トランプ元大統領が次期大統領に確定しましたが、トランプ氏のマーケティング力の強さを改めて実感することになりました。
トランプ氏はもともとアメリカのテレビで放送されていた「アプレンティス」という番組や、プロレスのWWEで大人気だったタレントで、「悪徳不動産屋」というキャラを演じてきました。
日本で例えるなら、ハッスルのレイザーラモンHGに近い立ち位置と言えるでしょう。
2024年12月6日発売の『世界のニュースを日本人は何も知らない6』でも、日本のマスコミで取り上げられない海外の実態について解説しましたが、こうした空気感は実際に現地で体験しないとわからないものです。
彼は父親の不動産業を継いだ2世ビジネスマンではありますが、本業は実はビジネスではなく、テレビタレントです。
彼はキャラを演じる才能に非常に優れており、WWEのリングでは大変厳しい観客の目の前でエンタメを提供してきました。プロレスファンなら、本場アメリカで観客を沸かせる難しさをよくご存じでしょう。
トランプ氏はそこらの俳優やミュージシャンよりも才能にあふれた「テレビの人」なのです。
テレビやラジオに出演することがある方なら実感されると思いますが、視聴者や観客というのは非常に移り気です。
まして、目の前に観客がいる舞台や試合では、その場でうまいリアクションを取れなければブーイングの嵐です。プロレスとなればお客さんは非常に厳しいので、スター性がなければあっという間に出番がなくなります。
しかも、視聴率や観客動員数という数字で結果が出る世界で長年活躍し、実績を残すのは並大抵のことではありません。そうした厳しい世界でやってきたトランプ氏は、有権者が求めることを非常によくわかっているのです。
今回の選挙戦でも非常にわかりやすい言葉で、有権者が求めているメッセージを提供してきました。
わかりやすいリズム、タイミング、原稿を読まずにその場でリアクション、顔芸。
まさに「お客様至上主義」と言えるでしょう。
一方で、氏は大口を開けてゲラゲラ笑い、回答をごまかすだけで、有権者の疑問には全く答えませんでした。
選挙戦の終盤には30億円を使って有名ミュージシャンを招いたコンサートを開催し、有名人に頼る始末です。
生活が苦しい有権者がどれだけ激怒するか、全く考えていなかったのです。
アメリカでは医療費が払えずに命を落とす人や、やる気があっても大学に通えない若者があふれています。
この大金を生活が苦しい人々のために使ったらどれほど良かったでしょう。
この選挙の最終局面での馬鹿げた「マーケティング」によって、有権者は「リベラルは自分たちの自己満足のために貴重な金を使ってお祭り騒ぎをしているだけだ」というイメージを一層強くしたのです。
そうしたコンサートや祭りの後にゴミを拾うのは移民の清掃員や高卒のアメリカ人です。
イギリスもアメリカも、中流以上のリベラル層は掃除などしません。散らかすだけ散らかして嫌な仕事は低賃金の移民にやらせるのです。
事実、ハリス支持者の裕福なリベラル層や在米日本人は掃除婦や家政婦を雇っています。住宅が大きすぎるので自分では掃除できないからです。
費用が安ければ安いほど得をするため、不法移民を使うこともあります。移民は安い賃金で働くため、地元の賃金は下がり、多くの人々が苦しむことになります。有権者たちはこの構造にうんざりしているのです。
さらに、リベラル層はコネを駆使して自分の子供を知り合いの職場に就職させ、同じ階層の人々とだけ付き合います。下の階級の人々が上に上がれない仕組みを作り、嫌な仕事は低賃金の移民にやらせて貴族のような生活を送っています。
表面上は良い人間を装うために、知人が運営する非営利団体のチャリティーマラソンに寄付をしてSNSで宣伝します。チャリティーマラソンに参加する際には1着2万円するゴリラのぬいぐるみを購入して身に付けます。
使用後はゴミ袋に入れてリサイクルショップの前に捨てておきます。彼ら曰く「環境保護のため」です。
さらに募金を集めるという理由でキリマンジャロに登り、登山費や渡航費を寄付者に払わせます。彼らの頭の中には、ぬいぐるみ代や渡航費を貧困者に寄付するという発想はありません。
こうしたチャリティーが対象とするのは、アジアのどこかの井戸掘りやマングースの「人権」、アフリカ系やパレスチナの支援です。
国内の手に職を持つ人々や大学に行けない「下の階層」の支援ではありません。
アフリカ系やトランスジェンダーは支援しますが、国内のユダヤ人に対する迫害は放置します。
女性トイレに男性が入ることを拒否する女性たちは差別主義者として徹底的に追い詰められ、職場から追放されます。
親の介護で苦しむ人々も無視されます。
彼らにとって、国内には困っている人などいないことになっているのです。
この吐き気を催すような構造を「普通の人々」はよく知っているため、選挙戦の最終局面で派手なコンサートを行ったハリス陣営に対し、強い憎しみを抱いたのです。