年の瀬が迫ってきました。2025年を展望する中で、結果を出したいと思っている課題の一つに、除染土壌の再生利用があります。福島の復興に不可欠な課題ですが、すでに反対運動も起こっています。先日も国会内で反対集会が開かれ、福島みずほ議員の発言がXで流れてきました。まずは私の投稿を引用します。
顔なじみの福島みずほ議員と論争するのは辛いが、処理水の時と同じように、避けて通れない。安全性が確認された除染土壌を再生利用しないということは、膨大な除染土壌の全量を福島県内で最終処分するべきということだろうか。除染土壌の再生利用は福島の復興のために不可欠。 https://t.co/vlG2VqONfg
— 細野豪志 (@hosono_54) December 21, 2024
除染土壌が発生した経緯
除染土壌が発生した発端は、2011年3月11日の原発事故により、放射性物質が大量に飛散したことです。福島県浜通りだけでなく、中通りや一部県外にも拡散しました。
3.11直後、私は内閣総理大臣補佐官として原発事故対応にあたり、7月からは環境大臣を兼務することとなり、拡散した放射性物質の「除染」に取り組むことになりました。世界で前例のない事業であり、当初は政府内の担当部署すら決まらない状況でしたが、押し付け合いをしていては福島の皆さんに申し訳が立ちません。当時の環境省幹部と話し合い、意を決して環境省で事業に取り組むことにしました。
除染事業には最終的に10兆円を超える国費が投入され、その予算規模の大きさや手法を巡って論争が起こりました。住民の健康や帰還という観点から「あそこまで除染する必要があったのか」という疑問が出ることも理解できます。
しかし、環境問題の大原則である「汚染者負担の原則」を考えたとき、放射性物質を拡散させた原因者である東京電力と政府には、除染事業を行う責任があります。私は、福島の復興のために除染事業が今でも不可欠だったと考えています。
当初、除染作業で剥ぎ取られた土壌は、それぞれの地域の「仮置き場」に保管されました。仮置き場には学校の校庭の隅や地域の空き地が使われました。当時、福島県内各地にフレコンバッグが積み重なった映像を記憶されている方も多いと思います。原発事故から時間が経過し、これらのフレコンバッグは福島第一原発近くの中間貯蔵施設に運び込まれています。
集約された除染土壌の総量は約120万立方メートルで、これは東京ドーム約11杯分に相当します。しかし、時間の経過とともにその放射線量は低下し、その四分の三はキログラムあたり8000ベクレルを下回っています。このレベルの土壌であれば、年間追加被曝量が1ミリシーベルト未満であり、安全性に問題はありません。
除染土壌の再生利用は福島の復興に不可欠
除染土壌の一部は、福島県飯舘村の農地で活用されています。ただし、これは飯舘村で剥ぎ取られた土壌を再利用しているものであり、中間貯蔵施設から搬出された除染土壌が再生利用されているわけではありません。
一方で、中間貯蔵施設から持ち出された除染土壌も、官邸や環境省、自民党本部の鉢植えなどで再生利用されています。安全性に問題は生じておらず、自民党本部の鉢植えについては、今ではその存在を気に留める人すらいません。
中間貯蔵施設の土地は、原発事故の被害を受けた地元の皆さんから譲っていただくか、お借りしたものです。除染土壌の中で最終処分量をできるだけ減らし、それ以外の除染土壌については福島県内外で再生利用することで、中間貯蔵施設が設置されている場所を有効活用する必要があります。
しかし、福島県外での再生利用が進まなければ、全量を福島県内で最終処分するとの印象を与えかねず、県民の理解を得ることは難しいでしょう。福島の復興のために、除染土壌の再生利用の実現は避けて通れない道なのです。
これまでは環境省のみが対応してきましたが、新宿御苑や所沢市での再生利用は反対運動で暗礁に乗り上げています。
今回、全閣僚による会議が設置されたことで、ようやく政府を挙げての取り組む体制が整いました。来年の三月までには安全基準を再確認し、再生利用場所(道路の路盤材や廃棄物処理施設の被覆土壌などが候補になります)を選定し、実際に一定規模の再生利用を実現しなければなりません。
震災ガレキの広域処理と処理水の海洋放出の教訓
一度除染作業で取り除かれた土壌を再利用することに対して、国民の中には懸念を抱く方々がいることを理解しています。政府としては丁寧な説明を続けるしかありません。しかし残念なのは、反対運動に賛同する政治家や有識者がいることです。思い起こすべきは、震災ガレキの広域処理や処理水の海洋放出で何が起きたかです。
東日本大震災の後、岩手や宮城のガレキについて、放射性物質で汚染されている可能性を指摘し、広域処理に反対したワイドショー番組がありました。安全性には全く問題がなかったにもかかわらず、彼らの報道に屈せず広域処理を進めた結果、三年で目標通り処理が完了しました。しかし、その後、彼らが報道を検証することはありませんでした。
処理水の海洋放出についても、政治家やジャーナリストの中に強硬に反対する人がいました。それを利用する形で中国やロシア政府が日本政府の対応を批判しましたが、現在では沈静化しています。震災ガレキの広域処理では環境省が孤軍奮闘し、世論の反発を買いましたが、処理水の海洋放出では政府全体で情報発信を行い、我々国会議員や一部の有識者も積極的に発信したことで、世論は賛成に傾きました。
今回の除染土壌の再生利用については、環境省だけでなく、官邸や資源エネルギー庁、復興庁なども連携し、政府全体で科学的根拠に基づいた情報発信を行う必要があります。
除染土壌の再生利用について、福島県民の声も重要です。処理水の件では福島県の漁業関係者から反対の声が上がりましたが、除染土壌の県外での再生利用に関しては、福島の復興を促進するものとして賛同が得られると考えています。
私も引き続き情報発信に努めますので、皆さんもSNSなどを通じて発信していただけると幸いです。
編集部より:この記事は、衆議院議員の細野豪志氏(自民党・静岡5区)のブログ 2024年12月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は細野豪志オフィシャルブログをご覧ください。