そういえば先日、こんな質問をいただきました。
城さんが「中学受験の難易度高すぎ。中学受験後に伸び悩むのもわかる」とつぶやいていらっしゃいましたが、その理由がいまいちわかりません。
どういった理由で受験が難しすぎると伸び悩むんでしょうか。
いい質問ですね。年末だし、たまには普段と違うテーマも悪くないでしょう。
なぜ中学受験はこれほどまでに過熱しているのか。そして、お受験経由組と中学受験ガチ勢の邂逅により何が起こるのか。
受験までのプロセスに関する情報は多いですけど、“その後”のことは案外みんな知らないんじゃないでしょうか。
実は結構キャリアと被る話だったりします。というわけで、今回は受験について思うところをまとめたいと思います。
そもそもなぜ私立中学受験は過熱するのか
近年、都市部を中心に私立中学受験の過熱が伝えられています。少子化で大学全入時代到来が叫ばれる中、一見すると真逆な現象にも見えますね。この背景にあるものとは一体何でしょうか。
まさに該当する親世代の一人として実際に“参加”してみた筆者の感じた理由は以下の3点です。
地方と違い、私立公立の格差が大きいから
大阪や名古屋、福岡みたいな都市部はまた違うんでしょうけど、それ以外の地方だとそもそも公立以外の選択肢がほぼ無いんですよね。
あっても高校からぼちぼち程度。だから秀才もボンクラもヤンキーも中学までは同じ環境で学び、高校レベルからぼちぼち分かれ始めるわけです。
地方公立校出身で「公立の方がいろんな経験が出来て視野が広がるからいい」とか言ってるお父さんがイメージしてるのは、ほぼ間違いなくこういう公立校です。
一方で、東京の場合は小学校から既に私立という選択肢が用意され、お勉強が得意でお金と熱意のある家庭の子からどんどんそっちに抜けていくわけです。
結果、同じ公立とはいっても高校に上がるころには、上記のお父さんがイメージしているような牧歌的な環境とはまったく異質な空間になっていることは想像に難くないでしょう。
だったら、受験は早めに済ませておいた方がいい、とはいえ小学校はなんぼなんでも早すぎるから中学で、となるのは当然でしょうね。
ちなみに筆者自身も上記のような考え方で公立校でいいんじゃね?みたいなスタンスだったんですが、お受験の指導塾の人に「東京のことなんにも知らない地方出身のお父さんは黙っててください」って怒られましたね(苦笑)
公立はしわ寄せが集中するから
公立校はいろんな家庭のニーズに合わせないといけないので、どうしても教育全般のクオリティは低めに設定しないといけません(たとえば給食費は全家庭が無理なく払えるレベルに設定)。
しかもこのインフレのご時世、選挙権のないガキンチョ向けの予算なんてメチャクチャしわ寄せが集中するわけです。
高齢者の敬老パス見直しのハードルは極めて高い一方で、給食の手抜きなんていくらでもやり放題ですから。
そういう事情を理解している家庭なら、やはり公立は避けるでしょうね。
余談ですけど、最近の選挙を見ていると学校の給食費を無料にしようみたいな政策を掲げる政治家が一部にいて、支持する人もそれなりにいるようです。
筆者はオススメはしませんね。
税への依存度を上げる=手抜き余地を拡大させる、ということですから。
むしろ逆に給食費を引き上げさせて、きちんとした食事の対価を家庭に負担させるべきでしょう。
教育無償化=税金化と同じですね。世の中にただ飯はありません。
公立が多様性の受け皿になっているから
中学受験過熱とまるで平行するように、学級崩壊という言葉もよく耳にするようになりましたね。
背景には発達障害が関係しているのでは、という指摘もあります。
ただ、筆者は後になって気づいたんですが、少なくとも私立の中学、小学校、そしてお受験用の私立幼稚園には、そうした現象は全く存在していません。
理由はとてもシンプルで、入学試験に面接があるから。そこで一定時間座っていられない、受け答えが出来ない子供は弾かれるからです。
だから授業は至って平和で、授業内容もレベルが高いです。生徒が熱心に教師の言葉に耳を傾け整然と授業を受けるという、昭和の古き良き学校生活が今もそのまま続いています。
フォローしておきますが、多様性はとても大切です。いろいろな子どもたちが集って共に学ぶことには意義があるし、学び場は社会の縮図であるべきです。
でも、多様性は重要でも、自分の子供が多様性の犠牲になるのは望まないと考える親はけっして少数ではないと思います。絶対に公言はしないでしょうが。
以上が、親世代の一員としてリアルタイムで“受験”に参加中の筆者自身の結論です。
筆者の見方が正しければ、今後さらに都市部における私立と公立の教育格差は拡大し、中学受験戦争は過熱していくことになるでしょう。
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以降、
・中学受験後に中学で起こること
・受験とキャリアの意外な共通点
【年末Q&A蔵出し特集】
Q:「50代で畑違いの職種へ手を挙げるのはアリ?」
→A:「実現するかどうかはわかりませんが全然アリでしょう」
Q:「国民民主党に社会保障改革をやる覚悟はある?」
→A:「筆者にはわかりませんが、ひょっとすると……」
Q:「“武富士”ってあだ名の上司がいるんですがどうすればいいでしょう?」
→A:「オープンハウス式でいきましょう」
Q:「子供に『お父さんみたいにはなりたくない』と言われたのですが」
→A:「ポスト昭和的価値観を叩き込みましょう」
Q:「年収800万円あるのにモテません」
→A:「年収さえあればなんにもしなくても結婚できる、という発想をまず捨てましょう」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’sLabo」2024年12月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。