「今は投資の時か?」と聞かれたら私は「いつでも投資の時」と申し上げます。ただ、「いつでも」というと語弊があります。むしろ、常に投資と向かい合う中で売るとき、休む時、攻める時をうまく使い分けるということではないかと思います。「投資する」とは広義の意味で売ることや休むことも投資に含まれ、市場とお付き合いをすることだと考えています。
では今は攻める時か?と聞かれたら「賭け」だと考えています。毎日市場と向き合っているとマネーの呼吸を感じるのですが、正直、思いっきりが悪い状態に見えるのです。
アメリカの選挙が終わったからか、日経ヴェリタスが「帰ってきたトランプ相場 日本株に『強い米国』の恩恵」と題してアナリストを中心に聞き取り調査をしています。日経平均の25年3月までの高値の予想は平均が43250円。相当の強気です。また業種別では金融がずらりと並びます。あとは防衛関連でしょうか。
日経平均が今、着実に回復途上にあるのは円安が進んでいる要因が大きく、160円台半ばまで行くという見方もあります。ただ一つ注意しなくてはいけないのは為替に関しては専門家予想は外れることが多いのです。かつての為替予想は保守的なものが多く、その昔、ある銀行の幹部に聞いたところ「顧客を驚かせるような予想は出せない」と。つまり真の予想ではなく、顧客を懐柔するための予想でした。最近はそのタガが外れたように極端な予想が増えてきたのはアナリストやストラティジストが自身の名を売るためで、当たれば「あの人の予想はポイントをついているからそれにフォローしよう」ということになり、そのアナリストの成績も上がるというわけです。
ではトランプ氏の政策が大きな影響を与える相場の行方をお前はどう見ているのか、と聞かれたら素直に「わからない」なのです。トランプ氏の発言は当初は極端なものが多く、そののち、少しずつ緩和、融和されていくことも多いのです。「今週のつぶやき」でパウエル氏は解任されないと予想したのもあの発言をすることで耳目を集める自身の選挙戦略であり、実際にそうするかは様々なエレメントが入り込み、当初の発言通りにならないこともあるのです。
但し、トランプ氏は外交に関しては比較的自由奔放なところがあります。理由は外交こそ議会の枠組みから外れる大統領特権だからです。もちろん、議会承認が必要なこともあります。たとえばウクライナの支援は議会がその予算と支払いを承認しないと実行できません。ですからバイデン大統領と言えども好き勝手出来なかったのです。ところがトランプ氏はそれを止めるわけですからそんなのは議会承認はいりません。その上、このままでいけば議会は上院下院とも赤、つまり共和党が過半数を占めることになりそうで外交に関してはかなり自由度が高まります。
トランプ氏は既にパリ協定離脱の準備をしていると報じられていますが、これなども公約として手を付けやすいから行うのでしょう。
ところが内政に関してはいくらトランプ氏でも手を付けやすいところとそうではないところがあります。関税にしても本当にその言葉通りに行くのか、当然世界の首脳はトランプ氏に「それは止めてください」と伝えるでしょう。アメリカ向け自動車産業はメキシコ経由が多い中、体力が衰えている日産自動車など一発で吹き飛んでしまいます。
またトランプ氏の支持層の最大のボイスは経済対策や物価対策ですが、支持層の生活改善をどう図るのか答えを出さねばなりません。当初の目論見は産業の国内回帰とドル安誘導⇒輸出競争力強化⇒企業業績の更なる改善⇒労働者への報酬増だったはずです。しかし、ドル指数は少なくともトランプ氏当選後は上昇しています。
EVへの補助金は止めるか減額するのではないかとされますが、マスク氏が重用される公算を考えるとこれも一筋縄には判断できません。他方、前向きな発言をするも具体性を欠く仮想通貨に関してはびっくりするほど強気相場になっており、ビットコインの価格は本当に10万ドルになるのではないかという勢いです。
このような過渡期、そして人々の詮索が交錯することを思惑相場というのですが、だいたいにして良いことはないのです。よってあえて戦略を立てるなら短期勝負で細かく利確をしていく方が賢明だと思います。私も北米ではそのスタイルで臨んでいます。そしてトランプ政権が始動し始める来年早々までは日替わりメニューになりやすく、噂で左右されるのでここは割り切り感が必要かと思います。
もちろん、冒頭に申し上げた「賭け」をするならそれは個人のご判断ですので何とも申し上げません。一点言えることは日本企業はアメリカの政策に大きく左右されること、そして機関投資家や海外投資家は投資スタンスをさっと変える変わり身の早さで知られており、いつも取り残されるのが個人投資家ということになっています。
私自身、待機マネーが投資先を探している状態であり、売買も「小すくい」状態を継続しています。
いつも私は「自分で考える」と申し上げています。いろいろな人の意見をじっくり聞いたり情報誌を読み漁るのもよいのですが、最終的に自分がそれらの情報からどう思ったか、頭の中でしっかりした考えを構築させることが一番大事だと思います。ここがないと常に「どの株がいいねん?」ということになるのでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年11月11日の記事より転載させていただきました。