思います。私のテナントのカナダ人商業船運営事業者は10か月はかなり根詰めて働き、1月と2月の2か月間は事務所そのものを閉めてしまいます。サービスの予約だけはオンラインなどで受け付けているようですが、事業者本人たちは毎年長い海外旅行をエンジョイしています。
事業者自身が積極的に休みを取る試みが生まれているのは大きな変化だと思います。かつては経営者は隙間時間に休むといった発想で不定期不規則ながらも休めるときに休むのが経営者などともいわれました。そこには事業は24時間365日継続しているという前提があるわけです。ところが前述のケースを見るとある時期は事業そのものがストップさせるのです。
では従業員はどうするのか、といえば案外、その労働シフトに満足していて長期休暇が毎年取れると喜んでいたりします。もちろん、掛け持ちで仕事をしている人もいて、その間は別の仕事に精を出すという人もいます。それはそれぞれの人の選択であって自由な話です。
お前はそれができるのか、と問われると「できません」と正直に答えます。気持ちの中では長期休暇を取りたいと思っているのですが、なかなか日々の業務がそうさせません。それゆえに昨年「業務の断捨離」を考えつき、少しずつ削っている最中なのです。いわゆるコミットメントがある場合はすぐに切れないので断捨離するのに時間がかかるものだと2年ぐらいかかるものもあります。が、私の基本プランはあと2年ぐらいで現在のコミットメントと業務量を半分ぐらいにしたいと思っています。
当然、それは更なる効率化と誰かに業務をバトンタッチすることになるわけですが、私の場合は定常的ではない問題の対処解決がほとんどのケースですので、問題の根源をこの数年かけて改善する取り組みをしています。つまり10-20年後も今のビジネスがなるべく安泰に自動稼働できるよう問題になるかもしれない業務のがんや灰汁を取り除いている、それが私の今の断捨離修行であります。
もちろん私は新しい事業が大好きなのでこのまま断捨離し続けて業務量半分になってのんびりするかといえば気持ちの中で葛藤がありそうです。そうだとしてもその時に新しいことにフレッシュな気持ちで取り組むので個人的にはポジティブで健全なチャレンジだと考えています。
さて、海外から日本を眺めていると確かに私が日本を出た92年初頭から働き方は大きく改善したと思います。あの頃は「会社に住んでいる社員」がまるでヒーローのように扱われたこともあります。段ボールの簡易ベッドは浮浪者の特権ではなく、24時間働く方の重要な仮眠施設だったというと今の若い方には驚愕の思いでしょう。
私が思う日本人の働き方は戦後の経済回復期、高度成長期にがむしゃらに働く時代の最後の名残が栄養ドリンク「リゲイン」の「24時間働けますか?」だったのではないかと考えます。80年代後半から90年代初頭です。私の周りでどの栄養ドリンクが最強か、という話題はよく耳にし、一本2500円の〇〇は効くぞ、真顔で言われるとこれぞ企業戦士の鏡だと思ったものです。
その後、経済が落ち込んだと同時に働き方の構造改革が始まったと考えています。派遣社員という過渡期の流れから今では正社員化を進める大手も増え、働く側からすれば働き方の選択肢が増えたとも言えます。
一方、休みという点からはほとんどの労働者は正月、ゴールデンウィーク、お盆という3つの時期に休みをまとめて取るパターンが主流で、混雑と宿泊費や航空券などの価格高騰を招いています。これをもう少しフレキシブルにできればベストです。欧米では例えば7-8月の2か月の間で休みを10日間とるといった感じなのである程度はバラけるのですが、日本はお盆という行事的に意味を持たせた日があり、それに合わせて会社が一斉休業を行うので休みをずらすという発想が生まれないのでしょう。
おかげさまで先週今週と日本からの来客が多く、私までてんてこ舞いであります。
少なくとも日本人が働きすぎというイメージはなくなったと思います。社会の仕組みが「働かせない」ように法律の縛りと社会の認識の変化が着実に進んでいるといえるでしょう。良いことです。ただ、最後、休みをどう過ごすか、という自己啓発は必要です。漫然と過ごすのか、何か目標を設定するのかで1年間に休みから得るものは変わってきます。年間平均115日、4か月弱は仕事はお休みだという意識を持つと「えー、そんなに休んでいたのか?」という気持ちになるのではないでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年8月16日の記事より転載させていただきました。