国慶節で中国本土の株式市場は7日まで休みですが、中国市場を反映し、かつ休みではない香港市場が爆上げ、大活況を呈しています。日本ではあまり報道されていないのですが、何が起きているのでしょうか?
今回の爆上げ要因は「経済支援の2段ロケット」と申し上げましょうか?まず、9月24日、中国人民銀行、国家金融監督管理総局 および証券業監督管理委員会が同時に「経済対策」を発表します。利下げや住宅ローン条件の緩和、株式市場流動性の支援です。これを受けて同日の上海市場は下落基調で2700ポイントすれすれまで下げていたものが明白に反転します。
更に9月26日、中国共産党政治局の月例会議で通常9月の議題にならない経済対策が取り上げられ、不動産業界への支援を含む財政支出を政府に要求したのです。特に不動産については文脈を読み取る限り、工事中の開発途上案件を早期完成させ、完成在庫になっている物件を国有系企業が買い取れるなどの支援を行うとともに不動産開発業者の新規開発を厳しく規制し、新規供給を絞り込む対策に出るようです。
共産党から政府への進言(実質的には指示)を受けて中国政府は何らかの発表をするはずで、それが国慶節明けの8日以降に期待されると踏んだ向きが猛烈な勢いで中国株を買っている、そんな事情が見て取れます。
上海市場は9月24日の寄付きが2770ポイントで国慶節休暇直前の9月30日終値は3336ポイント、つまり約1週間で20%強上昇しています。一方の香港ハンセン指数は9月30日が18573,9月30日の終値が21133、そして本稿を書く最新のデータである10月2日終値が22444であります。香港ハンセン指数は9月24日から30日までの上げ幅が14%、10月2日までで20%と上海市場の上昇に追い付いたところです。
買いの主体は上海は個人層でありますが、香港は世界のヘッジファンドから機関投資家まで一気になだれ込んでいる、そんな感じに見えます。
日本の株式市場では石破氏の総裁選勝利後、激しい値動きになっており、その理由を政権不安、衆議院選挙、はたまた中東の不和などに理由を見出そうとしていますが、隠れた理由にアジア向け資金が日本に向かわず、香港に向かっている可能性はあるとみています。
中国株は長らくドツボのようになっており、安値放置となっていました。企業の実力を欧米企業と数値比較してもあまりにも安く、評価的には半額ぐらいのバーゲンセールの銘柄も多くなっていました。米中間の経済制裁問題のみならず、中国政府が打ち出す経済浮揚政策が小粒、小出しでちっとも刺激にならなかったことであきらめムードすら漂っていたわけです。
ですので9月24日と26日の動きは「今回は違う」「本気だぞ」という気にさせたのでしょう。
ではお前はどう思うのか、と聞かれると正直、本気にはなれないのです。まず、今の棒上げ状態が中国本土がお休みで真空地帯を駆け上がるような状況にあることで株価が一方通行になりやすいのです。仮に中国政府が近いうちに経済対策を打ち出しても金融対策が主力であり、財政出動の期待値は未知であります。不動産開発業者に手持ちだけを完成させ、新規には住宅を作るな、と言っているので建設資材や資源などの需要が爆発的ブームになるとは私は予想できないのです。
次に中国経済のポテンシャルです。アメリカや欧州が中国警戒網を敷く中、輸出先は新興国などが対象となりますが、例えばEVも需要の先行きは青天井だったものから大幅な生産調整を強いられる状況です。半導体需要については中国政府がエヌビディア製「H20」半導体をなるべく買わずに国内製を使うようお達しを出しました。典型的な中国式内製化が半導体まで進むことになります。こうなると中国製のエレクトロニクス製品は少なくとも西側諸国では買いにくくなり、もろ手を挙げての経済浮揚策にはならないように感じるのです。
大局的にはここに来て飽きが出てきたアメリカの大統領選が約一月後に迫る中、マネーがその行き場を探している、そんな状況に見えます。日本を含む西側諸国の経済政策は割と明白なベクトルが出ていますのでサプライズ感が打ち出しにくい中、中国の2段ロケットは心地よい刺激だったのでしょう。
「噂で買って事実で売る」という株式格言を信じるならあまり深入りしない方が得策ではないかという気がいたします。そもそも中国株式に資金を投じたいという気になれないといったほうが正しいのでしょう。その点、アメリカのヘッジファンドはマネーの匂いに狂ったノンポリ、つまり言うこととやることが違う、と申し上げておきましょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年10月3日の記事より転載させていただきました。