当たり前の事実を認識しよう
『岩屋毅外務大臣がXアカウントを消して逃亡!』⇒2014年には削除
『岩屋毅外務大臣がXアカウント(@takeshi108)を消して逃亡!』という言説がXで広まっていますが、誤りです。
岩屋毅議員が当時のTwitterにアカウントを持っていたことは国会質疑でも語られていますが*1、2013年6月の魚拓が最後に確認できるものです。
2014年には既に他のアカウントから岩屋氏に関して「アカウント削除されたのか」と投稿しているのが見つかります。2019年にはアカウントのプロフィール画面で削除されていることが分かるものを添付している者も見つかります。その後、復活したということもありません。
日中外相会談で村山談話と同じ認識と話したと中国側が報じて炎上
こうした論調が起こったのは、日中外相会談がきっかけです。
中国外務省は、会談で岩屋氏が王氏に対し「歴史問題では『村山談話』の明確な立場を引き続き堅持し、深い反省と心からの謝罪を表明する」と述べた、と発表し*2
実際には村山談話だけでなく安倍談話にも言及していましたが、そのことに中国メディアは触れず、そのまま受け取ったネット上の限界右翼界隈が「村山談話」の文字だけで「お祭り騒ぎ」、岩屋氏を叩けばインプレッション稼ぎができるボーナス状態になっています。その中にはビジネス系のアカウントも居ます。
安倍談話は村山談話を継承・上書きしている事実を知らない限界界隈
平成27年8月14日付けで閣議決定された安倍晋三内閣総理大臣による終戦70年の節目に行われた談話、通称【安倍談話】の性質については、既に各所が論じている通り、村山談話を継承しているというのが事実です。
ただ、安倍談話は、主語を日本国に限定せずに人類の記憶として論じた点に価値があります。当時の談話文の作成に関する暗闘は例えば【宿命の子 上 安倍晋三政権クロニクル[ 船橋洋一 ]】などで紹介されています。
安倍の村山談話に対する違和感、より正確にはそこに示される歴史認識に対する違和感はおおよそ、次のような点に凝縮された
まず、先の大戦においては日本だけに焦点を合わせるべきではなく当時の世界の状況について語らなければならない。この戦争の背景にしても日本の責任にしても100年ほど遡った歴史の連続性の中で位置づけるべきである。「100年のスパンで歴史を捉え、当時の国際社会のありようを踏まえて議論を展開」しなければならない。19世紀末、「世界に帝国主義諸国の植民地が広がる中で、日本は何とか必死に独立を守り抜いてきた」そのような世界からの作用があって、日本の反作用があった、その闘争の中での日本の歩み」という視点を持つべきだ。
次に、その歴史の中で何を、どう誤ったかを書くにしても、それを善悪としてとらえるのではなく、政策的な判断の誤りという観点で書くべきである。
「悪いことをしてすいませんということでなくて、政策を誤ったというのと、世界はどういう世界だったかということをしっかりと書いて。立派な人たちと戦ってましたということではなくて、政策を誤った、世界情勢を見誤った。それで敗戦した。同じことをやってはいけませんということを書かなければならない」そして最後に、村山談話の言う「国策を誤った」という表現に関して、どの国策を誤ったかについての記述がまったくないことである。従って、談話の中の「心からのお詫び」が、一体、何に対しての「お詫び」なのかが説明できていない。
では安倍談話はどの国策を誤ったと言っているのか?『国際社会が壮絶な犠牲の上に築こうとした「新しい国際秩序」への「挑戦者」となっていった。』という部分でしょう。
中国外務省が岩屋氏の発言に関して発表したものを再掲しますが、「歴史問題では『村山談話』の明確な立場を引き続き堅持し、深い反省と心からの謝罪を表明する」と述べた、とするものでした。この説明は、安倍談話の域を越えていません。
安倍総理支持者が安倍談話の性質を理解せず、中国メディアの発信をそのまま受け取って日本国の政治家を攻撃する。
【国際秩序への挑戦者】になろうとしている者は、現代では、いったい誰か?
岩屋氏が地相ダメージを受け、ビジネスに利用されるネット・SNSにアカウントを持たないのは正解
ネット上では岩屋氏に対して「外観誘致罪!」などという意味不明な掛け声で盛り上がれてしまう界隈があります。『岩屋毅外務大臣がXアカウント(@takeshi108)を消して逃亡!』と言ってるのはこの層です。
岩屋氏がネット上にアカウントを持っていたら、地相ダメージを受けるだけでしょう。
また、ビジネス目的で特定の政治家に怒りを振りまいてインプレッションを稼ぐアカウントやまとめサイト、動画投稿者に、餌を与えることにもなっていたでしょう。
2014年時点で撤退していたのは、慧眼としかいいようがありません。
実際、国政の枢要部に居る者や、そこを目指そうとしている者は、詳細な政策発信をせずに食レポなどのライトな投稿内容に転換しているか、ネットから離れていってます。
ネットで支持者も無く政策論をいきなり展開しても*3、ビジネス目的で特定人を叩くコンテンツを作っている連中に稼ぎの種を与えるだけだと気づいてしまっています。
そうした「叩き」すら利用して自らの発信を拡散しようとする議員は限られます。
多くの陰謀論者はXなどの「テキストの世界」から撤退し、『動画の世界』で活動するようになった者も居ますが、そちらでもプラットフォーマーが危機感を持って対応を考えており、制限が為される未来はすぐそこまで来ています。
*1:第176回国会 衆議院 予算委員会 第8号 平成22年11月10日
*2:日中外相会談で岩屋外相が「村山談話」に言及と中国側発表 日本側発表文には記載なし – 産経ニュース
*3:実際、岩屋氏はFacebookは更新している⇒https://www.facebook.com/takeshi.iwaya.9
編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年12月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。