小倉・火災を乗り越え今を生きる旦過市場と小倉城まわりを歩く

今夏の九州旅行。最後に訪ねたのは小倉。いつもすぐに新幹線に乗り換えて本州にしまっていたのですが、今回初めて街を歩いて見ました。

駅からまっすぐにのびるのは小倉モノレール。小倉駅と郊外の企救丘(きくがおか)を結びます。小倉駅の駅ビルを貫くようにずどんと駅に入っていくスタイルは独特で実にダイナミックです。

本当はモノレールに乗って旦過市場の最寄りの旦過駅に行こうと思ったのですが、乗るまでもなく、駅前から延びる平和通りを歩けばすぐ着くことがわかりました。街歩きもしたかったのでぶらぶらと平和通りを歩きます。

時刻は正午ごろ。お腹もすいてきたので北九州発祥のうどん屋に入ることにします。「資(すけ)さんうどん」は、先日大手ファミリーレストランチェーンのすかいらーくの傘下に入ることが報道されました。

北九州に端を発し、九州、西日本に店舗をひろげてきた資さんうどん。今年は関東にも進出するそうで、一層の店舗網の拡大を目論むなかでの買収となりました。全国にその名を轟かせることになりそうですが、北九州で培った味は失わないでほしいものです。

そんな資さんうどんで頂いたのは名物「ごぼ天うどん」。うどんと天ぷらの相性がいいのはわかっていましたが、ごぼうの天ぷらは他の店ではあまりありませんね。サクッとしてなかなか美味い。今後これが全国で食べられるようになるんだったらうれしいです。

お腹もいっぱいになったのでゆっくり平和通りを歩いて旦過市場までやってきます。ここが市場の入り口。ディープな世界への入り口といった感じです。

狭い通路の中に肉、ホルモンなどを売る店や、米、野菜、魚を売る店が並び、多くのお客さんで賑わいます。昭和中期そのままの世界が令和のいまになっても生き続けている場所です。

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旦過市場は大正時代に近くを流れる川を伝って船が荷揚げした商品をここで売ったことに端を発し、市場として整備されました。昭和30年代には今の形になったと言われ、神嶽川に突き出した長屋の中で多くの店舗が軒を連ねています。

焼失したエリアの様子。

ただ、この建物の形状が仇となり、2022年に起きた2度の新旦過横丁、旦過市場での火災事故では多くの店舗が類焼し被害が広がりました。トタン屋根が上からの放水を妨げる形となったことも被害が大きくなった原因といわれています。旦過中央市場入口の向こうにも多くの店舗がありましたが焼失、営業ができない状態になっています。

復興を願う「タンガレンガ広場」では小倉城の葺き替えの際の瓦を活用して復興を願う多くのコメントが寄せられています。

多くの店が失われましたが、その一部が仮設の店舗「旦過青空市場」に戻り、復興に向けて動き出しています。

青空市場の中に店を構える燻製屋「いぶしや」さんでJagabeeの燻製を買いました。これから新幹線で帰るので肉や魚は買えないのですが、これなら道中の酒のつまみになります。

昭和感満載のレトリックな町並みですが、2度の火災を出した町の構造を見直す必要性は避けることができず、旦過市場は旦過駅近くのビルに集約される予定です。防火体制を強化することは避けられず町の形は変わりますが市場がなくなるわけではありません。安全で新しい旦過市場に期待したいと思います。

旦過市場を出て、最後に訪ねたのは小倉城。小倉駅の西に建つ城で駅から徒歩でのアクセスも可能です。江戸時代初期に細川忠興氏が築城したものです。九州各地に向かう交通の要衝であり、諸大名を監視する場所として重要な地位を築いていきました。最上階はその下の階よりも広い面積となっている「唐づくり」の珍しい様式です。

残念ながら城に立ち寄るまでの時間はありませんでしたので外からのみの観覧にとどめ、近くの八坂神社に参拝しました。

もう少しだけ余裕があったので隣接している小倉城庭園へ。

細川氏の後に小倉に入城した小笠原氏の別邸跡を近年再現させてオープンしました。池の周りを巡る池泉回遊式庭園であり、向こうには書院造の別邸があります。

書院の縁側に座り小倉城を眺めます。北九州市の中心という都会の真ん中にありながら喧騒から離れゆったりとした時間が流れます。さまざまな問題に日々対峙していた当時の大名もここにいるときだけは自分の城を見ながらゆっくり時間を過ごしていたのでしょう。

3泊4日の九州旅行も終わってしまえばあっという間。旦過市場で買った燻製と門司港ビールをお供に後ろ髪をひかれながら九州を離れました。

初めて訪ねた小倉は2時間余りの滞在でしたがそれだけでも多くの町の歴史に触れられたような気がします。次はもっとゆっくり訪ねて小倉城から町を眺めるなどしてさらにディープな小倉に浸ってみたいと思いました。


編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年9月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。