拙著『アメリカ大統領史100の真実と嘘』(扶桑社新書)に少し手を加えた「ドナルド・トランプ大統領伝記物語」第3回は、就任の翌年である2018年の出来事だ。
就任2年目のトランプ大統領は、北朝鮮問題で派手に立ち回り、世界の注目を集めた。この年には、2月の五輪期間中に金与正ら北朝鮮の特使団が韓国を訪れ、このときの話し合いをもとに3月には南北首脳会談と米朝首脳会談が決まった。4月には11年ぶりの南北首脳会談が行われ、「南北関係の復元」「軍事的な緊張緩和」「半島非核化と平和体制構築」で合意し、トランプによる会談延期のブラフや南北首脳会談を経て、6月には米朝首脳会談がシンガポールで開催され、成功したとされた。
9月には平壌で3度目の南北首脳会談が行われ、「平壌共同宣言」と「南北軍事合意書」に署名し、開城には「南北共同連絡事務所」(2020年に爆破)が開設された。
アメリカは北朝鮮に対して強硬姿勢を見せ、「CVID(完全で検証可能かつ不可逆的な非核化)」を貫徹するかと思われたが、結局「FFVD(最終的かつ完全に検証された非核化)」、つまりアメリカに脅威にならない範囲での凍結という方向へと流れていった。
トランプ大統領は「北朝鮮はこれまで8カ月にわたりミサイル発射も核実験も行っていない。私でなければ今頃北朝鮮と戦争していただろう」とツイートしたが、戦略を持って首脳会談に臨んだわけではなく、そのつけは翌年に現れることとなる。
中東では、ISILとの戦いがほぼ終わり、戦後の勢力地図をめぐる駆け引きが盛んになった。トランプ大統領はアサド政権への攻撃を強めたが、年末にはなかば諦めたのか、勝利宣言だけしてシリアからの撤退を宣言し、これが原因でマティス国防長官の更迭に発展した。
イスラエルとの関係では、エルサレムに米大使館を移転し、開館式にはイヴァンカ夫妻が出席した。一方、米英中仏独ロの6カ国間の核合意から離脱し、対イラン制裁を再開すると5月に発表し、世界各国に対してイラン産原油の輸入を11月までに全面停止するよう要求した(6月)。また、中国との関係では経済戦争が激化し、25%の追加関税などによって本格的な報復合戦へと突入した。
内政では相変わらずロシア疑惑をめぐる不毛なやりとりが続き、小物の逮捕や告白が相次いだが決定打はなかった。そして、11月には中間選挙が行われ、下院は民主党が勝利したものの、上院では共和党が過半数を維持したため、弾劾が提起されても最終的には乗り切れる見通しが立った。
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