北米と欧州では会社を辞めるのに実は気を使うことを日本人は何も知らない

私の近著『世界のニュースを日本人は何も知らない5』でも解説していますが、北米や欧州では日本よりも転職が頻繁ですから、嫌な上司に当たって転職したとしても転職した先で自分の上司や嫌な同僚に遭遇する可能性があります。

案外業界は狭いですし同じレンジの報酬を得られる職場に移動しようとすると、だいたい似たような人がぐるぐる回ることになるので大変な注意が必要なのです。

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ですから職場を辞める時はなるべく波風を立てず何か適当な理由をつけてうまく止めなければなりません。上司や同僚の顔を立てることも大変重要です。

ですから退職時には周りの人や上司に何か助けが必要だったら声をかけてくださいとか、お礼の品を渡したり金券などを渡したりするのが割と珍しくありません。

しかも転職する場合はレファレンスと言って紹介状が必要な職場が多いのです。これは新しく転職する職場の方でその人の身分や仕事ぶりを確認するための推薦状で、働いていた職場の上司や同僚が書かなければなりません。

しかし嫌われているとレファレンスを書いてもらうことができないのでキャリア終了ということになります。また転職して行った人々にも頻繁に連絡を取り合ったり、一緒にご飯に行って関係を続けたりしようとすることが一般的です。

日本のようにやめて村を去ったら終わりというわけではないのです。お互いに何があった時に利用し合う関係ですからただの友達ではありません。また自分にとって何かベネフィットがある相手でなければ助け合うことはしません。この辺は大変シビアです。

こういう背景がありますので自分のキャリアや資産形成にとって何かマイナスになるようなことをやっている人やリスクを及ぼす人とは関係を終わらせて友達をやめてしまうことも多いのです。

こういう社会背景を理解していないので日本人は非常に仕事が絡む人間関係やママ友関係などを軽く考えていて、気が合えば友達になってくれるだろうということを思い込んでいるんですが実は大違いです。

それが可能なのは実家が裕福な人やすでに引退している人でたくさんの年金がある人、富裕層などに限られてしまいます。

一般の人はギブアンドテイクですから、日本人側から提供するものがなければあちらからは友達にはなってもらえません。

この縛りがあるために北米や欧州の職場では日本の職場よりも数倍の気を使って人間関係をうまく回していかなければならないのです。

こういう人間関係のめんどくささや厳しい同調圧力があるので、特に北米や欧州北部の人々は自営業になりたがるのです。

 

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