黒坂岳央です。
サラリーマンの時も、独立してからもとんでもなく仕事ができる人を見てきた。ちょっとコミュニケーションを取るだけで非常に聡明でいかにも仕事ができ、そして「とにかく仕事が早い」というタイプが世の中に存在する。自分自身、そうなりたくて彼らの技を盗んだり、ビジネス書を大量に読んで勉強をしてきた。
そして「仕事が早い人」についての結論にたどり着いたと思っている。自分はてっきり、彼らが物理的に手が速いと思っていたが実際にはそうではなかったのだ。
始めるのが早い
仕事が遅い人はうだうだ言い訳をして一向に着手しない一方で、仕事が早い人は始めるのがとにかく猛烈に速い。そしてこれは意識の違いというより、解像度の違いなのだ。
仕事が遅い人は「よくわからない内に手を出すと危険」と延々とリサーチをして、途中でエネルギー切れとなって止めてしまう。ノウハウコレクターと呼ばれる人は世の中に非常に多く、勉強熱心だが一生行動しない。彼の腰が鉛のように重い理由は2つに集約される。すなわち、「面倒くさい」と「失敗するのが怖い」のだ。
その一方で仕事が早い人は「よくわからないから、まずやってみてデータを集めよう」という感覚で始める。失敗しても落ち込むどころか、「やっぱり実体験に勝るリサーチはないな」という感覚でミスを喜ぶ。もちろん、これだけでは効率が悪いので、彼らは学びながら、改善をしながら試し続ける。それ故にムダがなく、仕上がりも早いのだ。
そして「面倒くさい」という感情について言えば「ダラダラする方が面倒くさい」と考えている。それなら感情が熱く面倒くさいと感じる前に終わらせてしまう。そう、彼らは「面倒くさいと感じる前に終わらせたい」という原動力に変換してしまうのだ。
判断が早い
そして差がつくのは決断の時である。仕事が遅い人はとにかく決断ができない。一度スタートしたら、ずっと惰性の力だけで進んでしまい、「続ける/撤退する」といった決断をせずに赤字が拡大し続ける。
たとえば昨今、生成AIがもてはやされているが、こうしたトレンドに対しても「学ぶのが面倒くさい」「今まで通りで十分」といいつつも、「これだけ騒いでいるのだから、本当はやった方がいいんだろうな」と頭の片隅でメモリを食い続けてパフォーマンスが落ち続けるのだ。
一方で仕事が早い人は毎日決断する。昨日まで「白」と言っていても、環境変化が起きたことを素早く自己認識する仕組みを持っていて、「状況が変わったので今日からは”黒”で」と素早く切り替える。判断が早いので停滞することがなく、新しい施策もドンドン取り入れて生産性が高まる一方である。
筆者は現在、新しい取引先から新しい仕事を頂いているが、日々切り替えの連続である。Aの認識で取り組んでいたら「こういう事情があってBに変わることになりました」と言われたら、即日でBに切り替える。Aの成果物を無駄なく流用しよう、などとは考えない。スパッと切り替えてAを丸ごと捨ててBで進むと割り切ってしまう。そうすることで結果が出るまで早くなるのだ。
集中に入るのが早い
ビジネスをする上で「集中する」というのは非常に重要な要素である。
仕事が遅い人は集中するのがとにかく遅いという特徴がある。サラリーマン時代でも月曜日は丸一日だるそうに仕事をし、火曜日の定時後からようやくエンジンがかかる、みたいな人はどこの会社でもいるはずだ。その間、お茶を汲んだり、歩き回ったりととにかく集中モードに入るのが遅いのだ。
一方で仕事が早い人は集中モードに入るのがとてつもなく早い。「じゃあこれで進めましょう」と決まったら、そのまま成果物の制作に手を付けて当日中に「ざっくりこの方向性でどうでしょうか?」とクライアントにプロトタイプを投げるイメージだ。
なぜ彼らは集中に入るのが早いのか?これは徹底した環境整備である。とにかく集中できる環境をこだわって作っている。集中する時間枠、静かな環境、優先順位付けされたスケジュール、そして気を散らす要素の徹底排除などである。
自分の場合は「集中の賞味期限」を強く意識している。仕事が決まったらその時にやってしまうのが一番効率がいい。ひと晩寝かせて、色んな情報が入った後に手を付けると「何だったっけ?」と記憶もおぼろげになったり、なんとなく勢いが消えてしまう。だからやると決まったらその瞬間に手を付けてそのまま目処がつくまで仕上げてしまうのだ。
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仕事が速い人は「凡人が真似できない手の速さ」で差をつけているのではない。そうではなく、「終わらせられる間に早く片付けよう」という意識が非常に強く、そのために技術や環境整備をきっちりしているからなのだ。
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