自由民主党の総裁選挙は石破茂氏で決着した。石破氏は日本をよい方向に向けるように頑張ってほしい。
有力と言われた小泉進次郎、石破茂、高市早苗三氏の総裁選特設サイトを閲覧したところ、コミュニケーションの在り方や情報アクセシビリティについて問題があることが分かった。これも勝敗を分けた一因かもしれない。
小泉純一郎氏のサイトには政策が掲げられていない。あるのは出馬会見の全文だけで、徹底してイメージ重視である。動画はあるが、YouTubeに丸々依存しているので、出馬会見動画の下に「その他の動画」が表示されてしまう。
「小泉首相が郵政解散」「高市早苗出馬会見」などがリストされ、あげくには「新次郎節消え苦しい答弁」という動画も表示される始末である。
石破茂氏のサイトは2000年代初頭の趣である。石破氏の写真が最上部にあるが、二枚が数秒ごとに切り替わり停止できない。五つの主要政策が列挙されているが、例えば「ルールを守る:党・政治改革ー国民政党そしてけじめある自民党、不断の改革」のように中身がない。そこで、より詳細に読もうとすると9ページにもわたるPDF文書に誘導され、うんざりする。YouTube動画が埋め込まれているが、字幕はONにしないと表示されない。
最も丁寧に準備したとわかるのは高市早苗氏のサイト。主要政策リストをクリックすると詳細な説明に移行するようにできているので、読み取りやすい。ただし、YouTube動画が埋め込まれ字幕はONにしないと表示されないのは、石破氏と同様である。
総裁選特設サイトの主要ターゲットは投票権を持つ党員・党友だった。何を彼らに訴え、一票を得ようとしたのか、訴求点をあらかじめ定めていたか疑問が沸く。大きな写真を掲げる見かけだけで勝負できるとは思えない。読者を定め、読者に訴求するようにサイトを構築することは、基本中の基本である。
読者の中には視覚や聴覚に問題を抱えた人もいるし、高齢者も多いから情報アクセシビリティへの対応は不可欠である。高齢者や弱視の人が表示を拡大すると、政策PDFは画面からあふれてしまうのだが、気づかなかったのだろうか。あらかじめ録画した動画であれば、常に字幕が表示されるようにするのも当然の対応だったはずだ。
このように、情報アクセシビリティは政治家の視野の外である。
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総務省は2023年度に「情報アクセシビリティ好事例」を選定して公表した。今年度も実施する。好事例と言っても100点満点ではないが、少しずつ前に進むための公募であると、昨年度に審査を担当した僕は理解している。
社会全体として情報アクセシビリティへの機運を盛り上げていくために、それに刺激されて政治家のサイトも改善されるように、応募が増えることを期待する。