考えすぎないことが「成功の秘訣」になる論理的理由

黒坂岳央です。

世の中は面白くできていて、必ずしも生まれつき能力が高かったり条件や環境に恵まれている人が成功しやすいとは限らない。

特にオーナー社長についてはそれが顕著だ。中卒、高卒といった学歴で世間的にパッと目を引く難関資格や経歴がなくとも、とてつもなくビジネスで成功している人はかなり見てきた。

自分は新しく挑戦する際は「あまり考えすぎない」ことを意識するようにしている。その根拠を取り上げたい。

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最初は考えても無意味な段階が長い

勉強でもビジネスでも、試行回数が課題解決してしまうことは少なくない。逆にいちいち細かいことに立ち止まって考え込んでいては、数を稼ぐことができない。そして最初の段階はろくにデータもなければ、スキルも経験もないので「下手な考え 休むに似たり」となる事が多い。

筆者は独立して様々なビジネススキルを磨いてきたが、戦略的にあれこれ考えて身につけたというより、その時、そのタイミングで必要になったから走りながら身につけたという感覚が強い。

YouTuberになる時はあまり深く考えず、「まず動画を100本出してから考えよう」でスタートした。話し方は本数が増えていくのに連動して上達していった。その他のあらゆるビジネススキルも1回1回、素振りのたびにしっかり考えて根拠を持って、というよりまずはドンドンやってみて成果が出るところ、出ないところを見極めてうまくいかない点を改善する、という「量が質を作る」という感覚で取り組んで生き残ってきた。

もちろん、ある程度の戦略は必要であり、成功した人の手法をトレースする上で試行錯誤をする、という前提は必要だ。あくまでその上で一挙手一投足を考えすぎず、数をこなすことが成功に着実に近づくプロセスと考える。

成功はいきなりやってくる

今日の努力は即日で実ることは少ない。技術の向上や閃きなども、右肩上がりに伸びたり生まれるのではなく、途方もない分量をこなす過程である臨界点を超えるとドカンとブレイクスルーの感覚がある人も少なくないだろう。

自転車に乗る瞬間というのも、たくさんの失敗経験を積み重ねる中で、瞬間的に飛距離を伸ばせるコツを掴んで突然乗れるようになる。特に初心者の段階は失敗をあれこれ経験する中で、少しずつ「これをやってはいけないな」というNGポイントを拾い、それを回避し続ける過程で上達していくのだ。

記事でも動画でも、全体の10%のコンテンツが90%のアクセスを作るものである。つまり、少数のヒット作が成否のほとんどを決める。レストランの人気メニューなんかも同じで、1-2個の看板メニューがほとんどのお客さんを連れてくる。

だがそのヒット作は狙って一発で作れるものではない。筆者は過去に1記事で150万PVのアクセスを稼いだことがあったが、これは寄稿先のメディアで7年間書き続けて偶然に出た産物に近い。

また、気まぐれで書いた記事が編集者の目に止まり、商業出版が決まったり、執筆後1年越しに番組制作会社の人が見てテレビ出演のオファーにつながったりと人生やビジネスにポジティブな影響を与えるヒットがあった。これらのヒットはまず数を出さない限り、決して出ることはないのだ。

無言で何年もバットを振り続ける

よく、ビジネスの施策を打つことを「野球でバットを振る」という表現にたとえられる。これは本当に的を得た表現だ。

これをやっても正直、ほとんどは空振りやしょぼいヒットに終わる。だが、最初はそれでも構わない。やってみてダメでもそこから学べる点は非常にたくさんある。とにかく無言でバットを振り続ける。

でも考えすぎる人は、「こんなことやっても意味はないんじゃないか」と心が折れて早々に放り出してしまう。そこで諦めずにそれでも淡々と振り続けられる人だけが、偶然にホームランをかっ飛ばすことができるのだ。それには「強靭なメンタルの持ち主」というより「まあ最初の段階で考え過ぎてもあんまり意味はないし」と少しくらい楽観的な人に向いている。

冒頭で述べた「中卒、高卒社長」の中に農業経営者がいる。彼は地元では有名なれんこん農家で過去最高で年間で1億円近くの売上を記録したことがあるといっていた。ひとり社長なので売上の大部分が利益である。

彼と会話をすると思慮深く、多面的で冷静な思考ができるタイプというより、「難しいことはよくわからないから、とりあえずやってみて考える」というタイプである。考えすぎない、はある意味成功の秘訣と言えるだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。