日本人のお尻の真実:まずは便通を改善しよう!

尾藤 克之

Rattankun Thongbun/iStock

近著に「オシリを洗うのはやめなさい」がある肛門科医の佐々木みのりさんに「オシリの真実」について伺います。本書は日本人のお尻事情が把握できる一冊です。

痛み かゆみ 便秘に悩んだら オシリを洗うのはやめなさい」(佐々木みのり 著)

[本書の評価]★★★★(85点)

【評価のレべリング】※ 標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★  「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★   「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★    「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満

痔の根本治療には何が必要か

「日本人の3人に1人は痔と言われています。しかし、オシリの状態は自分で見ることができません。どんなにネットで情報を調べても、自分で症状を把握することはできないでしょう。

「椅子に座って事務仕事をしているとき、何となく、オシリが冷たいなあと思って立ち上がったら、座布団が血まみれだった」「尿もれしたような感覚があり、下を見たら、座布団が血まみれだった」など、痔の出血にまつわるエピソードはたくさんあります。

「今まで全然、症状がなかったのに突然、出血することがあります。痛みが全くないので自覚症状がありません。いつ出るか予測もできません。仕事中に座布団が血まみれになった患者さんは職場で大慌てして、周りの人には痔だと言えず、生理の出血ということにしてごまかしたそうです。やっぱり恥ずかしくて言えませんよね」(佐々木さん)

「全く痔に気付いていなくて、出血で初めて、痔に気付く人もいます。もう大騒ぎです。がんじゃないか…って心配して来られます。イボ痔は徐々に大きくなるので、その存在に気付いていない人も実は意外と多いです。特に内痔核だと、小さなうちは肛門の中に収まっていますから、脱出症状もありません。全く気付かないわけです」(同)

痛みも出血も何の症状もなければ、その存在に気付きません。そして、突然、出血して、その存在に気付くことになります。

「治療に痔の薬を使うケースが多いですが、便通を直さずに痔の薬だけ使っても根本的な治療にならないため改善しません。便通を直さずに注射療法を受けても、また時間がたつと出血を繰り返すようになります」(佐々木さん)

すべての問題は便通にある

佐々木さんは大切なことは便通を整えることだと言います。

「イボ痔は肛門にできた静脈瘤のようなものなので、簡単に言うと『血がたまった袋』を持っているようなもの。破れたら、いつ出血してもおかしくないんです。破れなければ、出血しません。だから、全く出血しないっていう人も多いですし、出血する時期としない時期があったりします。また、突然の大出血ということもあります」(佐々木さん)

「ところが、便通を直すだけで出血しなくなるんですよ。それだけ、便の負担が大きかったってことですね。『出血が止まらないから手術って言われたけど、受けなくてよかった』『どんな薬を使っても止まらなかった出血が、便を出すだけで止まるなんて夢みたい!』って言われます」(同)

便通も直さずに、出血が止まらないからといって、注射療法や手術を行うことは、火元を消さずに周りに水をかけているようなものです。

この機会に、正しいお尻の知識を身に着けたいものです。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

2年振りに22冊目の本を出版しました。

読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)