黒坂岳央です。
2024年の新NISA制度開始に伴い、投資ブームが巻き起こっている。書店にいけば「新NISA攻略~」といった本がずらりと並び、記事でも動画でもたくさんの発信者と視聴回数を目にする。非常に多くの若者が「早いうちから資産形成を始めるべきだ」という声に押され、コツコツと積み立てを始めている状況である。
一見、望ましいと感じるこのような状況に対して、個人的に疑問を感じる部分がある。20代という時期は、資産運用よりも他に優先すべきことが遥かにたくさんある。投資を急ぐあまりに本当に大事なものを見失ってしまう可能性があるのだ。自分はお金の勉強を始めるタイミングとしては、むしろ30歳を過ぎてからでも遅くはないと思っている。
機会損失
20代は資産運用よりも、本業の稼ぎを増やすことに全力を注ぐべき時期である。投資の年次リターンはせいぜい7%前後と言われているが、一方でスキルを磨き、年収を増やすことができればその効果は2倍、3倍になることもあり、しかもその年次リターンは永続的に続く。
自分自身、20代の頃に投資のことを何も知らなかったが、本当にそれで良かったと思っている。20代の頃はスキルアップや勉強に時間とお金をすべて費やしてきた。その結果、30代では独立し。結婚、育児と今の自分につながっていった。
本業の稼ぎを増やすのは、圧倒的に若さが重要になる。サラリーマンでも独立するのでも若いほうがいい。また、友達と騒いで遊んだり、恋愛をして結婚をしたりと若い内にしかできないことは無数にある。若いうちは、投資ばかりに目を奪われるのではなく、自分の可能性を信じて、ビジネススキルや人生の経験値を増やすべきだろう。
自分は30歳を超えてから会社の確定拠出年金制度の説明を通じて興味を持ち、そこからほんの少しだけ少額の資産運用を始めた。本格的に取り組むようになったのは、独立したビジネスが軌道に乗り経済的な余裕を得たタイミングだった。振り返ってみればこのタイミングでベストだったと感じる。資産運用のためには何一つ犠牲にしなかったからだ。
結局、投資の本質は元本がすべてである。1億円と100万円の資金力の差、月収30万円と300万円の入金力の差はどうやっても埋めようがない。投資に充てる余裕ができるのは、収入をしっかり増やしてから始めるのでも十分である。間違っても20代にしかできないチャンスを棒に振ってでも得るべき価値などない。
お金の使い方が下手になる
若いうちに資産運用を頑張りすぎる問題は、極端なケチになりがちだからだ。
若いうちから投資を始めることは長期的に見て利益をもたらす事実がある。過去のデータでいえば、1秒でも早く指数株投資をすれば、統計的に15年前後でテールリスク時でも絶対に元本割れのない安全な世界にいける。だから早く投資することには大きな意義がある。
そうなると将来のリターンを重視して、今すぐ1円でも多く投資に回そうとする姿勢こそが最適解となる。投資家としては確かに正しい。しかし、それが人生を楽しむ戦略として適切かどうかは別問題だ。若い頃は、若さの価値がわからないので、ただでさえ漫然と過ごしてしまいがちだ。資産運用にハマりすぎれば、将来不安を消すための手段として若さを消費してでも老後に備えるようになる。しかし、本当に価値のあるお金の使い方とは、若いうちから思い出や経験の積立への出費であるべきなのだ。
自分自身、結婚式やハネムーン、外食にかなりのお金を使ってきた。もしその資金を全て資産運用に回していたら、今頃かなりの額に膨らんでいたかもしれない。しかし、自分の選択を後悔したことは一度もない。これらの経験はお金で買えない価値があるからだ。
仮に若い頃から資産運用をして大成功、今の資産が10倍になったと仮定しても人生は何も変わらない。さらに年を取ればお金を使う力もなくなるので、頑張って蓄財してもどうせ全部は使わない。このことはDIE WITH ZEROという本で話題になったとおりだ。
若い時は投資よりも本業を一生懸命に頑張り、若い頃にしかできない経験を楽しむべきだ。
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20代は、まずキャリアを追求し、スキルを磨き、人との出会いや経験を大切にすべき時期である。そうしたチャンスをすべて消化し、資産運用は30代に入ってからでも遅くはない。人生の充実感は、投資の成績ではなく、どれだけの経験を積み重ねてきたかに左右されるのだから。
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