仕事のやる気がなくなる職場3選

黒坂岳央です。

筆者はこれまで、バイト、派遣、社員、そして独立していろんな仕事をやってきた。その経験からいって同じ会社で働くのでも、条件が変われば天地ほど仕事の面白さは変わってしまうことを理解しているつもりである。

その経験を踏まえて、本稿では「仕事のやる気がなくなる職場」を取り上げる。

Jirapong Manustrong/iStock

将来性がない

仕事は原則、リスクを取って将来性のあるリターンを獲得するプロセスである。リスクは経営者だけが取っているわけではなく、従業員も会社の将来性、ひいては自分たちの置かれている待遇改善や企業の成長、顧客満足を目指して同様に自身のマンパワーというリソースを投下するリスクを取っている。

問題は今やっている仕事に将来性がまったくないと、先が見えてしまった場合だ。「こんな仕事をしても将来性がない」「この会社で働くのは沈みゆくタイタニック号に身を置くようなものだ」そう思わせたら社員のやる気は地に落ちる。斜陽産業に身を置き、毎年売上や利益が落ち続ける中で何ら抜本的改革もない会社で高いモチベーションを維持することが難しいことは明らかである。

その際、仕事内容はそこまで決定的ではない。仮に一時的に本意でない職務をあてられたり、単純労働が続いても会社の成長がずっと続いて将来性を感じられるなら、入社における先行者利益を信じて頑張れるものである。

会社経営者の仕事の一つに「従業員にビジョンを見せる」というものがある。すなわち、「うちの会社はこれからこういう未来を目指していくから、一緒に頑張ろう」と未来の可能性を感じさせるという役割だ。それに失敗した時、会社の将来性を信じて長期目線で頑張る有能な人から会社を脱出してしまうだろう。

人間関係の空気が悪い

一日の大半を会社で過ごす人にとって、最もメンタルに影響するのが「人間関係」である。どこの会社、いつの時代でも人間関係の良し悪しが従業員の定着度を決めてしまうという話は誰しも納得感があるだろう。

この人間関係の空気が悪ければ、仕事への意欲を挫いてしまう。「入社する人間はランダムなのだから、会社側でコントロールなどできないのでは?」と思うかも知れないが、そんなことはない。企業の人間関係はほぼ経営者で決まってしまうコントローラブルな要素だからだ。

昔、社長の人格レベルに問題があったベンチャー企業に身をおいた時期があった。会議とは名ばかりで重役を吊し上げて暴言を浴びせ続け、「頑張らないとお前らもこうなるぞ」と恐怖政治を敷いていた企業だった。当然、重役含め社員の精神はささくれており、1言えば10返ってくるような攻撃性に満ちていた。おそらく、反撃できない弱さを見せれば、たちまち蹂躙される恐ろしさからだろう。

一方で別の企業では社内は柔和な人間関係で、誰一人怒りをあらわにする人間はいなかった。社長も平和的で人間的に尊敬できる人格の持ち主であり、入社してくる人も似たような人が続いた。結局、社長のレベルが社内の人間関係を決めてしまうのだ。

正当な評価がない

仕事では「自分は正当な評価がされていない」と判断されると、仕事のやる気が無くなってしまうものである。特にベテラン社員ほどそれが顕著だ。

オーナー社長の場合、仕事のやる気がなくなるという話をほぼ聞かない。これはマーケットからの支持が売上に反映されることで、「正当な評価」を毎日受けているからである。実際、仕事は正しい努力をすれば遅効で確実に結果に反映される。

その一方で自分の努力で売上を作れる営業マンとは異なり、管理部門やサポート部門などコストセンターで働く社員は社内での評価基準が必要不可欠になる。なぜなら外部の顧客との接点がないため、評価基準が不完全であれば「頑張るだけ損」という負のインセンティブが働くためだ。

業務効率やコストカットに貢献したなら、その部分を正当に評価して給与やボーナスに反映する仕組みを作る必要がある。そうしなければ、有能な人ほど正当に評価してくれる場所へ移動するし、「時給、月給だからとりあえず最低限仕事をすればいいや」と意識が低い人だけが残ってしまう。

ただバックオフィスの評価制度というのは非常に難しい。たとえばプログラミングを用いた業務自動化を実現し、仕事の省人力化に貢献した、といった定評的把握ができるなら話はわかる。しかし、誰もがそんな芸当をできるわけではないし、会社によっては「ツールがブラックボックス化するとこまるので自動化禁止!」と封じられてしまう可能性もある。

仕事は決して「業務内容」だけでやる気が決まるわけではない。人間関係や評価制度、勤務先や業務の将来性で大きく左右される。経営者は複雑なパラメータをマネジメントする難しさがあるが、仕事へのエンゲージメントの高い職場では今回取り上げた3つの要素をすべて満たしている事が多いと思う。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。