柳井正節「日本は滅びる」…本当だろうか?:立ち上がるのは政治家ではなく国民

日本テレビがユニクロのオーナーとしてではなくファーストリテイリング財団理事長としての柳井正氏をインタビュー、そこで柳井節をさく裂させ、「日本はこのままでは滅びる」と力説しています。近年の柳井氏は日本危機説をかなり声高に訴えており、今回のこの発言が特に珍しいものではありません。ただ、日本を代表する経営者でここまで危機感を募らせ、クリアに発言している人は少ないかもしれません。

柳井正氏 ユニクロHPより

これを受けて世論は賛否両論のようで例えば同じアパレル業界で名をはせた前澤友作氏は「なんか逆のように感じます」と述べています。

お前はどう思うのか、と聞かれたら思考的には柳井さんの主張に理があると考えていますが、別に日本が滅びるわけではなく、それは言い過ぎで本人が熱くなりすぎていると思います。ある意味、この熱い気持ちはニデックの永守重信氏に似たところがあり、典型的な昭和型の熱血漢スタイルともいえ、今の時代には確かに受けないのです。

一方ビジネスの面で捉えれば世の中に「受ける」か「受けないか」という判断で考えているとそれこそ滅びゆく民族になりかねないわけで私は柳井氏の警鐘は耳を傾ける価値があると考えています。

私は動画ではなく記事を見たのですが、同財団を通じてバングラデッシュの学生に支援をしているのにその学校を卒業後、日本で誰一人働いていないと嘆いています。その気持ちは非常によくわかります。結局、バングラはベンガル人なのでインドと同様、アーリア人を祖先としており、欧州人に親近感を持ちます。白人がなかなかアジアと融和しないのと同様、ベンガル人をアジアの同類に含めるのは地理的にはそうなっても人種的には無理なのです。シベリアにいるロシア人に日本人と仲良くしようというのと同じです。民俗学は奥深いのです。

柳井氏はバングラ⇒アジア最貧国の一つ⇒ユニクロの重要な生産拠点⇒何らかの形で支援したいという純粋な気持ちなのでしょう。私がふと思ったのは単にベンガル人で欧州に向いているだけではなく、彼女たちはワールドスタンダードの中で活躍したいと考えれば歌のタイトル「昔の名で出ています」の日本ではないのでしょう。1975年にリリースした小林旭さんのこの曲は時代背景的に日本がブイブイ言わせていた良き時代。そんなのは数十年前に終わっていて陽はまた昇るといいながら待ちくたびれたのが日本経済の現状でもあります。

柳井氏にセブンイレブンがカナダ企業から買収提案を受けている件について意見を聞いてみたいと思いますが、もしも氏が包み隠さず述べたとしたら相当辛辣なことを言うでしょう。経営努力が足りず、株価が安値放置され、百貨店売却のドタバタを含め、経営陣の手腕もこれが日本のレベルかと見せつけてしまいました。

同記事の中に労働生産性がOECD最低水準という話が出てきます。日本が先進国で底辺をさまようデータはいろいろあるのですが、日経には「子供の5割がPC『使わず』 校外利用、日本は先進国最低」という記事があります。ジェンダーギャップから英語の能力に至るまで見事に低いレベルなのですが、私が思う理由は日本人というほほ単一民族で固まりすぎた故の楽ちんさ、他を排除する純血主義は大いなる理由だと思います。

「若者よ、海外に出よ」と私がしばしば申し上げるのは日本社会が欧米のように国際化することは当面期待できないので自分から外に出ざるを得ない、という意味でもあります。

カナダにいると日本人の評判は決して悪くないのです。まさに「いい奴」というのがぴったりきます。しかし、いい奴では今の世界では勝負できないのです。ケンカして嫌われるかもしれない、けれど自分の向かう方向に歯を食いしばって進んでいく、正論と野望と夢を携えることが必要なのです。

前述の日経の「子供がPCを使わない」という記事のキーポイントはスマホは受け身、PCは能動的作業をするものという違いに多くの子供たちは受け身になっているという点です。それを子供もその親も気がつかないか、放置しているのです。「こたつでみかん」の話も全く同じの受け身の社会を象徴しています。

選挙が近づくと「たちあがれ日本」といった標語が出てきますが、立ち上がるのは政治家ではなく国民だということを認識したいところです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年8月28日の記事より転載させていただきました。

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会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。